復学編

新しい日常へ

 2018年7月1日付けをもって、息子は一般学級への復学を果たしました。病気の発見から治療、リハビリを経て、約8か月の時間が過ぎていました。復学が実現出来た事には、我々家族が暮らす自治体の教育委員会の御尽力と、受け入れて下さった公立小学校の校長、教頭、先生方の御協力と御配慮に依るところか大きいです。校内を移動しやすいようにスロープの設置工事を始めとして、学校内のハードの部分で、様々な方々が考えて、行動に移して頂いた結果に他なりません。どんなに息子本人が努力したからといって、現状では難しい問題を、沢山の方々に助けて頂きましたし、いま現在もそれは続いています。他の地方自治体がどういった対応をしているかは分かりませんが、こうした事例が広く広まって、ひとりでも多くの子どもが、希望する通りの学級への通学が出来るような環境になって欲しいと願うばかりです。


 復学当初は2時限分の授業を受けて、すぐに帰る生活をしていました。これは前述しましたが、脊髄損傷の症状で、下肢の温冷感覚が鈍い息子は、全身の体温調節がとても難しく、昨今話題になっている熱中症に、簡単になってしまう恐れがありました。非常に過酷な状況であり、入院と治療で体力も落ちていましたので、まずは様子見、というところでした。


 しかし、我々親の心配をよそに、息子は毎日笑っていました。学校が楽しい、授業が楽しい、同じクラスのメンバーと話すのが楽しい、と事ある毎にキラキラした笑顔で話してくれました。身体の事だけでなく、病気になる前に通っていた保育園とは環境も、周囲の子どもたちも異なる為、心配はしてもし切れない程でしたが、息子の笑顔を見て、大丈夫だ、と確信しました。やっと戻って来れたのだと確信を持つことが出来ました。


 新しい日常は、あまりにも普通で、あまりにもキラキラした日々でした。


 息子はいま、2年生になり、変わらず元気に、日々、学校へ通っています。放課後、学校外で遊ぶ友達も出来て、学校から帰って来ると、車椅子を飛ばして遊びに行きます。まだ子どもだけでは心配があるので、わたしなり妻なりが付いていきますが、そんな事はお構い無しに飛ばして行くので、とてもではないですが追い付けません。息子の車椅子を製作して下さった会社さんが、メンテナンス時に息子の車椅子を見て「……かなり活発なお子さんですね」と呟く程、車椅子を泥だらけにして遊んでいます。いつか、息子が言った、「病気になっただけだからなあ」という言葉を思い出し、本当にその通りなのだな、と思うような毎日です。

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