第18話 プリンセスのいる店

翌日のお昼前、幹太はいつもの漁港で一人、屋台の開店準備に取り掛かっていた。


「あぁ、眠い…昨日はやり過ぎたな…」


昼からの開店になった理由はいくつかある。

昨夜、パーティの最中に新しいラーメンのアイデアを思いついた幹太は、そのまま勢いに任せて試作品を作り始めた。

そしてその後、試作中に眠くなって寝てしまったリンネを除いた、大人達全員で試食する羽目になったのだ。


「結局、調子に乗って、屋台にあった分を全部作っちまったからなぁ〜」


結局、試食会は朝方まで続いたため今朝の分の仕込みが間に合わなかったのだ。

また、材料も一部使い切ってしまったため、幹太は朝から市場に行って足りない食材の仕入れをしなければならなかった。


「おはようごさいま〜す♪」


ちょうど幹太が朝の仕込みを終えた時、アンナが風呂敷で包んだ荷物を持って幹太の屋台にやってきた。

これは幹太がアンナと別々に夜を過ごした日の翌朝、ルナさんにお願いしていた物である。


「幹太さーん!頼まれたもの取ってきましたよー!」


アンナが包みを両手で持ち上げる。


「おー!サンキュー、アンナ。

とりあえずその辺に置いといてくれ」


アンナは言われた通りにカウンターの上に置いた。


「これ、なんですか?

なんだか布みたいですけど…?」


風呂敷の隙間から赤い布が見える。


「予備の暖簾だよ、ちょっとやりたい事があって…、ん〜まぁ後で分かるよ」


幹太がチラチラとアンナを見ながら言う。


アンナは幹太にしては歯切れの悪い答えだと思ったが、今のアンナには他にもっと気になる事があった。


「幹太さん!これどうですか!?

