第13話 高級宿と黒髪スレンダー美女

 城内に踏み入れると今まで見たこともないような大きな噴水が水を空高く吹き出しており、その周りにはゲームやアニメでしか見たことがないようなヨーロッパ風の鮮やかなレンガの建物が見渡す限り立ち並んでいた。




 「これが東帝国!! すごいですねアヤト!! あれ、どうして泣いているのですか?」




 「え......。 いや、なんでもない。」




 城内に足を踏み入れた瞬間、俺の目からは自然と涙がこぼれ落ちていた。 


 前の世界では、有名な大人気テーマパークに行っても何にも感じなかったそんな俺でも、驚きの声が出せないほどその光景に魅了され、感動し、自然と涙を流してしまうほどだった。




 「それじゃあここで解散だね。 また機会があれば護衛を頼むよ。」




 「ああ。 ありがとうございました。」




 そうして俺たちは商人と解散した。




 「さて、とりあえず宿を探そう。」




 「ですね!」




 「良い宿を知っているから案内しよう。」




 「あれ、ナールは来たことがあるのか?」




 「ああ。 昔な......。」




 「昔って、そういえばナールって今何歳なんだ?」




 「50だ。」




 「50!?」




 どこからどう見ても50には見えない。 


 てっきり俺は20代後半だと勝手に思い込んでいた。




 「まあ、ネコ耳族だからな。」




 「?」




 ナール曰く、ネコ耳族は老化し始める年が人間より遅いらしく、50歳前後までは20代の若さを保てるらしい。


 それと驚いたことに、平均寿命は70歳らしい。 


 ネコというのは人間より寿命が短いイメージだがそうでもないのか。




 「なるほど...。」




 ということは、ニャターシャも少なくともあと30年は今の美少女のままということか。


 ネコ耳族というのはやはり最高だ。




 と宿に向かって歩いていて思ったが、ここには人間だけではなく、背の低いヒゲの生えた種族であるドワーフも生活しているようだ。


 それにしてもさっきからすれ違う人たち、特に女になぜか見られている気がする。 気のせいだろうか。




 しばらく歩いているうちに宿の前に着いた。


 が......、随分と大きく立派な宿だった。




 「おいおい、こんな立派な宿に泊まれんのか? 俺銀貨3枚しか持ってないぞ?」




 「まあ、着いてこい。」




 不安になりながらも俺たちはナールの後をついて行った。


 やはり中も立派だった。 


 ついヒソヒソ声で話してしまいそうになるような静かで上品な雰囲気のロビー。


 1食3万円の高級フレンチレストランのような感じだ。 と言っても行ったことはないが。




 「いらっしゃいませ。 ご宿泊でしょうか?」




 フロントの女性は背が高く黒髪ロングで、かと言ってきつい印象はなくすごく綺麗な人だった。 


 この世界に来て初めてのスレンダー美女タイプだ。 


 ニャターシャみたいな可愛い美少女タイプも好きだがこっちのタイプも捨てがたい。




 「ああ、そうだが、オーナーを呼んでもらえないか?」




 「オーナーですか? 分かりました。 少々お待ちください。」




 そう言ってフロントの女性は奥の部屋へ行った。




 「オーナーとコネでもあるのか?」




 「まあ、一応な。」




 「一応って......。」




 まあこんな立派な宿を案内された時点でコネか何かがあるんだろうはと思っていた。


 それにしてもさっき、フロントの女性がやたらと俺の方をチラチラ見ていた。


 なぜだ......。 あ、これか。  


 思えば俺はとてつもなくこの場に相応しくないボロボロで清潔感0な格好をしていた。 


 さっき外を歩いていた時にすれ違う人たちにやたらと見られていたのもこれのせいか。


 特に女性はそういうのに敏感だからなあ。


 そんなことをしばらく一人で考えていると、




 「うそだろ!? ナールではないか!」


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