第29話 帰ってきたパッサンG

 カチッカチッ……。


 ペトラの健康飲料により、体調は頗る良好です。

 今日も眩しい朝日、冷たい風!


 カチッカチッカチッ……。

 朝の空気を胸いっぱいに吸い込み、今日も始まる作業に向けて体を右へ左へと伸ばしストレッチをする。


 カチカチッカチカチッカチカチッ……。


 昨日の事で、少し行き違いのような物が生まれてしまったアラクネ達。

 その件の一人が今、拠点の出入口の上部にて壁に張り付くようにしてこちらを見下ろしているようで、まるで主張するように壁と足で音を立てている。そして少しでも俺が視線をそちらに送ると……。

 視線がぶつかり、「あっ……」と少し声を上げる。すると顔を赤らめて壁面を上りだしこちらから離れていく。しかし、ストレッチをしたりして気づくと割と近くに来てはまた離れていく。


 それを繰り返すことこれで三度目。


 会話をしたいのか、こちらを観察しているのかわからないが朝陽を受けて昨日しっかりと見る事のなかった灰褐色の蜘蛛の体がはっきりと見える。その体に少し色の濃い紋様のようなものが遠目に見ても面白い。


 姉妹のような口ぶりだったが昨日桃源郷に連れて行ってくれた奴とは体色も模様もまるで別物。あと彼女は恐らくC、何の大きさとは言わないがOPI一級鑑定士の俺が言うのだから間違っていない。


 ラヴィーニアと名乗ったアイツは髪が赤かったと思うが、あの子は美しく輝く長い金髪が朝陽に反射してキラキラと風に揺られている。


 ゆっくりと壁を上っていく彼女を見ていると、似た光景を日本の家でも見たなーと少しほのぼのとした気持ちにさせてくれる。日本のは部屋で、しかも小さい蜘蛛だったが。しばらくは放っておこう、あちらにも心の準備はいるだろう。


 それまではこの不思議な距離感を楽しもう。他のアラクネ達の姿はなく、あの子だけのようだけど他のはもしかしたら夜行性なのかもしれないな。


 オーク一家もやってきたので、食事になる。

 遠目で見ている壁の上の子にも食べてほしいが……。

 そうだ、鉱石でトレーのような物を作ってその上に料理を乗せておけば近寄らないまでも食べにくるかもしれない。


 猫かよ! と思いながらも準備をし、スライム君に彼女の分の料理も貰って壁面の下に置いておいた。



 朝の食事を頂き、少し食休みをしていたら出入口に空になった鉱石製トレーと皿が置かれていたので食べてくれたようだ。


 そして、俺、ゴブリン達からアリヤとシー、オーク一家からペイトンにパメラ、リザードマンからゼルシュ、ト・ルースというメンバーでアラクネの元へとやってきた。

 よく見るとあちらこちらに細い繊維のような蜘蛛の糸があり、少し古ぼけた洋館のような不気味さを穴倉から感じ、二の足を踏んでしまう。

 少し戸惑っていたら、リザードマンの二名が中に入り彼女達を呼んでくると言ってきた。

 そして中に入っていき暫くすると、面白い足音が二種類聞こえる。どうやら出てきてくれるらしい。

 そしてゼルシュらに連れられ、彼女達が外に出てきた。先頭にいるのは昨日のラヴィーニアとかいう奴だ。改めて見るとでかい。全長としてはかなりの物だし、どことは言わないが素晴らしい物をお持ちです。

 続いて出てくるのも、やはり明るいところで見ると体の色や模様は多彩で、人型部分も目や髪は勿論、肌の色も多少違う。


 彼女達は俺達の前で足を曲げ、腰を下ろす。それを見たト・ルースが彼女達の横に座り、こちらが真正面に座った事を確認し口を開いた。


「さて、と。まずは自己紹介でもしてもらおうかねぇ。」


 彼女達を改めて見る。

 正面に位置している奴、ラヴィーニアとか言うアラクネは、髪は赤いショートヘアーで目が紫黒のような色をしているし、人型部分の肌が透き通るように白く正に透明のようなという言葉が似合う感じだ。

