第22話 王国事情 その1
ガタンゴトン⋯ガタンゴトン。
その音がなる度に身体が心地良い振動に揺れる。
トゥトゥトゥ〜ン『世界の竜窓から』トゥトゥトゥ〜〜〜。
(世界の車窓からが始まったって事は⋯うたた寝でもしていたのか⋯)
心地良い揺れは眼を開ける事を許してはくれない。
(変わった夢をみていたな。なんか学校が転移して異世界に行くとか⋯⋯ラノベじゃあるまいし)
「今日は『新都市クロノスノア』を出発して『速の国』へ向かっています。出発して、すぐに目の前に広がるのはモラヴィアの大草原に似ている景色であり、とても心が癒されていくようだ」
(ん? 夢と同じ都市ができてたのか⋯それは勘違いするはず⋯⋯けど⋯あれ? 車窓の声って男性じゃなかったっけ?)
「今のところはモンスターのようなものはいないので安心してほしい」
その言葉に面倒くさいが重たい瞼をゆっくりと開いていく。
「⋯⋯⋯なにしてるんですか?」
揺れていた原因は馬車であり、ナレーションをしているのは花蓮先輩であった。
「すまない。起こしてしまったか? 何って、皆の為にビデオレターみたいなものだよ」
「あまりにも世界の車窓っぽいのが上手すぎて⋯まじで一瞬⋯⋯日本でうたた寝してると勘違いしてしまいましたよ」
「ふふ、ならばついでだ。この景色を一緒に見ないか? とても綺麗な大草原が広がっているぞ?」
王との決闘から数週間後、俺たちは新生王国クロノスノアを離れて各国の挨拶周りへと動いていたのである。
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時は、あの日の夜まで遡る。
王との決闘後、各国に冗談では済まされない状態を改めて聞いていた。
「問題ないと思うぞ?」
起きたのは夜だが、情報の共有だけはしておきたいと先輩に言われ話していたのだが、婚約に関しては意外にもすんなりと承諾していた。
「婚約ですよ? 結婚ですよ? こんな政略結婚みたいなことを」
「確かにあまり喜ぶことではないが、ここは異世界だ。そして、現状において、この無防備な国としてはメリットの方が多い。それに伝説級素材や剣王の武防具も国を襲われないように考えていたのだろう?」
「そうですが⋯。そうは言っても⋯」
「ふむ。ならば、ノア君。ここで私か、エルフのサラとティヤか、イオさんの誰か1人を伴侶として選んで見てくれないか?」
「え?」
「無論、いまのノア君に恋愛感情はないかもしれない。このまま過ごしていけば別の誰かを好きになるのかもしれない。⋯が、だからこそ、ここでだれか1人を選ぶという決心をしてみてくれ」
「そ⋯それは⋯」
「選ばれなかった者は、潔く君の元から離れるとしよう。自暴自棄になるかもしれないし、もしかしたらノア君を忘れて他の男性とくっつくかもしれないが、君にはもう関係ない事だから気にしないでよいだろう。全員を選ばないという手もいいかもしれないな。そうすると、本当にノア君は1人で活動できるようになるな」
「⋯⋯⋯」
「⋯⋯すまない。少し⋯いやらしい質問をしてしまったな。ただ、形はどうであれイオさんも一応この国を保護する為に⋯⋯いや、まぁ、それだけとは限らないだろうが⋯⋯考えている事だけは知ってほしい」
「えぇ⋯」
「説教っぽくなるかもしれないが、形はどうであれ、既に国の代表となった君には責任が重くのしかかっているんだ。街の皆を守る、導くなどな。自分の安泰した生活の為に、国民を減らしていくのを優先にするのではなく、いつでも帰ってこれる場所に仕上げながら、皆を外の世界に向けていかせるべきではなかろうか。自分ではそう思ってはいないだろうけど、君のやり方は自分の為に我儘を通す暴君になる為の一歩に見える」
確かに⋯⋯適度がいいと言いつつ⋯⋯強制とはいえ⋯国が手に入ると否や、俺とその周りだけいれば後は入らないと安易に考えていたのかもしれない。
「そうですね⋯すみませんでした。確かにこれは安易に考えた俺のエゴでした⋯⋯」
「気にするな。君がもし間違った道を進んでも私が修正をするし、寧ろさしてほしい」
「有難うございます。でも、政略結婚みたいなことして先輩はぜんぜん気にならないのですか?」
「う〜ん。その件に関しては、そこまで深く考えてはいないな。日本でなら名字が変わるし、周りからの目線も『貴方の妻になりました』と認識されるが異世界ではそうでもないらしいからな」
「どういう事ですか?」
「この世界の王と言うのは、民から慕われて初めて王と呼ばれるのだ。私達の世界にあるゲームのような最初から王様とかではなく、民が率先して王と呼ばれてできるリーダーが王である。まぁ、イオさんは王の中でも自由奔放過ぎているが、逆にそれが魅力らしい⋯」
確かに、自由奔放だよな⋯。最後に速の王と聞くまで想像すらつかなかったし。
「じゃあ、国というのは?」
「国はその王を認めた民が自ら作り上げていく街の事だ。簡単にいえば、集落→村→街→国と民が増えて自分たちで巣を大きくしていく訳だ」
「ふむ⋯なんだが、増えていく信者みたいな感じですね」
「あながち間違ってはいないだろう。例えばイオさんで言えば、『速の王』だが、自国を離れると冒険者達からなどは『無音の聖女』と呼ばれている」
「それ、あの王様も言ってました」
