第27話 コレットの書~金・6~

「……これでよしっと、お疲れ様ですな、おかげで研究が進みますな」


「……はい……それは……何より……です……」


 昨日の事を根掘り葉掘りいろんな事を聞いて記録書に書いてたけど一体何百枚の書いたんだろう……書類の山が出来てるんだけど。

 それにしても喋り通しだったから、もう喉が痛くて痛くてしかたないわ。


「いやはや、本当に不思議な事がまだまだこの世の中にはいっぱいありますですな」


 私はジゴロ所長さんの存在が不思議でいっぱいだよ。

 この建物自体もそうだけど、なんであれだけ喋ってまだ元気なの? 声も全然掠れてないし。


「しかし、興味深いですな。ドラゴニュートが古代文字を書いたかもという事は……」


 そうだドラゴニュートについて聞きたかったんだ。


「あの……話していた時……に……」


 駄目だ、喉がガラガラで声が出させない。


「む? コレット氏、声がガラガラになってますな」


 なるに決まってるでしょ。


「ならばこれを飲むですな」


「……なん……ですか……? それは……」


 なにこの飲み物は……物凄い濃い緑色なんだけど。

 これ飲んで大丈夫なのかしら。


「どうしたのですな? これは喉に効く薬草のジュースですな。私もよく喋る性格のためよく飲んでるので効果はお墨付きなんですな」


 話の途中で飲んでいたのはこれだったんだ、通りで喋り続けられた訳ね。


「じゃあ……いただき……ます。――ウグッ!」


 予想通り苦い!!


「ゲホッゲホッ! これ、苦いです……よ? あ~あ~うそ! 喉の痛みがもうない!」


「それはよかったですな、即効性を極限まで高めに他の物も混ぜ込んだ特別なのですな」


 え? 他の物って何? 本当に飲んで大丈夫だったのこれ!? というか飲んでからそれを言う!?

 ん~今は特に体に異常はないけど、あとあと大丈夫かしら、でも飲んじゃったから後の祭りか……なにかあったら絶対訴えてやる。


「それで、疑問だったんですがモンスターがこんな文字を書く事なんてあるんですか? グレイさんは他とは違ってドラゴニュートは頭がいいから可能性はあるって言ってましたけど」


「それですな……前例はないので詳しくこの文字の研究をしなければドラゴニュートが書いたとはっきり言えないですが、グレイ氏が仰る通りドラゴニュートは頭がいいのは事実ですな」


「なるほど……」


 解決するのは今後しだいか。


「それじゃ、今度こそ私はこれで……」


「あ、待つですな」


 まだ何かあるの?

 もう帰りたい……。


「これはお礼金ですな」


 お礼金? ただの紙切れじゃない。


「あの、これは?」


「おや、コレット氏、小切手を知らないのですな?」


 小切手?


「すみません、最近リリクスに来たもので……」


「謝る事ではないですな、早い話その紙をギルドに持っていけばお金と交換してくれるのですな」


 なるほど、そんな事が出来るんだ。


「少ないですが受け取ってくださいですな」


「ありがとうございます!」


 よかった、ちょっとでも助かるわ。



 あ~やっとギルドに帰ってこれた~……疲れたよ~。


「あ、コレットさん、お帰りなさい。どうでし……その疲れ具合はジゴロ所長に根掘り葉掘りずっと休まず質問攻めにあったみたいですね」


 やっぱり受付嬢さんも分かっていたのね。


「はい……とても疲れました……あの、グレイさんは?」


「あの後やる事があるって言ってどこか行かれましたよ。あ、それと伝言も預かってます、明日今日と同じ時間にギルドに来る事、だそうです」


「そうですか……ん? あの後ってドラゴニュートの事でギルドと話すって言ってませんでした!?」


「あ、えーと……してませんね……」


 そうか、グレイさんたらジゴロ所長さんの質問地獄を避けるために逃げたんだ!


「く~!! グレイさん恨みますよ!!」


「まぁまぁ。あれ? コレットさん、その手に持っている紙は小切手ですか?」


 あ、そうだった。


「はい、ジゴロ所長さんにお礼金としてこれをギルドに渡すように言われました」


 いくらなんだろ、5万……はさすがに無理でもせめて1万はほしいな。


「そうですか、ではお預かりしますね。――え!?」


 どうしたんだろ、受付嬢さんが小切手を見た瞬間、目をまん丸にしたけど。


「あの、どうかしたんですか?」


「……コレットさん」


「はい?」


「ちょっと時間もらえますか?」


「はい、大丈夫ですけど……」


「少し待っていて下さいね!」


 走って2階に行ったけど本当にどうしたんだろ。



 あ、降りてきた。


「はぁはぁ。コレットさん、お待たせしました。上の許可が下りたので小切手の金額をお渡ししますね」


「あ、ありがとうございます」


「お礼金の20万ゴールドになります」


「…………」


 ――はい?

 聞き間違えかな、いま20万って言ったような。


「……あの、今いくらと……?」


「20万ゴールドです」


 やっぱり20万!?


「いやいや! おかしいですよ! 私、あの古代文字とドラゴニュートの話をしただけですよ!? それでなんでそんな大金が!?」


「私もわかりませんが……相手がジゴロ所長なので……普通の常識では……」


 あ~確かに。


「い、いいんでしょうか……そんな大金もらっても……」


「何の問題もありませんよ。コレットさんがそれだけの仕事をしたと言う事です。どうぞ」


「……わかりました。ありがとうございます!」


 よかった……グレイさんへの借金はこれで返せるわ、でも――。


「本当は遺跡に行きたかったけどな~……はぁ」


 今日はジゴロ所長さんのせいで探索より疲れた、今日はもう宿屋に戻って寝よう……。

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