ヒト

いつだって

僕を笑わないでくれるのは

飼っている茶色の子兎だけだった。


皆僕を笑った


頭がおかしいと

単純に生きろと

考え過ぎだと

変な趣味だと


皆僕を笑った


茶色の子兎だけが

僕の隣で静かに牧草を食っていた

笑わないで静かに眠った


皆僕を笑った


理屈っぽくてつまらないと

ヘラヘラ笑って胡散臭いと


あるとき

気ままに僕を笑っては

あるとき

気ままに僕を愛しんだ


まるで子兎と同じみたいに!

僕はちゃんと人間なのに!


僕は自分がヒトになった気がした


これから檻に入れられて

毎日決まった時間に餌を貰い

外から指を指されて

「ヒトだ!」と言われても

三日で慣れる気がした

外に出ようとしてデコピンされても

いきなり引っ張り出されて撫られても

器に入った餌の味が毎日毎日同じでも

僕はきっと三日で慣れる

笑われるのに慣れたみたいに





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る