 その肌とは対象的に蜘蛛の部位の色合いが鮮やかで、黒と黄色のグラデーションとワンポイントの赤い色が何かの紋様に見える。そして何よりその足は触ると切られてしまいそうな程鋭い。外骨格という奴だったか? 人間部位の所も覆われている部分があるな。

 彼女達に共通するのは、複眼と呼ばれる物と外骨格、人型部分にだけチャイナ服のような服を着ているというところだろうか。絹のような輝きのピッチリとしたドレスを身にまとっている。


 左にいる奴は目が吸い込まれそうな程黒く、髪はラベンダーのような紫色の長髪を後ろで纏めていて、人型部位は肌が薄暗いグレーのような色をしている。蜘蛛部位は茶色と白の体毛のような物に覆われており、見た目はフワフワしていて模様のような物はあまりない。


 先程、俺を見ていた右にいる奴は髪が金髪だが目が真紅に染まっていて、人型部分の肌がこの三名の中で一番日本人の色に近いように見える。蜘蛛部位は先程遠目から見ていたが、近くで見ると薄い体毛のような物が見える。これが模様のように見えたのだろう。


 ぐるりと彼女らを見ていたら、その中央に座している奴が口を開いた。

「自己紹介ねェ? 私は別にしなくてもいいわよォ? 仲良くする気なんてないしィ? なんで人族がこんなところにいるのか知りたいだけだからァ」


 開幕から飛ばすなぁコイツ。続けて紫の髪の奴が口を開いてきた。

「我らは人族と慣れ合うつもりはない。むしろ今すぐ殺してしまいたいくらいだが? 我が姉のち、ち、乳房に吸い付いたソイツを許してはおけないしな!!」

 その発言で、全員が俺に視線を集中させた。


 ちゃうねん。


「いや、あの時は何か魔法使われるみたいだったので、何とかしないとっていう一心で。ただやってしまったのも事実なので、謝罪させて貰います。ごめんなさい」


 そうして頭を下げると、それを見たゼルシュが口を開いた。

「ホリ、君が謝ることはないんじゃないか? 彼女達にも非がない訳でもない。それに乳房の一つや二つ、減る物でもないだろう?」


 その発言に紫の髪の奴が食って掛かった。

「貴様! 人間如きの肩を持つか!? それに姉上の乳房だぞ!! わ、わ、私でも吸い付いたことがないのに……!! 今すぐ殺してやりたいのを耐えてこの場にいる事を忘れるな!!」


 力を込めているのか、プルプルと指を差されている俺。

 うーん? 私怨が見え隠れしてますね。


 だが彼女のその発言でゼルシュがまず戦闘態勢一歩手前の気配を纏う。ああもう、喧嘩したい訳でもないんだがなぁ。ゼルシュの肩にペイトンが手を置き、少し宥めるように落ち着かせている。


 少し空気を変えたいが、うーん。


「まぁ、まずは自己紹介します。俺の名前はホリ、ある人達に頼まれてここで魔族の拠点を作ってます。貴方達がいるここも俺が結構前に掘りました。気に入って頂けた様なら幸いです」


 俺を朝から観察していた金髪の子が少し目を輝かせ、こちらに口を開いた。

「この穴、通り道が少し狭い……、出来ればもっと奥行きのある迷路のように掘り抜いて欲しい……。そうすればアラクネには……、人気出る……!」


 おお、やっぱり種族によって好みが出るんだな。いい情報だ。

「ああ、あくまで簡易的な拠点なもんで……。でもそれならそういう場所を作っておいてもいいですね。ご意見ありがとうございます」

 と言うと、その子はコクコクと頷いて満足そうだ。しかしソレに反応したのが先程から敵意メーターが振り切っているシスコンの子。

「トレニィア!! 人族と仲良くするな! 話すだけで穢れるわ!」

 トレニィアと呼ばれる子は少し俯いて悲し気にしている。


 うーん、どうしたものか。

 悩んでいると、ト・ルースが口を開いてきた。

「若い子は元気だねぇ。でも感情だけで話をしていい状況でもないぞえ? お前達も棲み処を追われここまで来たんじゃろう? ヒッヒッヒ、あたしらもそうさ。そしてここにいるホリ殿に拾われて今日までやってきとる。飯も食わせてもらったんだ、一宿一飯の礼として話を聞くくらいできる種族じゃなかったかの、アラクネは?」


