豚野郎は二度目の人生だけど、真面目に生きる事に決意する。

出無川 でむこ

プロローグ


俺は富田 和秀(とみた かずひで)


現在25歳の無職で引きこもりだ。

運動をしてない俺はブクブク太っていた。


「クソッ!またか負けたか!」


俺は大人気のオンラインゲームのファンタズム☆オンラインをやっていた。

現在のゲーム人口は約1億人を突破するほどで、知らない人は殆どいなかった。

最近はPVPが実装されて、好戦的な人達が飽き足らずに朝から晩まで戦いに明け暮れてた。

俺は毎日、家には引きこもってはゲームを飽きずにやっていた。



そう、誰とも関わらずにだ。


親は既に将来性のない人間として扱われ、無関心だった。

それで良い、俺にはその方がお似合いなんだからな。


すると、ノックの音が聞こえた。

だが、俺は無視をした。


「兄さん・・・、食事置いとくね」


あぁ、弟だったか。

毎日、飽きずに良くやってくれるもんだ、どうせ親に頼まれて持ってきたんだろう。

俺はドア越しの置いてある、食事を取りに行く。


今日は珍しくカレーだった。

何時もなら、カップ麺ぐらいなのにどういう吹き回しだ?

まぁ、貰えるもんは貰っておこう。


俺は久しぶりに食べる"手作り"の料理を食べた。

そのカレーを口に運ぶと視界が揺らいで行く。


俺はポツリと呟いた。


「何で俺はこんなに惨めなんだろうな・・・」


周りの皆は就職していき、早い人は既に家庭を持って幸せな家族を築いている。

それに比べて、俺は周りの人より少し劣っているだけで馬鹿にされ、それだけでいじめられた。

ふざけんな、なーにが人は皆平等と言ったやつ、平等ならもっとまともな世界にしてくれっつの。



気づけば、俺はカレーを食べ終わっていた。

だけど、皿を見ればいつの間にか水が溜まっていた。

通りでこのカレーはしょっぱいわけだ。


俺はゲームを再開させた。

気づけば朝になっていた、俺はふとカーテンを開けた。

日が眩しい・・・、憎いぐらいに眩しかった。

俺は久しぶりに外の景色を眺めると、弟が友達と一緒に学校へ登校していた。

友達か・・・、俺にはそんなの無縁だった・・・。



ブブッー!!!


すると、クラクションを音が聞こえた。

トラックが一直線で向かって走って行く、その先には・・・


弟達がいた。


弟はイヤホンをしていて、クラクションに気づいていない。

此処じゃ、声は届かない!

このままだとぶつかってしまう、そう考えている前に既に俺の身体は"2階"から飛び降りた。


グシャァ


何か鈍い音が聞こえた気がする、でも俺はそんなの気にしなかった。

痛みが全身に響き渡る前に走り出す。



トラックに激突まであともう少し



頼む…!届いてくれ!!!



ブブッー!


届いてくれぇ!!!



俺の手が弟の背中に触れて、突き飛ばした。

突き飛ばしたと同時に俺は物凄い衝撃と同時に吹き飛ばされた。


宙に浮き


視界がぐるり回り


そのまま地面に転がった


感覚的に5m程飛ばされただろうな。


いてぇ…、体が動かねぇな・・・、アレ?弟じゃねぇか?

あぁ、間に合ったんだ、救えたんだ、やっと"兄"らしい所を見せる事ができたんだな。

なんだ?お前泣いてんのか?

男なら泣くんじゃねぇよ




お前はもっと良い未来が待ってるんだからさ。



俺は手で弟の涙を拭こうとしたが、ここで意識がなくなる。





―――――――――




マジかぁ・・・、思い出しちゃったよ。


そんな、5歳のある日の事だった。

目が覚めると、自分の部屋じゃなかった、同時にここは"自分"の部屋だと思い出す。


俺の名前はヴェイン=ユージ


前世は豚野郎の"富田 和秀"だ。


そして、今も豚野郎だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る