第168話 コレットの書~真実・8~

 いっいや! おっ落ち着くのよ、私……まだそうと決まったわけじゃない。

 だって、この遺跡には何回も来ていんだし、まずは確認をしてから。

 グレイさんにしかわからなかったように、これは私にしかわからない事だもの。


「……あの、そのゾンビと戦っている所って私が重装備をしていた時でしょうか?」


 あのぼったくり重装備をしていたのは、あの日だけ。

 だから、それを知らなければ……。


『――? ああ、そうだけど』


 ……知ってた……私が初めて遺跡に来た日と決まってしまった。

 という事は――。


「あの時のスケルトンって、ケビンさんだったんですか!?」


『えと……そうだが……』


 ――。


『あ、あの時のフルスイングは見事だったぜ! コレ――』


「――いやあああああ! 予想が的中しちゃうなんてぇえええええ!」


 なんでこうも嫌な予感は当たるのよ! こればかりは外れててほしかった!

 しかも、本当に殴り飛ばしたスケルトンがケビンさんだったんて……まだ再生したから良かったけど、バラバラのままだったら目も当てられないし!!

 そもそも、何が「まだそうと決まったわけじゃない」よ! よく考えなくても、ナイフを落としたのは初日目。

 つまりナイフを拾って私の名前を知っている時点で、ケビンさんって決まってるじゃない!

 って、今はその事を悔やんでる場合じゃない! まずは謝らないと!


「あああ、あの時は思いっきり殴っちゃって、すみませんでした!」


 じゃないと、私ケビンさんに蹴り飛ばされちゃうかもしれないし!


『……へ?』


「すみません! すみません!」


 怒られるのは仕方ないけど、飛び蹴りだけは許してほしい。


『えっ? えっ? とっとにかく、ストップ! それ以上、頭を振ると……』


「すみ――あうっ!」


 頭を振りすぎて、目の前がクラっとなっちゃった……。

 ケビンさんも飛び蹴りをしてきそうにもないし、これ以上は止めた方がいいわね。

 じゃないと謝っているだけで倒れそうだわ。


「……うう……」


 それにしても、衝撃的な事実が発覚しちゃった。


「……まさか、冒険初日に約束を果たせていたなんて……」


 あの日、すでにケビンさんが私の目の前にいた。

 しかもプレートがあの場所に落ちてたんだから、当然持ってたわけよね。

 そこに全く気が付かなかっただなんて……。


「……私の馬鹿……」


 気が付かなかったとはいえ、私の一振りで自分から全てがぶち壊し。

 そして、今日まで何回も死にかける羽目になったわけで……。


『約束を果たす? ちゃんと説明してくれるとありがたいんだが……』


「あっそうですよね!」


 ケビンさんは私について何も知らないんだから、きちんと説明をしないと。


「……え~と……」


 何処から話すべきかな?

 ん~やっぱり話すなら、最初からの方がいいわよね。


「……私が赤ちゃんの時、教会の前に置き去りになっていたらしいんです」


 となれば、まずは私の生い立ちからよね。


「その時、神父様とシスターが……いえ、ホセさんとマルシアさんが私を引き取って育ててくれたんです」


 その日はケビンさんの誕生日だったけど、まぁそこは話さなくてもいいか。

 全然関係ないし。


『……えっ? それって親父達の事か!?』


「そうです」


『――っ!』


 あ、ケビンさんが顔を上に向けた。

 神父様とシスターの事を思っているのかな?


「私はお世話になっているお二人に恩返しがしたくて、行方不明になっているケビンさんを見つけ出して連れて帰ると約束しました。それが冒険者になった理由で、ここにいる理由でもあります」


 とは言っても、スケルトンの姿で連れて帰っていいのかが問題として残っていますけども。


『……なるほど、確かにその時に約束は果たせてたかもな』


 うぐっ……。


「……はい」


 というかケビンさん、何回も私達の前に出て来ているのなら今日みたいに手紙をくれても……待てよ、入り口に書いてあった古代文字って……もしかして、ケビンさんが……。


「いやー良い話っスね!」


「……」


 ちょっと、マークさん……何でここで水を差してくるんですか。

 それに良い話って言うけど、マークさんが言うと何か軽く聞こえてちゃうのが嫌だな。


「それにしても、コレットさんが探していた人がずっと目の前にいたとは! 灯台何とかっスねぇ……けど、お互いの誤解が解けて万々歳っスね!」


 本当の事だから何も言い返せない。


「――っ! おい、ナシャータさんよ」


「じゃから、わしは……なんじゃ?」


「いつ、あいつに魔力を送ったんだ?」


「はあ? あいつにやる魔力なんてない……のじゃ……――っ!」


「……はぁーどうやら、これは万々歳じゃないようだ――なっ!」


「――ちょっ!? なななんスか!」


『「えっ?」』


 ええっ! いきなりどうしたの!?

 グレイさんが、剣を抜いてマークさんの首元に当てたちゃった!


「ナシャータの話じゃ、てめぇに魔力は送っていないそうだ。つまり今ケビンの声が聞こえるのは俺、コレット、ナシャータのみだ」


 えと、それが……?


「へっ? それが……」


「おかしいんだよ。ケビンの声が聞こえない以上、俺とコレットの話だけで「お互いの誤解が解けて」なんて言えるわけがない」


 ……ああ! 確かにそうだわ!

 ケビンさんの声が聞こえてないと、そんな事が言えるわけがない。

 じゃあ、なんでマークさんはそんな事が言ったの……?


「……チッ、しゃべりすぎたっスね」


「てめぇは一体……」


 え? え? 何? 何がどうなっているの?

 マークさんがどうしたって言うの!?

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