用語

○時代

 西暦二〇三〇年、この小説が書かれた年から数えて、ちょうど百年後の未来の話である。


○フローチング合金

 浮力を発生させる流体が周囲に無しに、自らに内在する浮力により空間中に浮かぶ特殊合金。

 この合金の発明により、巨大空中浮遊都市の建設が可能になった。


○空中都市国家

 増え過ぎた人類は、ついに面積の限られた地上を捨て、高度一万数千メートルの空中に浮遊する巨大な人口の島への移住を決意した。

 空中浮遊人工島は、全世界の空に無数に浮かんでいる。

 基本的には個々の人工島それぞれが独立した都市国家である。都市国家どうしが同盟を結び、連合を形成している場合もある。


○空中都市国家の都市部と農村部

 空に浮かぶ巨大な人工の島である空中都市国家は、いずれも島単独での自給自足を基本としている。そのため、都市国家と言いながら、島の上面面積全体に対する人口密集地域(いわゆる都市部)の割合は案外小さい。

 人工が密集する都市中枢部へ食料その他の農作物を供給する必要から、上部面積の大部分は水田、畑、牧草地、農村部、そして森である。


○空中都市国家ハチドリ市

 世界中に無数にある空中都市国家の一つである。


○空中都市国家ハチドリ市の気候

 冬には年に何日か雪が降る。しかし降っても数日で溶ける場合がほとんどで、道路を除雪しなければ通行できなくなるほど積もることは滅多にない。(滅多にないが、ゼロでは無い。その年の気候によっては有りうる)


○放電コイン

 少年探偵コインの装備である。

 手首の内側に装着された発射装置より発射される金色のコイン。表面に金メッキが施されているだけで、中身は特殊合金である。発射して敵に当たるまで空中を飛行する間に空気摩擦により発生する摩擦電気を吸収し、敵に当たると同時にそれを放電させ、気絶させる。 


○スーパー衝撃吸収ブーツ

 少年探偵コインの装備である。

 足の裏に小型ローラーを、ふくらはぎ部分に小型ジェット・モーターを装備していて、最高時速百二十キロで地上を走行できる。

 ふくらはぎの小型ジェット・モーターは、小型バルーンで空中飛行するときの推力にも使う。

 小型ローラーの懸架装置サスペンションに内蔵された超小型バネは、高さ三十メートルから飛び降りた衝撃も吸収してしまい、その力を応用する事で、十メートルの高さまで跳び上がることも出来る。


○超弾力バルーン

 少年探偵コインの装備である。

 弾性力に富み、銃弾さえその衝撃を吸収して柔らかくはじき返してしまう。

 特殊ガスを充填することで、人間を数人ぶら下げて浮遊できるほどの浮力を発生させる。

 膨らませると直径二メートル、折りたたむとベルトのポーチに入るほど小さくなる。


○特殊防弾ジャケット

 少年探偵コインの装備である。

 表裏両面を使えるジャケットである。

 表面は普通のジャケット。

 裏面は、メタリック・ブルーの生地で、銃弾を弾き返す。断熱性にも優れ、夏涼しく、冬は暖かい。


○その他の装備

 少年探偵コインは、丈夫な紐や折りたたみナイフを持ち歩いている。


鬼闇衆きあんしゅう

 空中都市国家ハチドリ市に暗躍する盗賊団である。

 美術品のみを標的にし、現金などには興味を示さない。

 伸縮性で体にピッタリ貼り付く青色の盗賊服を着て、同じ布地の目だけ開いた覆面で頭部をすっぽりおおっている。

 首領の鬼闇おにやみ煌輝郎こうきろうは、全身筋肉の塊のような怪力男である。

 不思議なことに、首領以外の団員を捕らえて覆面を脱がすと、全員同じ顔をしている。

 団員は、捕らえられると奥歯に仕込んだ毒カプセルを噛んで自害する。


笹馬ささうま自動車工業株式会社

 空中都市国家ハチドリ市最大の自動車製造会社である。


○空中浮遊都市国家ハチドリ市警視庁

 警官の標準装備拳銃はミリタリー&ポリス(38SP/6発)リボルバーである。


○ハチドリ市の道路

 自動車は左側通行である。

 従って、ほとんどの自動車は右ハンドルである。


○貨幣価値

 貨幣価値は、読者の皆さんが住んでいる「もう一つの西暦二〇二〇年前後の日本」に比して、およそ千倍である。

 つまり、この物語世界における一銭=読者の皆さんの世界における十円である。

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