第104話 コレットの書~魔力の鎧・3~

「――と言うわけです」


 ひととおりあった事を親父さんに話したけれど。


「…………」


 親父さんの頭から煙が出ている。

 理解に苦しんでいる感じね。


「……えーと……その……なんだ……とにかく元気になってよかったな! んじゃ、装備を取ってくるから待っていろ!」


 足早に店の奥に行っちゃった。


「ありゃあ理解できないからって逃げたな」



「さあこれだ!」


「「おお!」」


 今度は胸当てみたいに前側だけじゃなくて、上半身が守れるタイプだ!

 しかも、胸辺りにプレゼントの箱みたいに赤いリボンが付いててかわいい~。

 

「――って! 本当に俺の剣にリボンが!」


 本当だ、柄の部分に青いリボンが巻いてある。


「あーカミさんがどうしてもって……」


「奥さああああん!」


「いいじゃないですか、かわいいし」


「いやいや、剣にかわいいとかいらねぇから……さっさと取っちまお」


 私はかわいいからこのままにしておこうっと。

 ではでは、早速着てみますか。

 鋼の胸当てちゃんお世話になりました。


「――軽っ! ってか薄っ!」


 重さも鋼の胸当てくらいだし、厚さも胸当てより薄い。

 これって、もしかして親父さんに……。


「ん? 何だその目は。まさか鎧が薄いから俺が手を抜いたと思ったか?」


「いっいえ、そんな事は……」


 心を読まれた。

 いやいや、こんなのないと考える方が難しいでしょ。


「安心しろ、そんな事はしていない。そう見えても強度はミスリルゴーレム並みだぞ」


「えっ!?」


 こんなにペラペラなのに、そこまで硬いの!?


「だから、よほどのことがない限りへこむどころか傷一つつかん。コアを素材にしたからこそ出来る品物ってわけだな」


 へぇ~コアってそんなにすごかったんだ。


「親父さん、ありがとうございます!」


「鎧の事を聞いた途端に態度を変えやがって……まあいいけどよ」


 これさえあれば多少無茶な事をしても大丈夫そうね。


「うし、受け取るもんは受け取ったし昼飯を食ったら遺跡に行くか」


「はい!」


 昼から頑張るぞ!

 ファイト私!




 ◇◆アース歴200年 6月20日・昼◇◆


「はぁ……はぁ……」


 何かおかしい、遺跡に向かう途中から頭が痛くなってきたし気分が悪い……もしかして風邪がぶり返したのかな?

 でも大丈夫、もしもって事があるかもしれないから漢方薬を聖水の小瓶に入れて持って来ているのよね。


「……これさえあれば――ゴクッ」


 うぐっ! やっぱりまずい!

 意識が飛びそうだけど、ここで倒れたら意味がない! 根性で乗り切れ!


「――ップハ! ぜぇ……ぜぇ……」


 ――何とか耐えられた、一瞬花畑が見えた気がしたけど。

 効果はすごいけど、このまずさはどうにかならないのかな。


「ん? どうした、コレット。いろいろな意味ですごい顔になっているが……」


 まずい。ここで、風邪がぶり返したから漢方薬を飲みました。

 なんて言ったら元気でも強制送還されちゃう、何とかごまかさないと。


「こっこれは、昨日の漢方薬の味を思い出しちゃって……あはは。あっ! 遺跡が見えてきましたね、私先に行って中の様子を見てきますね!」


「あ、おい! 走るとあぶねぇぞ! 本当に大丈夫なのか、あいつ」



 入口付近は異常なし!


「さぁ! がんばりますよ!」


 今日こそはケビンさんを見つけるんだから。


「いや、今日はそんなに頑張らんでもいいから……しかし、あの暴れた馬鹿共には感謝だな」


 え? 感謝?


「どう言う事ですか?」


「連中に話を聞いたら、壁を破壊したら未発見だった隠し部屋をいくつも見つけたらしい。だが目的はレア・スケルトンだったから、捜索せずに先に進んだんだとよ」


 未発見の隠し部屋に未探索……それって。


「それって、ケビンさんがいるかもですか!」


「の可能性も十分にある。最近になって隠し部屋が多い事が分かったからな、暴れてくれたおかげで探す手間が省けたってわけだ」


 なるほど、それで感謝か。


「後、未発見の隠し部屋と壊して通れるようになった所をマッピングして行く。それが今日やる事だ、それじゃ進むぞ」



「う~んと……この辺りは特に異常はないですね」


 壊れないから見取り図のままね。


「そうか……よし、じゃあ次はこっちに行ってみるか」


「は~い」


 順調にマッピングは進んでいるけど、肝心のケビンさんの手掛かりはないな~。

 っと、この辺りはあちこち破壊されて吹き抜け状態ね。

 これは手分けした方がよさそう。


「それじゃ私はこっち側を調べますね」


「おう、罠には気を付けろよ」


「わかってます」


 でも今日はこの鎧があるから安心、罠がろうがレア・スケルトンが出ようが……。


『――カタカタカタ!!』


「へ?」


 この聞き慣れた歯を当てる音は――。


「……………………」


 本当にスケルトンが出てきちゃった……しかも、レア・スケルトン腰ミノ型。

 あわわ、早くグレイさんを……って、うそでしょ!? 見える範囲にいないし!

 ……どうしよう、一体どうしたらいいの?


「――っ!」


 何怖がっているのよ私、こんなんじゃ駄目だ!

 大丈夫、今はこの鎧があるんだから落ち着け……よしっここは。


 ――パンッ!


 いった~気合を入れるために両手で自分の頬を叩いたけど、強すぎちゃった。

 ……よしっ! やるぞ。


「――っく、来るなら来い! えい! やあ! この!」


 声を出してグレイさんにこっちの状況に気付いてもらうしかない。

 その間は……うん、この鎧があってもやっぱり怖いものは怖いからスケルトンがこっちに近づいてこない様にメイスを振り回して時間稼ぎをしよう。


『カタカタ、カタカタ。カタカタカタカタ――』


 うそっ歯を鳴らしながら近付いて来たし!

 もしかして、余計興奮させちゃった? だとしたら余計まずい状況になっちゃったよ!


「うわああああああああああああ!!」


 グレイさん、早く気付いて!


「――?」


 あっグレイさんが顔を出した。

 お願い、こっちを見て。


「――っ!」


 よし、こっちに気付いた。

 ……あっそうだ! このままスケルトンを引き付けて、グレイさんに背後から倒してもら――。


「コレット! 今行くからなああああ!」


 ――うのは駄目みたいね。

 大声のせいでスケルトンが後ろを向いちゃった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る