クロノスノア 最弱ステータスで転移されたけど、最強カウンタースキルで異世界ライフ
古狐さん
第1話 異界の地
いつもの日常を過ごしていたオレ達は⋯⋯今現在、異世界に来ていた。
神の気まぐれなのか誰かが召喚したのかは分からないが学校ごと異世界に来ていた。
学校の屋上から見える景色には近くに大きな城と城下町があった為、誰かが『異世界だ!』と興奮していたので皆もそう信じる。
そして先生が外に出ると、モンスターに襲われて死んだと共に絶叫と混乱に陥ったところで騎士団に保護された。
言葉は通じないまま、王城の中庭で生き残った全校生徒を集められると、ローブを羽織った数名が呪文を唱えると言語が通じるようになったまではいいが⋯⋯最初の一言で全員が終わったと感じたのである。
その一言とは⋯⋯。
「皆の者!! 今回の収穫も大量だ!! 仕分けの用意をせい!」
漁猟と同じような口調であった。
まずは器量分け。いわゆる容姿、清潔感にあたる。A〜Fに分けられ、俺はCに分けられた。
次は技量分け。これは鑑定書に手を当てるとステータスが表示されそのままカードになり、身分証にもなる。
そして、そしてそこから再びA〜Fに分けられる。
兵士がなにやら慌ただしく王の元に駆ける。
その視線が注がれているのは、生徒会長である河合花蓮(かわいかれん)先輩だった。
男子生徒は皆、彼女に憧れているんではないだろうか? 家も名のある名家のお嬢様であり、文武両道、名前の通り可憐で美しい。
「例外だが、彼女はSとする」
「いや、私は⋯⋯」
何かを言おうとしたが、王の命令は絶対であり拒否権はなかった。
「おい、次はお前だ」
「あ、はい」
そういって、手をかざすとこれまた兵士が王の元に駆ける。
「ううむ。これも例外だが⋯⋯Gとする」
その一言に兵士も学校の生徒も爆笑した。
ただ、一人⋯⋯花蓮先輩だけを除いて⋯。
仕分けという名のクラス分けが終わる。
無論、俺のまわりには誰もいない。
「さて、諸君らの仕分けだが、Bまでは国民として迎え入れよう。Cは平民かこの後に待っている貴族達に買われるかを選ぶがよい」
生徒同士でざわつく。
「平民になっても、さほどお主達の元いた生活とは変わらないと約束しよう。運がよければ出世をして貴族階級にもなれるが選ぶのはそなた達だ」
「静かにせよ!!」
側近が威圧的に叫ぶと静まりかえる。
「D〜Fに関しては奴隷になるか、1週間城外で生きその価値を示すか選べ。奴隷はそなた達の想像通りだと思え。平民になることすらほとんどできず、動物以下の扱いと知れ。城外に行くなら多少の食料と装備を用意しよう」
(Gとかどうなるんだ? 虫以下じゃねぇのか? いやゴキか)
だれかがボソリと呟くと再び静かに笑いはじめる。
「⋯⋯例外であるGに関しては、このまま死か転生の洞窟に行くか決めよ。転生の洞窟は主人に認めれば転生ができる可能性があるが⋯⋯その可能性は極めて低い」
兵士に合図すると一本のカービングナイフを用意させる。
「待ってください!!」
花蓮先輩が前に出る。
「ただでさえ人間扱いしない上に、可能性が低い洞窟に小さなナイフ一本しか渡さないのは死ねと言っているようなものではありませんか! それならば、私も彼と一緒に行かしてください!」
なにを言ってるんだ⋯この人は⋯。
「ならん! そなたはSランクだ。王宮にてその才能を勉強して頂く。その伸び代により今後の職が決めるのだ」
(生徒会長って、まさかGが好きだったのか? まじウケるし)
(そういや何度かGと二人きりで整頓したり仕事をやってたの見かけたことある)
(俺も見た。なんかいい雰囲気で割り込む余地なかったし)
(まじか⋯⋯)
生徒会長の評価が見る見る下がって行く。
俺はそのまま近づいていくと、生徒会長に突っかかる。
「安心しろよ⋯花蓮先輩。もうここは現実の世界じゃないんだ『あの脅し』は無効だから気にする必要はねぇよ」
無論、ハッタリである。正直に言って、道連れほど嫌なものはないし、この場合⋯即座に俺が殺されてもおかしくはない。
「君は⋯⋯なにを言っている⋯⋯のだ?」
(脅してたのかよ⋯鬼畜すぎる)
