第124話 コレットの書~発生・5~

 ゾンビを蹴り飛ばした、あのスケルトンとは大違いね。

 綺麗に飛び蹴りを決めてきたわね……ってそんなこと考えてる場合じゃない、カルロフさんその衝撃で倒れちゃったけど、大丈夫かしら!


「――っが、なっ何が……起こったのだ?」


 良かった、鼻血が出ているけど大きな怪我はしていないみたいね。


『カタ!』


「ゴフッ!?」


 あ、レア・スケルトンがカルロフさんの上に飛び乗って馬乗り状態になった。

 え……もしかして、あの状態で攻撃をする気?


「は? スケルト――」


『カタカタ! カタカタカタカタカタ!』


「――ンッ!? なっなん! グハッ! ちょっ! グヘッ!」


 うっそ、すごいラッシュ攻撃。

 あれだけ殴ってよく自分の拳がバラバラにならないわね、不思議だわ……ってそんな事を考えてる場合じゃない! あのままだとさすがにまずい、早く助けないと!


「カルロフさん、今助け……」


『カタタッ!』


「ひっ!」


 レア・スケルトンに睨みつけられただけで、動けない。

 何、あの鬼気迫るレア・スケルトンは?

 今まで怖い思いはしたけど、目の前にいるレア・スケルトンが一番怖い。


『カタッ!!』


「グフッ!」


「きゃっ!」


 レア・スケルトンの右ストレートが、カルロフさんの顔面に入っちゃった。

 う~わ~……あれは痛そう。


「……う……コレ……ど……の……ガクッ」


 あっカルロフさんがぐったりしちゃった!

 足がピクピクしているから生きてはいるみたいだけど、気を失ったみたい。

 どうしよう、いくらカルロフさんでもこれ以上は殴られたら死んじゃう。

 っ怯えるな! 勇気を出せ! ファイトわた――。


『カタ、カタカタカタカタ』


 ――し? あれ、レア・スケルトンの攻撃が止まった。

 もしかして、カルロフさんが死んだと思って止めたのかな?

 ……となると次の標的になるのは……。


『……カタ』


「っ!」


 私の方を見て笑った! 骸骨だから表情なんて無いけど、今の感じは絶対に笑った! やっぱり次の標的は私か!

 う~ん、あのレア・スケルトンと戦っても勝てる気がしないし走って逃げられる気もしない、転送石を使って脱出するにしても今から準備していたらその間に攻撃されちゃう。

 なにより、カルロフさんを置いていくわけにもいかないし……あれ? これって詰みってやつなんじゃ。


「……」


 嘘でしょ!? やっとケビンさんの手掛かりを見つけられたのに、これじゃこの世に悔いが残りまくりよ! こうなったら意地でも生き抜いてやる、辺りに何か打開策になるようなものは……。


 ――ズズ


「ん?」


 何だろう、レア・スケルトンの後ろにある通路の奥で動くもの見えるけど……。


 ――ズズズ


 だんだん大きくなって来た、こっちに向かってきている?

 もしかして、遺跡にいた誰かが騒動に気が付いて助けに来たんじゃ――。


 ――ズズズズ


 いや違う、明らかに人の動き方じゃない。

 あれはどう見ても……。


「シャーーーーーーーーー」


 ジャイアントスネーク!!

 まさか、この遺跡にいたなんて最悪すぎる。


『カタ! カタカタ!』


 ん? レア・スケルトンが振り返って驚いてるし、ジャイアントスネークもレア・スケルトンを睨みつけている。

 この状況、前閉じ込められ魔獣と遭遇した時とよく似ているわね……あっそうだ! またレア・スケルトンを囮に使えばいいんだわ!

 私が逃げればレア・スケルトンが追って来る、そのレア・スケルトンをジャイアントスネークが追う、途中で撒けばレア・スケルトンがジャイアントスネークに追われ続ける、そうすればこの場から2匹を離している状態になっているからカルロスさんを回収して脱出。

 私の体力が持つかわからないけど、文字通り死ぬ気で走るしかない。

 今日は何回気合を入れないといけないのかしらね……よし、ファイト私!!


「すぅ~はぁ~……こっちよ!! こっちに来なさい!」


 まずは、全力疾走!


『カタ、カタカタ?』


「シャーーーーーーーーー」


「はっ! はっ!」


 付いて来ているかな?

 

『カタカタ、カタカタ! カタカタカタカタ!』


「シャーーーーーーーーー」


 よしよし、作戦通りちゃんと2匹が追って来たわ!

 後はこの先にあるT字路で右に曲がるとみせかけて、左に曲がって撒く!


「はっ! はっ! はっ! 見えた! T字路!」


 失敗は許されない、これは命を懸けた1発勝負。

 右に曲がるとみせかけて……今だ! 左の方向へ!


「っ! っとっと! あぶなっ!」


 さすがに急転換すると転びそうになっちゃった。

 でも、これでレア・スケルトンとジャイアントスネークは右に――。


『カタカタ! カタカタ、タカタカタカタカタカタカタ!』


「シャーーーーーーーーー」


 ――曲がってない! ばっちり私の後ろに付いて来てる!

 何でよ!? 今のフェイントはうまくいったと思ったのに!!

 いや、焦るな私。ここは遺跡なのよ、T字路はまだまだあるから次にかけっ……。


 ――ガシャアアアアアン!


「っ!?」


 ちょっ! また床が崩れた落ちた!?

 どれだけボロボロになっているのよ、この遺跡は!


「きゃああああああああ!」


 もう駄目だ、今度こそ終わった。

 悔いが残りまくりなのが無念すぎる。


 ――ぎゅう


 えっ私今、抱きかかえられてる?


 ――ドン!


「っ!」


 誰かが落ちる瞬間に私を抱きかかえて着地した。

 しかも、この体勢は子供の頃からずっと憧れだったお姫様抱っこ……。

 その相手は一体、誰――。


「――がっ!?」


 目の前には真っ白な顔が見える。

 ……何で。


『カタカタカカタカタ、カタカタ?』


 ……何で初めてのお姫様抱っこの相手が、スケルトンなのよおおおおおおおおおおおお!!

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