アテロームという病気②

 排膿手術をして、1度は治まったアテロームの症状ですが、2017年9月には再び膿が溜まり、腫れ上がってしまいます。この時は外来処置で膿を取り除きました。というのも、実は翌10月には、アテロームその物の切除術を予定していたからで、ここで緊急入院、手術となれば、その手術を先伸ばしにしなければならなくなる、と医師の提案があっての事でした。息子の場合、患部が顔にある為、腫れ上がると非常に痛々しく、将来に渡って繰り返すようでは可哀想だ、と妻と話し合った結果、我々から依頼をして、小学生になる前に、と入れた手術の予定でした。出来れば引き伸ばしたくはない、と思い、処置をしていただきました。


 この処置が強い痛みを伴う物でした。排膿には患部上の皮膚を切らなければならないのは勿論ですが、その為に射つ局所麻酔も顔の、小鼻の横の、皮膚の薄い所へ射つ訳で、当然、その注射その物には麻酔は掛かっていないのです。処置台の上で、息子は泣き叫びました。処置その物は何事もなく終える事が出来ましたが、この処置を目の当たりにした事が、後のわたしの判断に大きな影響を与える事になったのです。


 10月下旬、アテロームの切除術で再び入院しました。この時、息子は右足の痛みを訴えていた事を覚えています。術前の検査と問診の時に医師にも相談しましたが、血中の尿酸の値が通常より少し高いが、手術には問題ない値であり、筋肉痛や成長に伴った痛みかもしれない、との事でした。息子本人とも問診をし、右足の触診もして頂いての事だったので、この時はそう言うものなのだろう、と思いました。


 思えばこれが、後縦隔腫瘍の、最初の症状だったのだと思います。この時点で、既に背骨の中の神経へ、腫瘍が圧をかけ始めていたのだ、と。確かなことは分かりませんが、わたしはいまも、その様に思っています。


 アテローム切除術は、予定された1時間半を大幅に越える物でした。はっきりとは覚えていませんが、たぶん倍の、3時間近く掛かったと思います。理由は、息子のアテロームは、その直下の頭蓋骨の骨膜と癒着する程深かったからでした。病名もデルモイドシストと名前が変わる程の深さ、大きさだったと医師から説明を受けました。術後の経過は良好で、問題なく、1泊の入院のみで退院しました。


 ただ、足の痛みは、改善されることなく、寧ろこの入院、手術を境に、酷くなって行きました。

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