(先輩があそこまで純情にするまで調教したとか、逆にすげぇ)
「アンタはもう俺が死地にいくのを嘲笑って送り出せばいいんだ。それにココの王様も慈悲を与えてくれているんだ」
そういって王と目を合わせる。
「Gクラスではそのナイフ程度しか持てないだろうからな。装備のレパートリーが異常に少なく扱えない」
「⋯⋯ふむ。いい見解だ」
「えぇ、D〜F奴らが見せてくれましたからね。武器をたくさん持てば動きが極度に落ちた人物がいましたし、それに個別で装備できる許容量も違っていた」
「人が生まれた瞬間に持つと言われている天紋。これは人生の価値が決まるものといっても過言ではない。どんなに素晴らしい才能があっても⋯⋯天紋が低ければ扱う事ができない。このまま生きていても辛い人生が待っておる。それに⋯⋯転生の洞窟は敵は一体しかいない。主人は他の生物を極度に嫌っておるからな。そこで説得もしくは、このナイフを当てれば倒せる可能性があるやもしれん。このナイフはこう見えても神器級武器でな。魔法を斬れる唯一にして絶対の武器なのだ」
「そんなのは嘘だ! 辛い人生が待ってる? そんなのは分からないじゃない! それに宝をおいそれと会って間もない人間に渡す訳がない!」
花蓮先輩がやはり喰いかかった。
「嘘ではない。ならば確認するが良かろう」
そういうと兵士が鑑定書をナイフに当て読み込ませる。
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【マジックブレイカー】神器級
攻撃力もなく殺傷能力もない小刀だが、魔法に対して絶対的殺傷能力を持っており【魔術喰らい】【魔式破壊】【魔術無効化】など呼ばれている代物。
契約は術者の命を持って使用可能となり、契約した場合、全ての武防具が装備できない呪いにかかる。
それ以上の能力があるのかは現段階では不明であり、前持主は呪いの解除を試みて身体を魔術暴発にて内側から爆散して消滅した。
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「こんなの⋯⋯例え生き残っても、何もできないじゃない⋯」
「もし、生き残れば、その時はこの城での安泰を約束しよう」
「ご厚意ありがとうございます。あと⋯契約はどうやればいいのでしょうか?」
「⋯⋯心の臓に突き立て命を捧げよ」
一息たてる。この話が本当という確証はない。
辻褄を合わしていっただけの会話であり、全部が真実とは信じれない為、持つ手が震えている。
「大丈夫だ⋯⋯私がどうにかして助けにいくから外で待っていて⋯⋯」
本当にこの人はどこまで俺が好きなんだ? よく一緒に行動をして日頃の愚痴などを聞いてただけなのに。まぁいい、もしこれで死んだ場合、心残りは確実に捨てておきたい。
「花蓮先輩⋯」
そう言って、近づくと強めのディープキスを強引にして左手で胸を強く揉む。
「いやっ!!」
反射神経でパンッと音が響きわたる。
(うわ、全員の前でそれするか?)
(しかも叩かれるとか)
(まじさいて〜)
「ち⋯ちがっ!! 今のは⋯!」
周りに弁解をしようとする。口を拭わなかった事なんて誰も気にも止めていない。
「そう。それでいいんっすよ。先輩」
左の頬が痛みで熱くなり、震える手が一瞬収まった為、心おきなく俺はナイフを心臓に突き刺した。
心臓を起点に身体中に赤いラインが迸り、地面に侵食するかのように魔法陣が描かれると心臓に向かいすぐに収束していった。
特に何かが変わった感じはしない。
右手に持っていたナイフはいつのまにか消えていたが、意識をするだけで再び右手に出現する。
「契約も無事完了したな。出発はどうする? 特別に明日でもよいぞ」
「いえ、今すぐにでも行こうと思います」
さすがに周りの生徒が不信感しか持っていないし、先輩は同級生の友達に保護されている感じだ。
「そうか。武運を祈る」
こうして振り返る事もせず、俺は必要な物資だけを受け取り王城を後にした。
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