 紫の髪をしたアラクネはそう言われ、「グゥッ!?」と呻く。

 おお、ぐうの音しか出ない人を自分以外に見つけたぞ! 少し場の空気が落ち着く、ありがとうト・ルース。

「じゃあ改めて、ホリと言います。どうぞよろしく」と右手を出した。


 その手を見て、暫く考え込んでいる三名のアラクネ達。

 顎に手を当て、中央にいるラヴィーニアがこちらに蜘蛛部位の足を出してくる。

 その足と握手……? をしておいた。

「昨日も名乗ったかもしれないけどォ、ラヴィーニアよォ。まァ、話を聞いてあげるくらいならァ、いいでしょ」


 それを見た他の二匹も少し冷静になってくれたようだ。

 紫の髪をした奴は穴を開けてやろうといわんばかりに強く睨みながら蜘蛛の足を出してきた。

「貴様、許した訳ではないからな……?」とボソリと呟きながら彼女は俺と握手……? をする。

「レリーアだ、人族と慣れ合うつもりはない。覚えなくていいぞ」

 飛ばすなぁこの子も。


 三匹目、先程名前を叫ばれていたから知っているが金の髪の子にも右手を出す。

「トレニィア……、姉様の発言は……私から謝る……。ごめんなさい……」


 気にしてないよと小声で伝えると、彼女は安心したように微笑んだ。

 それを見ていたト・ルースがいつもの笑い声をあげ、話を戻す。

「ヒッヒ、そういえばどういった経緯があってここに来たんだったかねぇ?  改めて説明してもらえるかい? そこの威勢がいいの、どうだい?」


 指名をされたレリーアは、面白くないといった表情で説明を始めた。

「我らは、ここより少し離れた場所の大木に巣を作っていた。だが我々が巣から離れていた時に異常が起きた。そして継続して住むことが困難だったのと、原因が不明の為即座に移動を始め、二日ほど前にここを見つけ身を休めていた」


「異常というのは?」

 ペイトンが口を開く。

 それに答えてくれたのは、トレニィアと呼ばれる子。

「大木と周りの植物たちの……、急な成長……。葉や枝が増えてたり伸びてたりした……。作った巣がそれによって潰されていて……不気味だった……」

「原因というのに心当たりはあります?」

 今度はパメラがそう尋ねる。

 それにはラヴィーニアが答えてきた。

 彼女は何故か自信満々に胸を張り、少し自慢げに答える。眼福です。

「知らないわァ。でも魔力の残滓も殆どなかったし、原因がわからないから不気味なのよねェ」

 却って魔法でどうにかしたとわかった方が原因も特定しやすいから敵による物なのかも判明しやすい、それがなかった為撤退を選んだという事か。


 少し気になるので森によくいる面々に質問してみる。

「いつも狩りにいく森でそういう現象はあった? 聞いた感じだとかなり様変わりするようだし、すぐわかりそうだけど」

 俺の質問に狩猟組は全員首を振り、否定をしてくれる。

 ううーん? 何なのだろう。ポッドに少し聞いてみるかな。



 話を少し重ねた所でト・ルースが口にした一言で、少し空気が変わった。


「それで? アラクネはどうするね? 棲み処を潰されてここに来たんだろう? ここに住み着くつもりなのかい?」


 ラヴィーニアがそれを聞き顎に指を置き、うーんと目を瞑り考えている。

 その隣にいるレリーアが即座に大きな声でそれを否定した。


「フン! 住み着いてお前らのようにそこの下劣な人間の配下になれと? バカにしているのか!? 我らには魔族の矜持という物がある! 愚劣で低俗な者と一緒になどいれるか!」

