序章 二人の始り

第1話 ケビンの書~始まり~

 ◇◆アース歴180年 6月11日・朝◇◆


 ここは冒険者ギルド、冒険者の登録やギルドに出された依頼やその報告をして稼ぐ場所だ。

 そしてこの俺、ケビン・パーカーは酒を優雅に飲みつつ受付から名前を呼ばれるのを待っていた。


「お、ケビン。何だ、その青銅の鎧は? いつもの皮の鎧はどうしたんだよ」


 俺と同じ歳で意気投合した冒険者のグレイ・ガードナーが声をかけてきた。

 そりゃそうだ……何せ今日は特別な日だからな、この青銅の鎧も俺の金髪サラサラヘアに合う様にした特注品だからな。


「ふふん、どうだ? 似合うか? 今日は俺の誕生日だからなー、ちょっと奮発して買ったんだ」


 そう、今日は俺の誕生日、そして別の意味でも特別な日。


「はぁ……お前な……」


「何だよ、その顔は」


 せっかくの新品を買って喜んでいるのに可哀想な奴を見るような目をして。


「仮にもお前は今日から三つ星級冒険者なんだぞ!? 何で青銅の鎧なんだよ! しかも誕生日なんだろ、もっといい物を買えよ!」


 冒険者には階級がある。

 見習いは一つ星から始まり、ギルドの依頼や討伐、貢献等で星の階級が上がっていき最高クラスが五つ星だ。

 俺は15歳で冒険者となり、10年間コツコツと階級を上げ、先月この町【リリクス】の近くにある外見が白い塗装をされている事から【白の遺跡】と呼ばれる遺跡で偶ぜ……もとい、俺の直感により新たな隠し通路を発見、日ごろの成果とその発見の功績で三つ星級になったところだ。

 これで受けられる依頼が増えるし、よりギルドからの待遇も良くなる。


「いいじゃないか、俺はそんなの気にしないし。そもそも豪華な鎧だと狭い通路とか身動きとり辛いだけだろ」


 冒険者と言っても色々いる、モンスターを討伐する者、素材集めをする者、洞窟や遺跡といった探索をする者、俺の場合は探索メインだから重装備はかえって邪魔だ。


「あーそうだな……そもそもお前じゃ立派な鎧もブカブカで似合わんものな。いや、その前にそんな鎧を着たら身動きが取れない動けないか! アッハハハ!!」


「な!?」


 おいおい、俺の身長は160ちょいで痩せ型だがちゃんと筋肉は付いているんだぞ。

 ブカブカ……にはなるかもしれんがちゃんと動けるわ……たぶん。

 ここはきちんと言い返しておかなければ今後も馬鹿にされるのは目に見えているからしっかりと言わないとな。


「何を言う! 俺だってこう見えても――」


「ケビンさーん、ケビン・パーカーさーん。受付までお越し下さーい」


 このタイミングで受付嬢さんに呼ばれるとは。


「ほれ、呼んでるぞ」


 くそ、ニヤニヤしやがってこいつは。


「――っ! 覚えとけよ」


 まあいいこの受付嬢さんから取って置きの誕生日プレゼントを貰えるのだから……別にこの受付嬢さん個人の贈り物ではないのが悲しい所だが。


「あ、ケビンさん。――はい、これが三つ星のプレートになります。絶対無くさないでくださいよ」


 これこれ! 特殊加工された鋼の板に俺の名前と一緒に星が3つ掘られている。

 これで俺も三つ星級冒険者の仲間入りだ。


「あざーす! 絶対になくしませーん!」


これプレートは首にかけてっと。


「それと、これが新しい通路発見への臨時報酬になります。あと……ケビンさん、何回も言いますが報告書なんですけど……字が汚すぎて読みにくいのでもう少し丁寧に書いていただけると助かるんですが……」


「あざーす! 大切に使いまーす! 字も練習しまーす! それじゃ失礼しまーす!」


「……いつもそう言ってますよね……はぁ……行ってらっしゃいませ……」


 グフフ……よし、この調子で――。


「ん? おい、ケビンどこ行くんだ? その臨時報酬で飲まないのか?」


 グレイ、何で顔を出したのかと思えばこの金が目当てか?


「だからって奢ってやらねぇぞ。それに今から白の遺跡に行って来るんだ」


「チッ、そうかい。俺は今日は休みだから付いていかねぇ、気を付けてなー」


 グレイの奴やっぱり奢らせる気だったのか。


「おう、行ってくる。あんまり飲みすぎんなよ」



「さて、この白の遺跡で見つけた隠し通路の先を調査して一気に四つ星級冒険者になってやるぞ!」


 とは言っても、この白の遺跡に今いるのは俺一人だけだが……本来はギルドの連中が調査して冒険者に依頼として出すかどうかを検討する所なんだが、俺が先にマッピングしてそれをギルドに出せば更に評価され四つ星級に近づけるしまた臨時報酬も手に入る、はずだ。


「さぁ行くぞ! これこそが記念すべき第一……ぽっ!?」


 あれ? 記念すべき一歩目の床がなくなった?

 違うこれは床の石が抜けたんだ、そうこれはトラップの初歩も初歩のド定番の落とし穴。

 それに俺は見事にはまってしまった。


「うそだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?」


 俺が落ちた穴がどんどん小さくなっていく……そして俺は意識を失った。



『う、うーん……』


 ……あれ? 俺は生きてる?

 ……痛みもない……助かった、のか?

 ん? 何だこの白くて細い棒は……いやこれは……俺の手?


『え? ええ!? なんじゃこりゃ!?』


 俺の両手はほっそりして真っ白、両手どころか、足までもがほっそりして真っ白。

 どう見てもこれは俺の体が骨になってしまっている、なのに動いて、意識もある……って事は――。


『俺がスケルトンになってしまってるだとおおおおおおおおおおおおおおお!?』



 ◇◆アース歴200年 6月11日・朝◇◆

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る