第4話 溢れる正義感

 俺はニャターシャに家まで案内されながら村の様子を観察していた。


 ニャザール村の敷地はわりと広く、低い木造の家?というより小屋が沢山あった。


 そんな中、村の中心部には一際目立つ3階建てほどの大きな木造の建物があった。




 「あの建物はなんだ?」




 「あ、あれはギルドです。クエストの受注・発注から素材・武器の売買、食事など、大体のことはあそこで出来ますよ!」




 「なるほどな。」




 前の世界でいうショッピングモール的なやつか。




 「それにしても本当に村人みんなネコ耳族なんだなあ。」




 村人がみんなネコ耳で可愛い子ばっかりで正直かなりテンションが上がっている。


 男もネコ耳なのか。女と比べてやや短めのネコ耳のようだがなんか可愛い。


 もちろんそういう趣味はないが......。


 それにしても村人がすごいこっちを見てくる。そんなに人がくるのが珍しいのだろうか。


 てなことを考えていると目的のナターシャの家にたどり着いた。




 「着きました! 狭いですがどうぞ上がってください!」




 なんか想像していたのと違う。


 家に誘われた時はいろんな期待が膨らんで舞い上がっていたが、その気持ちは家を見た瞬間に消え去った。


 なぜなら彼女の家は前の世界でいう学校の体育倉庫の半分くらいの大きさしかなく、しかもかなりボロかったからだ。


 中に入るとベッドはなく藁が積んであり、木の机と椅子があった。


 一人暮らしで相当貧乏なんだろうか?


 気になるので聞いてみた。




 「ニャターシャは一人暮らしなのか?」




 「はい……。」




 彼女は暗い表情で答え、それから両親について話しはじめた。




 「私の母は盗賊に誘拐されました。父はその盗賊から母を守るために抵抗しましたが殺されてしまいました......。」




 「.....。」




 「この村は四方を森に囲まれていて、森には強い魔物がたくさんいますし、貧乏な村なので金目のものは特になく普段は誰も近寄ろうとしないのですが、半年前、突如盗賊の集団が村に襲撃してきて、沢山の村の女性たちを誘拐し、それに抵抗した男の人たちはみんな殺されてしまいました。」 




 彼女は今にも泣き出しそうな表情で話をしていた。




 「それはひどいな。一体なんのために......。」




 「おそらく帝国で奴隷として売るためでしょう。ネコ耳族は高く売れると聞いたことがあります。」




 「なるほど......。」




 この世界には奴隷制があるのか。まあ異世界だし特に驚くことでもないか。




 それにしても俺は今もの凄く腹が立っている。それはもちろん盗賊に対してだ。


 以前の俺なら絶対にこんな気持ちになることはなかった。


 むしろ弱いものは理不尽な扱いを受けても当然で、弱いことそれ自体が悪いことなのだと思っていた。


 でもその考え方は間違っていたようだ。力のある者は弱い者をまもってやらねばならない。


 圧倒的な力を手に入れた今、俺の心は正義感に満ち溢れている。


 そして俺はニャターシャに向かって力強く宣言した。




 「俺がそいつら全員ぶっ殺してお前の母親を連れ戻してやる!」

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