 ゼルシュがその言葉に流石にカチンと来たようだ。


「おい貴様、事情もさして知らぬ癖に好き放題ホリを侮辱するというのなら、まずその口を閉じさせてやるぞ? こちらが堪えてやる理由なぞないのだからな!」


 立ち上がり、槍を持つ力が強くなっているゼルシュ、そしてよく見るとアリヤも剣に手を添えている。臨戦態勢に入ってしまった二名。

 うーん、折角空気が落ち着いたのになぁ。


 レリーアはそれでもまだ言い足りないのか、叫ぶようにして口を開く。

「やれるものならやってみろ雑魚がッ! むしろ貴様らに問うが、何故人間と共にいる! 何故人間の肩を持つ!? どちらが可笑しいか明らかだろう! 魔族が今日まで追い込まれているのはこいつら人間のせいだと知らぬ訳でもあるまいに!」


 突きつけるような彼女の言葉を聞き、臨戦態勢に入った二名が少し戸惑うように纏っていた戦意を下げていく。ゼルシュやアリヤにも思う事はあるだろうし、むしろ当然の反応だ、双方にとって事情があるのだし。


 彼女は堰が切れたように続ける。

「貴様等だって家族や友を殺されただろう! なのに何をもってそいつに力を貸している! 死んでいった者達にどう顔を向けるつもりだ! 可笑しいのは私か、お前らか、考えてみろ!」


 うーん、正論だなぁ。これまで割と大事にならずに協力してくれている魔族ばかりだったから忘れていたけど、彼女が普通の反応なのだし。


 彼女の言葉に、俺の為に口を開いてくれたゼルシュ、守ろうとしてくれたアリヤの両名も身につまされる思いだろう。

 そして何より、その二名を叩く彼女も、自分達魔族にとって至極当然の事を言っているのに、何故責められなければならないのかという気持ちでいっぱいだろうし。

 双方にとって心を痛める話だ。




「よし、じゃあこうしましょう」


 あくまで提案だけど、どうするかは彼女達次第ということで。

「とりあえずここに住んで、あとは好きにしてくれて構いませんよ。別にこちらも何か命令したりだとか、配下になれとも勿論言わない。ただ他のアラクネが来るかもしれないのでここに残ってほしいというだけです。ご飯も出るし、寝床の確保もできる。いい条件だと思うけどどうですか?」


 それと、と続ける。


「この簡易拠点にずっと住まわれても、逃げ込んできた他の種族の子達がいつ使うかわからないので、住める場所も別に用意します。そちらに移り住んでもらう形になるけどどうでしょうか?」


 ラヴィーニアが瞑っていた目を開き、少し驚いたような顔でこちらを見ながら質問を投げかけてきた。

「出ていけ、とは言わないのォ? 私達が貴方の為に何かするとは言っていないのにィ?」

「ええ、というよりも仮に他のアラクネが来た時の為にもこちらとしては残ってもらった方がいいと思うんですよね。同族の方が話も受け入れやすいでしょうし」


 食料も丁度潤沢にある。

 もし麦もソマの実もダメでも、その場合は狩猟の肉もあるしなんとかなると思う。何より都度都度アラクネ相手に同じ様に揉めるという状況になる方が結果的に損だ。


「ふゥん、フフフ、私は別にそれでいいわよォ。楽だしねェ」

 何か面白かったのか、軽く微笑みラヴィーニアがそう言うと、次に反応したのはトレニィアだった。彼女は胸の前で両手を握りしめ、こちらに意思を伝えてくる。

「私もッ……それでいい……! 夜に渡り歩いている生活も……限界だと思う……。昨日と今日のご飯もおいしかった……! ありがとう……」


 この会話に参加している全員の視線が、ラベンダー色の髪をしたアラクネに向けられた。そしてその視線を受けたレリーアが少し落ち着きを取り戻したのか、こちらを睨みつけながらも静かに口を開く。


