第4話 ケビンの書~出会い・2~

 右の通路を進んだけど特に部屋もなくただただ真っ直ぐだな。

 うーん、こっちは間違いだった……でもないなかったみたいだ。

 通路の先の壁が崩れて光が見える所を発見! 風はここから流れ込んでたんだな。

 光が見えるって言う事は外に通じてるの間違いないな、これは幸先がいい――。


『――ってなんじゃこりゃ!?』


 確かに外には出た、出たんだが……ここは馬鹿でっかい縦穴の底じゃないか!

 この遺跡にこんな所があったなんて、上を見上げると青空が広がってる。


『あ、そうだ、この穴の崖から登れば外に出られるじゃないか。そうとなればさっそ……く――』


 あれ? なんで? 進もうとしてもこれ以上足が前に出せない。


『ん! ふん! うーん……やっぱり駄目だどうしても足が前に出なくて進めない』


 これはトラップでも魔法でもない、無意識に俺の体が拒否しているんだ「これ以上進んではいけない」と。

 何故そんな事が言えるのか自分でもわからんがそう感じる。

 この体になって感覚もおかしくなったのだろうか?


『……仕方ない、引き返すしかないか』


 まったく、とんだ無駄足だったな。


『そういや、さっきの穴の真ん中に白い物が山みたい盛り上がってたが……あれはなんだったんだろ』


 まぁあれ以上は進めなかったから確認しようにもなかったし、別にいいか。

 さて引き返そう。


《……グルルル……》




 ◇◆アース歴200年 6月11日・昼◇◆


 いやはや、まさか白の遺跡の隠し通路の奥がこんなにも広かったとは……おまけに通路は迷路みたいなってるし、トラップも生きてるし、いくつもの階段を登ったしで左の通路の方もだいぶ歩いたぞ。

 しかし動き回ったおかげでこの体について色々わかってきた。


 1つ目。今まで自然すぎてまったく気が付かなかったが目だ。

 目玉がないのに何故か見える……しかも暗いこの遺跡内でも昼間のように明るく見えるし、むしろ肉体があったときより視力がよくなったのかはっきりと先が見える、これは喜ばしい事。


 2つ目。これも自然すぎて気が付かなかったが耳だ。

 聞こえるというよりは全身の骨に直接音が伝わっている感じだな。違和感があるが、そのおかげで近距離だと物音のした方角が瞬時にわかる、足場が崩れそうとかモンスターの位置とかも把握しやすい。


 3つ目。喉の渇きもない、空腹もない、もちろん生理現象もない、これは当然だろう……何せこの体は骨だけなんだからな、その必要がまったくない。


 4つ目。本来、人間は筋肉を伸ばしたり縮めたりして動くもの、骨自体が動けるわけがない……今その骨が動いちゃってるがそこは置いといてだ。その筋肉がないせいか体の動きがぎこちない、もしあの時に剣が抜けて戦っても思うように動けなくて結局やられていたかもしれん。

 ただ筋肉がないおかげで疲労もなく、ここまで歩いたのに疲れがまったくないのはありがたいがな。


 これらが今、分かったスケルトンとしての性質。

 俺からしたら結構な利点が多いのに下級モンスター扱いなのは何故だろう?

 そういえばスケルトンの戦い方って武器を持っていようが適当に振り回すだけだったな、逃げて追って来てもその辺の影に身を潜めれてじっとすればそのまま過ぎて行くし……違いがあるとすれば……そうか知恵だ、他の奴らにはそれがないからこの体を使いこなせていない、だから下級モンスター扱いされるんだ。

 この目と耳は人間だった頃にほしかったな、そしたらあの落とし穴に落ちることはなかったろうに。

 はぁ……今それを悔やんでも仕方ないよな、とにかく先に進んで――。


『ん? 何だあの壁、人一人がが通れるくらいの穴が空いているぞ』


 ふむ、これは自然に出来たものじゃないな、破片がこっちの部屋に飛び散ってるし向こう側からハンマーか何かでぶち破ったような感じだ。

 よし、この穴の先に行ってみるか


『……よっと――えっここは!』


 俺が見つけた隠し通路の入り口の前じゃないか! なんで壁が出来ているんだ!?

 ――うーん……この入り口を塞いでる壁に擦ったような跡があるな……この跡を見る限り上から落ちてきた感じだ、位置的には俺が落ちてしまった穴の上だな。

 となるとこれは落とし穴に落ちたと同時にその上の天井も落ちてきて、この入り口と穴を塞ぐように作られたトラップだったのか……通りで下にいた時に上を見上げても穴がなかったはずだ、何せ塞がってたんだからな。

 で、この壁になった部分をギルドの連中か冒険者が穴をあけて奥に入って行ったというわけか。

 しかしこれはラッキーだな、ここからなら遺跡の入り口の場所もわかるし。




 ◇◆アース歴200年 6月11日・夕◇◆


 お、入り口発見。外は――赤い空だな、夕方か朝方か……別にどっちでもいいか。

 まずは外に出――。


『――あだっ!! な、なんだ? 何もないのに弾き飛ばされた……ぞ……ハッ!』


 ハッそうだった! 白の遺跡は中からモンスターが出られないように入り口には結界が張られてたんだった!

 この体じゃ出れるわけがないじゃないかああああああああああ!!

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