おためし
第4話 不測の事態
僕は今、冷たいコンクリートの上でうずくまっている。息が荒くなっている。マジ死にそうってくらい心臓がバクバクしている。
あの時、"国を助ける”と言ってしまってから最初の困難が訪れた。それは、目では推測できないほど高い塔(この空間?)の頂上にあるという魔術師の住む国への入り口まで、コンクリートでできた階段を上ることだった。
体育以外で運動をしていない僕はすぐに息切れとなりつつようやく頂上まであと少しの所で六回目のダウンをしている。
一方真島百合亜はというと二段飛ばしで休むことなく駆け上がり、見た目ではだいぶな御老人に見える魔術師も真島百合亜とともに「わしも」とか言いながら二段とばしでかけていった。どんだけ体力あるんだよ!
僕も壁をつたりながらようやく頂上に着いた。目の前には他のものとは違う大きな白い扉があった。どこかの国の王宮とかにありそうな大きな扉。
真島百合亜は「遅いよ。」と言いながらぺろぺろキャンディーをなめていた。魔術師も、「まったくじゃ。」とあきれたように言った。
このひとたちがげんきすぎるんだって…。
そんなことを考えているうちにぎぎぃと音がした。扉が開いたのだ。
「さあ行くぞ。」
魔術師の後に続いて僕らも扉の中へ入る。
次の瞬間目の前に広がったのはレッドカーペットに沿って並ぶ鎧を着た兵隊、その先には豪華な玉座の上に座る金髪の髪の長い、綺麗なブルーアイ、白く透き通る肌に目を疑うようなきれいな白いドレスに身を包む女の人。
「女王陛下、この二人を連れてまいりました。」
「ご苦労であった、ジュルードゥ。」
ジュルードゥ?それがあの魔術師の名前なのか?
「初めまして。わたくしがこのルファシェニア王国の女王、シャルロットと申します。あなた方にはわたくしたちにはできない頼みごとがあってこちらにお呼びさせていただきました。」
まじだ…本物だ。
本物の気迫に圧倒され、心の中では発狂寸前の大興奮中の僕を、真島百合亜はひじでつつき「どうしたの?」と小声で聞いてきた。「何でもない」と言ってごまかして、またまっすぐ女王のほうを向いた。この世のものとは思えないくらい美しい。
「では、そろそろ本題に入りまわ。」
僕らはいきを飲んだ。
「実はな、わたくしたちは石油や石炭、そういったものを使わず環境にやさしい国づくりをするために石油や石炭の変わりのエネルギーを作ることに成功したのです。」
女王は「まあ、石油や石炭がなくなってしまったのが大きな理由ですが」と付け足した。
僕はここまでであまりにグローバルな話についていくことが困難だった。これは僕らの世界にもほしい発明だな。
「みんな喜んで使ったわ。だけど不測の事態が発生しまして。実はあと一年でこの星は…溶けてなくなってしまうであろう。それはもちろん、別の世界であっても地球に危害が加わる可能性がある。それを止める手助けをしてほしいのじゃ。」
「地球にきがいって?」
思わず声が出てしまった。
「地球もろとも爆発するであろう」
そのセリフは、僕の頭の中で何回も何回もリピートされたのであった。
地球は爆発?マジで言ってるの?意味の分からない事態に戸惑ってしまう。
女王は玉座からおり、外を眺めた。遠くのほうで気が燃え盛る。
「この戦も、早く終わればいいのに。」
女王は悲しげにつぶやいたのだった。
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