ニャンて素敵なニャン世

茉莉花 しろ

第1話

吾輩は猫である。名前はある。「ジャン」というこの上ない素敵な名前が僕にはある。というか、そもそもこの言葉を言ってみたかったんだけどね!

そんなことより、僕は今一つの家の前に立っている、はずだったのに。


「こ、ここは何処だにゃ…」


目の前に広がるのは大きな橋が架かった川である。雲は薄暗い紫色のような、僕が大好きなネズミと同じ色をした雲がうようよしている。あれは何だろう。


「おい、お前。」

後ろから聞いたことのあるような声が聞こえた。振り返ったら、そこには「ゆら」がいた。


「あ〜!!ゆらじゃないか!こんな所で会うなんて奇遇だね!ん?待って、何でこんな所に?君、僕より先に死んでなかった?」


見たことのある特徴的な目つきをした“ゆら”はこっちに近づいてくる。いつも一人でいた“ゆら”は飼い猫ではなく、野良猫だったからなのか言い方は少しだけぶっきらぼうだ。まあ、僕はそんなこと気にしないけどね!


「それはこっちの台詞だよ。お前こそ、何でここにいるんだ。」


吐き捨てるように言ったその言葉に少しだけ棘が感じるが、僕はそんなことは気にしない。


「いやー、ね?いつも通りに“あの”家に行こうとしたんだけど、何でかここにいたんだよね〜」

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