24:00じゃ帰らない
サイトウレンカ
プロローグ
はぁはぁはぁ……
ボクは走っていた。めちゃくちゃ嬉しかったからだ。正直、こんな嬉しいものだと思わなかった。
超難関と言われ、その上塾やピアノ、サッカー部のマネージャー。あと、ギターもやって、その中10時間勉強をしていたから、受からなかったら神様をよっぽど不公平だと思っていただろう。
213番。何度掲示板を確認しただろう。後ろの数字が218番だから若干乱視の強いボクは受験票と文Ⅰの合格者が張られたボードを何度も見比べた。
「よかった。センター、ギリだったから泣きを見ると思ったんだよね」
周りは親や同級生がいる。ボクも母が来る予定だったが、母は
「あんただったら大丈夫だと思うから」
そう言って本郷三丁目駅に近い喫茶店でコーヒーを飲んでいると思う。
「以前から行きたかったんだよね」
母は、そっちのほうを楽しみにしていたし、変にボクのことを期待していない。
「受かったよ!」
もう店を出てきっとボクが来る頃だろうと思ったのか店を出ていたので、人目もはばからず叫んだ。
「あらまぁ」
何処のマダムかと思うくらい急に上品な口調になったのは人前だからだろう。
来年からの東京大学文系Ⅰ類に受かったボク、影山日向。17歳女子。
新しい人生がそこから始まった。
24:00じゃ帰らない サイトウレンカ @nogi-nogi
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