幽霊見たり枯れ尾花

HaやCa

第1話


 バイト帰り、夜道を歩いているとふとした出会いがあった。

幽霊を見つけたのだ。

 はじめは何かの見間違いじゃないかと思ったけど、どうやら違うらしい。

「あの、アナタって幽霊ですか?」

 何を血迷ったのか、わたしは話しかける。

「はい。実は幽霊なんです。まさか普通の人に見つかるなんて恥ずかしい限りですが……」

 幽霊さんの名前は立花といった。

 生きていたころはフォトグラファーだったらしく、思い出を楽しそうに語ってくれた。

 

「幽霊になってたくさん考えさせられました。晩御飯を食べられることがあんなに幸せだっただとか、恋人と遊ぶことがとても美しかったんだとか」

「生き返りたい、んですか?」

「そうですね。そうできたら一番いいんですけど。なかなか難しくて」

 ハニカムように顔を伏せる立花さん。

 横顔は花のようにきれいだった。


 その後も世間話を交えたりして、最後にさよならを言って別れた。


後日、また立花さんに会いたいと思った私は同じ場所に走った。

 でもそこには立花さんはいなくて、小さな墓石が当たり前のように立っていた。

 わたしは何を勘違いしたのだろう。はたまたただの夢だったのか。

 真相はわからない。けど、立花さんと話したことはしっかり胸に焼き付いている。

 難しいことはわからないけど、これからわたしが向かっていく未来。

 そこに希望が見えた気がした。


 また、会えるといいな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幽霊見たり枯れ尾花 HaやCa @aiueoaiueo0098

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る