「貴様に問う、何故魔族を助ける? 人族の癖に。理由が知りたい」


 うん? 理由、理由なぁ……。

「あー、とある人物達に頼まれたっていうのはあるんですがね。その中の一人と交換条件に離別した家族……、母とペット達を幸せにしてもらったんで。その恩返しがしたいという思いが根幹にあるっていうのもありますし、あとはまぁ、人によってはつまらない目標がいくつかあるだけですよ」


 あまり考えた事なかったけど、理由とすればそれくらい。

「だから人がどう、魔族がどうというのは正直あまり気にしてないですね。この世界で異物だという自覚は持ってます。受け入れられないのはある程度覚悟をしていますから。レリーアさんの仰る事も理解できますし」


 それを聞いてか、隣でアリヤとシーが心配そうに覗き込んできた。

 ええ子達や……、つい二人の頭に手を置いてしまう。


「今はお世話になったこの子達に恩返しをしたい、それくらいの簡単な理由かもしれませんね。最終目標はありますが、出来なきゃ出来ないでまぁ、仕方ないかなと」


 神様ゴミンネ、目標果たせなかったてへぺろ! でも腕輪がショボすぎて無理だったんだよ! とむしろ神様に言ってやろうとすら思ってる。


 俺の言葉を聞き、レリーアが納得したのかはわからないが口を開く。


「わかった。ここにいることにする。だが勘違いするな? 貴様の指図を受けるつもりはないし、助力をすることもない。あくまで同族の為にいるだけだ。それに魔族を裏切るような素振りを見せたら、即座にお前を殺す。それを忘れるな」


 わかりましたと頷き、話し合いは終わる。

 アラクネ三姉妹は再度拠点の穴に入っていき、こちらも拠点に戻っている。


 それじゃあ、まずはトレニィアが言っていた住みやすい場所を作るか。

 迷路のようにって言っていたけど、どうやって作ろうかなー?


 あの少し広い簡易拠点も作った時はシーとかなりの時間費やしたんだよなぁ。通路もかなり広く取った方がよさそうだし。


「うーん、どうしようかな……?」

「ホリ、どうかしたのか?」

「いや、彼女達の住むところをどうやって作ろうかなって、場所はリザードマン達の場所から少しずらすようにして、問題は構造と掛かる時間なんだよね。迷路みたいなのがいいって言ってたけど、どうやったもんかなって」


 その時、アリヤが口を開いた。

「ホリ様、昨日、アノメス蜘蛛ノ胸ニ、吸イ付イテタ」

「うぐ」

「正直、ソレハドウカト思ウ」

「うぐぐ」

「ダカラホリ様、コレ使ウベキ」


 そうして、アリヤがポーチから出したのは……。


「いやアリヤそれはダメ、ごめんホントダメ」

「デモホリ様、昨日ノ所業ハ、チョット引ク」

「ぐう」

「ダカラセメテ、コレクライシテヤッタ方ガイイ」

「うぐうう」


 彼の手にあるのは、ハイパークリエイターパッサングレート。

 これを使えば確かにいい物が出来るだろう。

 震える手でそれを手にしようとするが、褌姿のモヒカンマッチョが頭の中にチラついて手がそれを受け取る事を拒否している。


「ホリ様、サッキ自分ノ事異物ッテ言ッタ。アリヤ少シ悲シイ。アリヤハ仲間ダト思ッテル、イツカアイツラモ分カッテクレル。コレハソノ為ニ必要」


 それを聞き、ふうと一息ついてその液体の入った瓶を受け取る。

「今日は朝飯ちゃんと食ったしな……。それなら、仲間だと認めてもらえるようにせめて住むところくらいちゃんとしてやるとしようか?」

 とアリヤに言うと、笑っている。



 ぐいと一気に飲み干したパッサンGは、少し涙の味がする。

 飲みたくないという意思とは裏腹に、喉をソレが通り抜けたその瞬間に意識を手放した――。

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