「『無音の聖女』いわゆる、暗殺者の職業を極め英雄もしくは勇者クラスまで昇りつめた彼女の称号だそうだ」
「それだと別の『無音の聖女』もいるってことですか?」
「いや、英雄クラスにあの美貌、男が放っておくわけないだろう? で、その名の由来はある酒場で有名な男に絡まれた時に、音もなく誰にも気づかれる事もなく、そして相手にも気づかせず、皆の前で首を刈ったんだ。彼女に喋りかけたその男は、彼女が去った後も動かないから誰かが呼ぼうと触った瞬間、首が落ちたという訳だ。それが最初で、それからもいくつか事例があり、いつのまにか苦痛もなく自分が死んだ事にも気づかない事を慈悲と呼び、その名称になったらしい」
「なるほど⋯⋯」
そういえば、確かに触れたら死ぬとも言っていたな⋯。
「まぁ、その結果、彼女には女性の信者がついていき国にまで発展したらしい」
「そのイオさんはどこにいったんですか?」
「もう帰られたよ。ひとまず、ここの支援要請を最優先にする為、武防具や素材を早急に分けると言ってにうごいてくれた。一応、君が倒れていた時に謝罪していたよ。無理やり負担を与えすぎたかもしれないと」
「そうですか。悪いのは俺の方なのに、次に会ったら謝っておきます」
「うむ、それでいいとおもうぞ。大体こんなものか⋯⋯今日はところはもう休もう。そして、また明日にでも話そうか」
「分かりました。後、蒸し返す訳じゃないんですが、もし俺がイオさんに惚れていて、結婚を快く承諾していたら先輩はどうしていたんですか?」
「うん? 決まっているだろう。君を捕まえて目前で自分の首を斬って血を飲ます。そうすれば心では繋がれるだろう?」
はははっと言っているが、目がガチすぎて悪寒が走る。
「⋯⋯ふふ、冗談だよ。冗談。それに、私達は君から離れはしないさ。既に⋯⋯と、これは言うべきではないな」
「⋯⋯⋯ははは」
既にの後がものすごい気になるが、聞く勇気はない。
そのまま、キングサイズのベットに横になろうとすると、花蓮先輩もその場で脱いで着替える。
「⋯⋯⋯」
綺麗だよ? 女性が着替えるシーンって、人が見てるからかもしれないけどかなり綺麗に見えるよ。
「なんで、ここで着替えてるんですか?」
「それは、このままでは寝れないからさ」
「寝るってどこで寝るんです?」
「ふむ?? そのベット以外に?」
さも当たり前のように首を傾げないでほしい。
「あの、男女で寝るのは流石にまずいのでは」
「まずくはないだろう。私も双子もイオさんも既に君の物なのだから」
「⋯⋯⋯ん? 待ってください。その話は初めて聞いたんですが」
「ふむ。先ほどの質問、君は答えられなかったな?」
「えぇ⋯⋯」
「誰か1人なんて選べなかったろう?」
「それは⋯⋯そうですね」
その後の去るなどの言葉を聞くと⋯⋯答えれないの普通だと思う。
「なら、君が背負うしかないのだ。ちなみに私達は承諾済みだから安心していいぞ」
ピンク色のかなり色っぽいネグリジェに着替えるとベットにスルリと入ってくる。
恥じらいながら、こちらを見ている先輩に耐えきれそうになかった俺はベットから出ようとする。
「すみません⋯俺、やっぱり床で寝ます」
ガシッと腕を掴まれる。
「まぁ待て! 女の子がここまでしているのに⋯恥をかかせないでくれ⋯⋯」
頬が紅潮する先輩を初めて見る。
「でも、おれは⋯」
「すまない⋯嘘だ。ああは言ってみたが⋯⋯一緒に寝るだけでも私は嬉しい⋯。それでも駄目か⋯?」
「い⋯いえ、分かりました⋯⋯」
流石に承諾するしかなかった。
ベットに入り、少し経つと先輩は静かに寝息をたてて寝ている。
(なんだかんだ言っても、やっぱり疲れが出てたんだろうな)
先輩の谷間とか柔らかそうな唇に興奮して、俺は寝れないと思っていたが、それから暫く経つと嘘のように意識は深く沈み熟睡したのである。
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次の日は、ものすごく気持ちよく朝を迎えれた。
先輩は先に起きており、丁度お風呂に入った後らしく顔がほんのり紅潮していた。
(あれ? 何かがおかしい)
朝、男が反応する場所がしていないのである。昨日だって⋯⋯必死に堪えていたのに⋯⋯なぜか、今日⋯は賢者タイムに入っているような⋯。
「おはよう、ノア君。よく眠れたか?」
なぜかツヤツヤしているようにも見える⋯⋯。
「はい。なにか⋯ものすごく気持ちよく寝れました」
「そ⋯そうか」
何かがおかしい。
「先輩⋯⋯」
「な⋯なんだ?」
「失礼な事を聞き⋯⋯いえ、やっぱりなんでもありません」
処女ですか? なんてことが聞けるわけがないのである。
「ハァ⋯」
あれ? いま小さく溜息をつかれた?
「そういえば、昨日言うの忘れていたけど⋯⋯」
「はい?」
「私達全員、まだ男を知らないから、もしその時がきたら優しくするのだぞ。ただ、サラとティヤはまだ早いが私とイオさんは興味津々だから覚悟しておいたほうがいい」
いざという時は女性の方が強いとよく聞くが、まさにその事を実感させられるように⋯⋯それはもう、満面の笑みで言われたのである。
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