第12話 遊園地その2

 お化け屋敷も終わり、既にみんなは次にどこに行くか話し合っていた。その中に疲弊しきったのが一人。

「大丈夫か? 村田」

 流石に怖かったようで、心拍数が上がって息切れを起こしている。

「飲み物でも買いに行こう」

 みんなに飲み物を買ってくると伝え、村田と席を外す。

「はぁー、怖かったー。市埜くんは平気だったの?」

 自動販売機で買ったジュースを一息で半分近く飲み、村田は尋ねる。

「お化け屋敷はあんまり怖くないな。本物が出たら分からないけど……」

 言いながら、中でした戸成との会話を思い出す。「本物が出ても驚かないと思う」あの寂しげか声、過去に何かあったのだろうか。

 村田も落ち着いたようで、みんなのところに戻ると、次はジェットコースターに乗るらしい。ジェットコースターを見たところ、かなりの長さと、アップダウンがあった。

 どうやら、ここのジェットコースターは、日本でも五本の指に入るくらい怖いらしい。

 さすがの人気具合で、既に長蛇の列ができており、待ち時間は、二十〜三十分程だった。待っている間にも、何回も頭上をコースターと共に、悲鳴が通り、怖さを物語っている。

 ようやく俺たちの順番が回ってきた。

 人が多く、適当に乗ると、俺の横には戸成がいた。お化け屋敷のこともあって、少し気まずい空気になった。

 ブザーが鳴り、ゆっくりと動き始める。最初のテンプレとも言っていい坂をゆっくりと登り、徐々に頂上が見えてくる。

 前の車両が次々と傾斜の向こうに消えていく。そして、とうとう俺の乗っている車両も、猛スピードで坂を下る。落下のGと、内臓が浮くような感覚。この感覚はどうも好きになれない。二分ほどこんな感覚と闘うと、次第に速度は落ち、ゴールへ着いた。

 降りる際に、戸成が足をよろめかせた。咄嗟に手をとる。

「……大丈夫か?」

 戸成は無言で頷いた。

 すっかり日も暮れ、閉園時間が迫っていた。ここで帰ることになり、駅へ向かい電車に乗る。駅でみんなと別れ、村田と帰路につく。

「市埜くんってさ、戸成さんのこと好きなの?」

 唐突に村田は言った。

「え? いや、別にそんなんじゃ……」

 その時はただ、そう答えるしかなかった。実際のところ自分でも分からなかった。戸成のことをどう思っているのかなんて――。


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