ルナさんに貰ったんですけど?」


とニコニコ笑って聞いたアンナは、その場でクルリと回って見せる。

さすが本物のお姫様だけあって、流れるように見事なムーブだ。


いまのアンナの服装は、白いノースリーブのシャツにかなり短いデニムのショートパンツである。


「似合います?」


上目遣いでそう聞くアンナの破壊力は半端じゃなかった。


これはルナさんが昔、着ていた服を仕立て直し、アンナが着た時に、幹太に対して最大限の効果が出るように最適化されたものだった。


『ルナさん、おそるべし…。

自分の武器を理解したアンナ…ハンパねぇな…』


幹太はゴクリと喉を鳴らして唾を飲んだ。

とてもじゃないが、今のアンナから目が離せない。


「幹太さん…?大丈夫ですか?」


なぜか何も言わない幹太に、心配になったアンナが声をかける。


「すごくイイ…めっちゃ可愛い…」


幹太は思わずそう返事していた。


「あ、ありがとうこざいましゅ…」


それを聞いた瞬間、アンナの顔がボンッと一気に赤くなる。


「あ、その…」


幹太も自分がいま何を言ったかを理解して、真っ赤な顔で誤魔化そうとしたが、素直に褒める以外に言葉が見当たらない。


「い、いや、でも本当によく似合ってるよ!」


確かにシンプルこの上ない服装は、今のアンナにとても良く似合っていた。

小麦色の肌に白いシャツは爽やかな感じで、元気なアンナに良く似合っている。


『ア、アンナ、ちょっとお尻が出ちゃってるよっ!』


その上、ショートパンツはかなり際どい短さなので、細く綺麗なアンナの足の魅力が良く引き出されていた。


『俺、こういう女の子の格好が好きなんだ…』


幹太は今日のアンナを見ているだけで、ドキドキしている自分に気づいた。


「そ、それは良かったです♪」


アンナは少し恥ずかしかったが、期待以上の手ごたえを感じていた。


『やった!やりましたよ!ルナさん!』


アンナの心の中のルナが、ビシッとサムアップで答える。


「と、とりあえず残りの準備をしちまおう」


幹太はいつもは使わない、小型の五徳を取り出して、その上に中華鍋を乗せた。


「アンナ、そこにある油をとってくれ。あぁ、重いから気をつけて」


「せーのっ!よいしょっと!は、はい!幹太さん!」


幹太がアンナにとってもらったのは、今朝市場で買った油の壺だ。

中には日本でいうゴマ油が入っている。

市場で見たこちらのゴマは、一粒が人の顔ほどある巨大な物だったが、取れる油は普通のゴマ油と変わらないようだった。


「う、腕がもげそうでした…」


「ごめん、ごめん、最初から俺がやりゃ良かったな。

ありがとう、アンナ。

よし、そんじゃこれを注いで…」


幹太はアンナから渡されたゴマ油を、中華鍋の半分ほどまで入れる。

さらにそこへ、調理台の下の一斗缶からお玉で掬った白い油の塊を入れた。


「幹太さん、それなんですか?」


「これはラード。豚の脂だよ」


ラードは温めないと液体にならない。

今日はこれで揚げ物を作るのだ。


「はぁ〜、そうやって油を混ぜるんですねぇ〜」


アンナは溶けていくラードを興味深く見つめている。

夢中で前のめりになって見ているため、ショートパンツの裾がお尻の半分ぐらいまで上がってきてしまっていた。


『アンナっ!マ、マズイよっ!』


幹太はアンナを気にしつつ、今朝仕込んだ物を入れたタッパーをクーラーボックスから取り出した。


「さ、さて、うまく下味はついたかな?」


そう言って、幹太が大きなタッパーから取り出したのは豚のロース肉だった。

ルナの竜田揚げのように鶏肉ではなく、豚肉である。


「なんだかそのままでも美味しそうです…」


アンナはペロッと唇を舐めた。


「そうだな…」


確かにタレに浸かり、黄金色に輝くタレのついた豚肉は、見るからに美味しそうだ。


「よし、大丈夫そうだ。とりあえず衣を付けてしまっておこう」


幹太は手早く全ての豚肉に片栗粉の衣を付けた後、何枚か調理台に残し、その他は再びタッパーに戻してクーラーボックスにしまった。


「んじゃ開店しますか!」


「はーい♪

では暖簾を出しますね」


と言って、アンナがいつものカウンター下から暖簾を出そうとする。


「ちょっと待ってアンナ!

