観覧車の恋

尾形昭

第1話ひと目ぼれ

ある高校の合格発表。正面玄関に、合格者の受験番号が、掲示板に貼り出された。今田小夜子が、自分の受験番号を確かめるために、その掲示板に近づいて行った。


突然、目が釘付けになった。

(あっ、いい男)

そのとき、一人の男子生徒に見とれた。自分の番号を見るのも、忘れて。


(この子と同じクラスになれたらいいのに)

心の中で、そう思った。


入学式当日。正面玄関に、クラス別に、氏名が貼り出された。

小夜子は5組だった。

5組の教室は2階だった。小夜子が教室に入ったときには、教室には、男女併せて10人くらいが座っていた。


あの男の子は、居なかった。徐々に人数が増えて来た。

その後、あの男の子が来て、小夜子と離れた席に座った。

(神様ありがとうございます)


いよいよ、席の発表である。

小夜子は、窓側の一番後ろの席。あの男の子は、その前である。

(神様、再びありがとうございます)


あの男の子の名前は、松本和巳と言った。

新学期が始まった。小夜子は、ドキドキして恋の行方を見守った。


担任の、ブル賢と言うあだなの教師の提案で、クラス会を開くことになった。場所は近鉄百貨店阿倍野店の屋上遊園地。みんなは、逐次、男女別に乗り物に乗って遊んでいた。


突然、松本和巳が

「今田さん、観覧車に乗ろうよ」

と、言った。


小夜子は、もちろん喜んで、一緒に乗った。

小夜子の顔がニヤケていた。

観覧車の中では、何も話さなかった。


でも、小夜子は、和巳が小夜子に関心が有ることを確信した。

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