空を飛びたい話。

琉華

空を飛びたい話。

 空を飛ぶ夢を見た。雲をすり抜け、風に乗り、鳥とともに遊んだ。僕は自由だった。___ずっとそれが続いてほしかった。


 目を覚ましたのはアラームの音。つまらない日常がまた始まる。また学校へ行き、無意味な時間を過ごさなければならない。学ぶことがどうして必要なのかわからないのに受ける授業は時間の無駄でしかない。そういった先生は日常のどこでフレミングの左手の法則を使うのか教えてはくれなかった。それならば授業などいらない、そういった僕は、理由もわからず叱られた。


 ドーナツを片手に家を出る。きれいな青色の空と、街を歩く人々の曇った顔が目に入る。僕は晴れのほうが好きだから、空を見上げて歩き出した。雲を数えながら角を曲がると、肩に衝撃が走った。ちっ、前見て歩けよ、そうつぶやく声。40代くらいのサラリーマンが、スマートフォン片手に僕をにらみつけて足早にすれ違っていった。どうして僕はすぐに現実に引き戻されてしまうんだろう。人とかかわると僕は気分が悪くなる。僕も人間のはずだけど。地面に落ちたドーナツ。今日は運が悪い。


 学校についたのは2限目の途中。空を見てすごしていると、時間はあっという間に過ぎていく。雲はとてもゆっくり流れているようなのに、不思議なものだ。教室に行くのも面倒で、僕はこっそりと屋上へのぼった。


また空を見上げると、鳥の群れが舞っている。羨ましい。今日の夢を思い出してしまった。あの時の僕は自由だった。人間は、その身一つで空を飛ぶことはできない。飛ぶことに対する代償は、自分の体だから。翼か、自分の人生か。そう考えていたとき時、ふと僕の心の天秤が気まぐれを起こした。命より自由が欲しい。その気持ちのまま、僕はまっすぐフェンスにむかって歩いて行った。



 僕は空を飛んだ。雲には届かず、風は冷たく、鳥たちは見向きもしない。それでも僕は自由だ、これからは永遠に。

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空を飛びたい話。 琉華 @Ruka_0619

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