今日持ってきてもらった新しいやつを掛けてくれ」


「あっ、さっきの暖簾ですね。

ではそっちを使います♪」


アンナは先ほど持ってきた風呂敷を開きつつ、


『いま使っているのもまだまだキレイなんですが…?』


と、思っていた。

しかしその疑問は、風呂敷から暖簾を出して広げたところで解ける。


「幹太さん、これは…」


アンナは驚きで言葉を失った。


姫屋。


広げた赤い暖簾には、白くこちらの世界の文字でそう書いてある。

幹太がルナさんに頼んだのは、暖簾にこの文字を入れてもらう事だった。


「アンナ…これは俺の感謝の気持ちだ。

この店は俺だけの店じゃない。

アンナが一緒に働いてくれるからやっていけているんだ。

もうここは、アンナのお店でもあるんだよ」


彼はアンナが出ていった夜、どうしたら彼女に今の気持ちを伝えられるか考えた、そして思いついたのが屋台にアンナ絡みの屋号を付ける事だったのだ。


「本物のお姫様がいるお店だから姫屋…どうかな?」


幹太は恥ずかしそうに俯いて頬をかきながらそう言った後、パッと視線を上げてアンナの顔を見た。


「ありがどぅございますがんだざん!」


そして、そこには滂沱の涙を流すアンナの姿があった。


「ははっ♪アンナ、すごい顔だぞ…」


幹太はその様子に微笑んで、アンナの頭を優しく撫でながら言う。


「しばらくは大変だろうけど、一緒に頑張ろうな」


「ばいっ!私がんばりまずぅ〜」


ラーメン屋台、姫屋。

本日より開店である。


一番目のお客さんは、見知った人だった。


「幹太お兄ちゃーん!アンナお姉ちゃーん!食べに来たよー」


と叫びながら、リンネが行き交う人を避けながら走ってきた。


「こら、リンネ!危ないから走らない!」


その後をニコラが歩いてついてきている。


「お兄ちゃん♪新しいラーメンを下さいな♪」


リンネは勢いもそのままにカウンターのイスに座り、ニコラがその隣に座った。


「こいつは昨日、寝ちまって食べれなかったからな。

起きてからずっと、ここに来るって言ってきかなかったんだよ」


そう言って、ニコラはリンネの頭をポンポンと優しく叩いた。


「いらっしゃいませ♪」


「いらっしゃい、リンネちゃん♪」


幹太もアンナも、本日最初の可愛いお客さんに笑顔で挨拶をした。


「ご注文は新しいラーメンでいいかな?リンネちゃん?」


「はい♪お願いします、幹太お兄ちゃん」


「そんじゃオレにも一つ頼むよ」


ニコラもニヤッと笑い、一本指を立てて注文をする。


「はい!かしこまりました!」


幹太は威勢よく返事をして、さっそくラーメンの調理に入った。


まずは豚ロースからだ。


『揚げ物は専門外だけど…昨日、ルナさんに習った通りに…』


強めの火にかけた中華鍋の中に、衣が剥がれないよう豚肉をゆっくりと入れていく。

それほど厚く切っているわけではないので、揚がるまでそう時間はかからない。


「おっ!そろそろいい頃だな!」


「やっぱり美味しそうですね、幹太さん♪」


しばらく経つと揚げている音が変わり、豚肉が少し浮いてきた。

幹太はそれをサッと取り出して余熱で更に火を通す。


「アンナ〜麺入るよ」


「はーい!」


次に幹太は麺を茹で始める。

アンナはその間、ラーメンのどんぶりにタレとスープを入れてかき混ぜた。


「よーし。アンナ、麺上がるよ〜」


「はーい!アンナ、了解です」


幹太は麺をしっかり湯切りして、静かにスープの入ったどんぶりに入れた。


「えっと…これと、これですね」


そして、そのどんぶりの上にアンナが茹でたチンゲン菜とネギを乗せていく。

チンゲン菜は形が同じ物が市場にあり、幹太は生で試食させてもらって味を確認していた。


「アンナ、竜田揚げいくよ」


「はい」


最後に、幹太はサクサクと手早く切った豚の竜田揚げをラーメンに乗せた。


「はい、お待たせしました!姫屋流パイコー麺です!」


パイコー麺、又はパーコー麺。

昨夜、幹太が猛烈な勢いで試作したのはこのラーメンだった。

試作でチャーシュー用の豚肉をほとんど使ってしまった為に、今朝の営業ができなかったのだ。

当初、幹太はルナが鶏の竜田揚げを作る時に使うタレに、豚肉を浸けて揚げた。

そしてまずはその竜田揚げだけを試食してもらったのだ。


しかし、食べたニコラや漁師達から、


「おれはもうちょっと濃い味がいいな…」


「なんか物足りない…」


と言われて、下味を改良する事にした。


『そうか…漁師町の人達ならばスタミナが必要になるのか…』


幹太はそう考えて、ルナのタレにすりおろしニンニクやハチミツなどを加えてみたのだ。


