時短小説(仮)

波図さとし

第1話 500文字のラブレター

長い文章は嫌いです。だから、想いをシンプルに伝えます。


あなたが好きです。


覚えていますか?桜降る春の目黒川。


川沿いのベーカリーカフェであなたはウェイターをしていました。


そこに立ち寄ったのは偶々。クライアントとの打ち合わせまでの時間つぶし。


たったそれだけの日常のこと。でも、あの日から非日常になりました。


それ以来、私はあなたのお店へ足繁く通いました。 時には遠回りをして、休みの日でも関係なく。


私を覚えてくれていて「ラベンダーティーとケーキセット、今日は……モンブラン! どうでしょ?」と言ってくれたときは、それはそれは嬉しかった。


デートに誘ってくれたときはそれ以上。お付き合いを始めた後も、貴方には心を踊されてばかり。


それは今も変わりません。


時が経ってお店がなくなったとしても。あなたの髪に白い糸が混じりだしても。


あなたが二度と冷めない眠りについた今も、目黒川を通る度に思い出せます。


ありがとう。愛しています。

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