第4話(4)
「職業って言っても、これでお金を貰ってるわけじゃないさ。君からも取ってないだろう?」
「それはまあ……そうですけど」
そもそも、夢の中でお金をとか言われても。出せるのかな? 夢の中ってある程度自分で操れたりするし。現実に持ち込めたりはしないけど。後日、請求書が来るのかな? 悪徳商法……いや睡眠商法かな。
「そうだな、ちょっとやってみるか。お金出してみてくれ」
「ええ、お金取らないはずじゃ」
これが大人か。ただより高い物はない、とかどっかで聞いた気がする。そうか、これか。お父さん、今僕は少し大人になりました。
「別に取らないけどさ。ヒーローの素質があるかみたいのさ。ほらほら、両手いっぱいのお金をイメージして」
ヒーローも金次第なのか。世知辛い。
それより、イメージ、イメージ。
「うん……」
まず、真っ先に浮かんだのは、アニメの海賊なんかが持ってる、カラフルなコインと、金の延べ棒だ。いやいや、これはいわゆる「お金」ではないだろ、と慌てて訂正する。お金お金。お金と言われてなんとなく、コインを想像したし、なんなら紙幣に余り触れたことが無いまであるが、お札でいいか。
これまた、アニメでしか見たことのない、帯の付いた札束を、一つ、二つ、いや、いっそのこと……。
「おおっ、これはこれは」
なにか芝居がかったようなシロの台詞を聞いて、いつのまにか閉じていた目を開けると、札束が足元に五十? 百? 分からないが、大量に転がっていた。これいくらぐらいあるんだろ。一億とか?
「うん、合格だね。ヒーローは想像力が豊かじゃないといけないんだ」
びしっと僕を指さすシロ。
なぜか腰をくねらせて。
「はあ。ありがとうございます」
いつの間にかシロのペースだが、手伝うとか言ったっけ?
いけない、ここで流されてはいけない。ビシッと言わねば。
「あの、」
言いかけたその瞬間、足元の札束が一つ残らず燃え始め、かと思ったら、灰も残さず消えてしまった。
「ん? 何か言ったか? いやーゴミは片付けないとね。物を出すイメージは意外と出来ても、消すのは難しいんだよ」
「は、はあ。そうなんだ」
もうなんかびっくりして、それどころじゃない。いきなり目の前が燃えたのもそうだし、それがお金だったのも初めてだ。なんてもったいない……いや、別にいいのか。夢だし。現実に持って行けるわけでもない。にしても、少しは堪能したかった。
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