そして、これがかなり好評だった。


「美味い!これはこれだけでも最高だよ!」


と、最後には竜田揚げ好きのニコラにそこまで言わせたのだ。

そして、その竜田揚げをラーメンに入れてみると、その美味しさにさらに磨きがかかった。


「どうして味が薄くならないんだ…?」


ニコラの疑問はもっともだった。


「スープは旨味の塊なんです。

竜田揚げにはスープの旨味が染み込んで、スープにも竜田揚げの脂が流れ出て美味しくなるんですよ」


基本的に、パイコー麺のベースとなるラーメンはサッパリとしたものが多い。

今となっては町の中華食堂によくあるメニューのパイコー麺だが、もともと日本では高級中華料理店のメニューだった。

本格的な中華料理店では、上湯スープというものがある。

その店のスープを使う料理には、全て同じ上湯スープを使うのだ。

その店の味のベースとなる物なので、クセのない、あっさりとしたスープを多くの手間をかけて仕込んでいる。


「やっぱり鶏ガラでやったのは正解だったな…」


試作品を作り終えた幹太はそう呟いた。

姫屋のラーメンは上湯スープと同じく、鶏ベースのシンプルなスープだ。

それが濃いめに下味をつけた、豚の竜田揚げを引き立てるのにはベストなスープだった。


「俺、これなら毎日食えるよ!」


「はぁ〜、ごま油で揚げると衣に残ったゴマの風味がこの鶏のスープと抜群に合うんだねぇ。

うん、うん、確かにこれは美味しいよ。

あたしの竜田揚げからこんなもんを思いつくなんて、やるじゃないか!」


などと、宿屋での試食会は大絶賛だったのだ。


『これなら大丈夫だ。明日はこれで勝負してみよう!』


だから幹太は自信を持って、このラーメンで今日に臨むことができたのだ。


「おいし〜い♪幹太お兄ちゃんこのラーメン美味しいよ♪」


「そうだな、リンネ!

何度食べてもこれは最高だ!

ルナの竜田揚げと甲乙つけ難い!」


そう言って、幸せそうにラーメンを食べるヘルガソン親子の姿を、周りにいる人たちは興味深く眺めていた。

そしてそんな二人のお陰で、一人また一人と姫屋の屋台に入ってきた。


「「いらっしゃいませー!!」」


幹太は先を見越して、竜田揚げの量産に入る。

アンナもエプロンを付けて臨戦態勢だ。

幹太が気にするきわどいお尻はもうエプロンで隠れていた。


「この新しいラーメンってのを頼むよ!」


「はい♪」


アンナは最高の笑顔でお客を迎え入れた。

今日のメニューはパイコー麺と焼き鳥のみだ。


「幹太さん!列がすごいです!」


「おう!」


二人が気がつけば、店の前には行列ができていた。

ほとんどがこれから漁に出る漁師や仲買人、あとは商品を運ぶ運送業の人などで、体格の良い者が多い。


『やっぱりだ!』


幹太は忙しく動きながら、自分の予想が的中したことを確信する。


昨日ニコラと話していた時、幹太はこれから漁に出る漁師達に必要なのはラーメンの量でなくボリュームではないかと思ったのだ。

つまり腹持ちと言う事だ。

今までの幹太のラーメンは大盛りにしたところで、とりあえずお腹はいっぱいになるが腹持ちは良くない。


『ニコラさんは竜田揚げの味だけじゃなくて、どっしりしたボリュームもお気に入りなんだ!』


その事に気づいた幹太は、漁港の食堂で漁師らしき人達が皆、揚げ物の定食を頼んでいたことを思い出した。


『食堂は盛り付けも多かった。それに揚げ物が加わったら、かなり重いはずだ…』


アンナと二人で食堂に行った時、幹太の頭に引っかかっていたのはこれだったのだ。


「ははっ♪どーりでお持ち帰りの焼き鳥が人気な訳だ。」


幹太はいくつものパイコー麺を作りながら呟く。

コンビニスナックのような焼き鳥ならば、漁の間の忙しい時にも簡単に食べることができる。


「か、幹太さん!これ!大丈夫でしょうか!?」


予想をはるかに超えたお客の数に、アンナが悲鳴を上げた。


「大丈夫!落ち着いて、アンナ!」


その間にも行列は伸び、もはや大行列と言っていいほどになっている。


「リンネ、お前はお兄ちゃん達を手伝ってあげなさい。

おれは漁師仲間に、新しいラーメンの宣伝をしてくる」


ニコラがリンネにそう言ってその場を離れる。


「うん♪わかった!

アンナお姉ちゃん、これはもう出来上がってる?」


「えぇ、できてますけど…」


さすがは宿屋の娘、手際の良さは半端ではない。


「じゃあ、これ持ってくね♪

あそこのお客さんでいいのかな?」


「あっ、はい!お願いします、リンネちゃん!」


リンネはすぐに自分のできる仕事を見極め、お客さんにラーメンを出しに向かった。


「幹太さん、盛り付けはすべて私が!

幹太さんは麺とスープをお願いします!」


アンナも負けていられないと思ったのか、幹太に指示を飛ばしつつ再び自分も厨房に回った。


「ありがとう!二人共よろしく頼む!」


幹太はそう言って、一気に二つの麺を湯切りしてスープに入れる。


「はい!もらいます!」


アンナは綺麗に麺を整え、切った竜田揚げとチンゲン菜を盛り付けた。


「リンネちゃんお願い!」


「はーい!」


そして、リンネが慎重に出来上がったラーメンをお客さんをに運んでいく。

幹太が揚げ物をしつつ、リンネの様子を見ていると、驚いたことに、リンネはキチンとお会計までして戻ってきていた。


「はい、お兄ちゃんお金。

これで間違いない?」


一応、幹太が数えても金額は間違いなかった。


「ありがとう、リンネちゃん。

完璧だよ」


「うん、よかったぁ♪」


リンネはホッとした顔でそう言って、出来上がったラーメンを持って再びお客さんの元へと向かった。


「ははっ♪これはお給料出さないとだな、アンナ」


幹太はアンナにそう言う。

それにはアンナも賛成だった。


「そうですね♪

私、開店早々に姫屋の姫の座を奪われそうです♪」


姫屋のパイコー麺ラッシュはお昼を過ぎ、夕方前になっても止まらなかった。


『そろそろじゃないか…?』


そう思った幹太がドンブリにスープを入れようと柄杓を鍋に入れてみると、


ガンッ!


と、鈍い音がして柄杓が鍋の底に着いた。


「すいません!あと二杯です!

いま座ってるお客様で最後になります!申し訳ありません!」


幹太はそう叫んで、いまだ屋台の前に並ぶお客さんに謝った。


「そっか、しょうがないな。んじゃまた明日来るよ」


それを聞いた数人のお客達は、残念そうに帰っていった。


「ご馳走さま。また来るよ♪」


それからしばらく経って、最後のお客が屋台を出ていく。


「「ありがとうございましたー!」」


幹太とアンナは去っていくお客の背中に向けて、お礼の言葉をかけた。


「アンナ…」


「幹太さん…」


お客さんが見えなくなったのを確認した二人は、笑顔で見つめ合い喜びを爆発させた。


「やったー!」


「やりましたー!」


二人はお互いに抱きしめ合いながら、グルグルとその場で回った。


「キャー♪幹太さーん♪」


喜びのあまりアンナは妄想するのも忘れていた。

幹太はそこからさらに高くアンナを抱き上げて言う。


「こっちに来て初めての売り切れだ!

アンナ!本当にありがとう!

俺がここまで折れずにこれたのは君のおかげだ!」


幹太が見上げるアンナの顔は汗と油でベタベタだった。

しかし、そんなことが関係なくなるほど、今のアンナの笑顔は美しかった。


「私、こちらの世界でも絶対に幹太さんのラーメンは通用するって思ってました!

すっごい嬉しいです!」


「そうだな!俺もこんなに嬉しいのは久しぶりだ!

よし、このまま明日も頑張るぞー!」


「はい!頑張っていきましょー!」


とそこで、


「あー!アンナお姉ちゃんズルい!

私も幹太お兄ちゃんにぎゅーってしてもらいたい!」


一人、しっかりカウンターを拭いていたリンネが、膨れっ面で抗議する。


「よし!いいぞ!こいっ、リンネちゃん!」


「そうです!リンネちゃん!交代です!」


幹太はアンナを地面に下ろした後、リンネを同じ様に抱き上げてクルクルと回った。


「アハハッ、キャー♪ お兄ちゃんもっと早く回って♪」


これにはリンネは大喜びだった。


『これは本当にお姫様の交代になりかねませんね♪』


そう本物のプリンセスに思わせるほど、リンネの笑顔は可愛いらしいものだった。

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