つくづく付喪神!
Eおり
プロローグ 木になる花
第1話 サクラ咲き散る。
付喪神を知っているだろうか?
長い年月を経た道具や物または土地や場所に神や精霊、霊魂などが宿った物を付喪神と呼ぶ。名前に神とあるが実際のところは妖怪やおばけのそれに近い。
そんな付喪神だが人類が誕生してから長い年月が経ちもちろんそれに伴い道具や物、土地や場所も時を重ねてきたわけであるが、それらに付喪神は宿っていないのだろうか?
否、もちろんすべてではないがそれらのほとんどの物に付喪神が宿っている。
え?見たことない?どうなっているのかって?
じゃあ付喪神やそれを取り巻くとある面白い話をしよう。
春。サクラが舞う季節。
学校の校門から玄関にかけて見事に咲いたサクラ。
みながふわふわ緩くなる雰囲気の中とある決意をした少女がいた―
(友達100人欲しい…!バラ色の高校生活を送りたい…!)
クラスでの自己紹介で自分の番が回ってくるのを不安と期待で待つ少女。
彼女の名前は
肩までかかった髪型は緩く内側にウェーブしており、童顔とまではいかないが顔は少し幼く背も低いため初見で高校生とは思われないであろう。
昔から内気な性格で親友と呼べるものはおらず、バラ色とは程遠い人生を送ってきた。しかし妙なところでポジティブでありそれを憂いたりするようなことはなかった。
「それじゃあ次、青葉さん自己紹介お願いします。」
桜は高校生になったら自分のこの内気な性格を直すと決めていた。
しかし、自分の名前を呼ばれ一気に頭が真っ白になった。
そして嫌なことばかりが頭を駆け巡る。
(恥ずかしい…もし笑われたらどうしよう…声が震えちゃったらどうしよう…)
なかなか喋らない桜のほうをみんなが向いていた。
余計に緊張が高まり、桜はさらに混乱し言葉がまとまらないままその場に立った。
「あ、青葉桜です!内気な性格で友達が100人欲しくてバラ色の高校生活を送りたいでしゅ…です!」
(噛んだー!しかもいったい何を言っているんだ私は!)
もはや心の中で自分に突っ込みを入れるほど酷かった。
自己紹介を終えシーンとした時間がかなり長く感じた。
その瞬間、ドッと笑いが起きた。
噛んだことはもちろん可笑しかったが、それよりもその内容であった。
みな、少女が言った健気なその目標がおかしかった。
おかしかったというと悪く聞こえるが決して馬鹿にしているわけではなく、このピンと張りつめた空気の中で言った桜の人柄に自然と笑みがこぼれた。
いくらポジティブな桜でもこれは残念な出来で失敗したと思った。
顔を赤くしてすぐに席に座った桜は周りを見ることができず、後はただ、時が過ぎるのを待った。
自己紹介が終わってすぐは、何人かが話しかけてくれたが特にその後、話すこともなくいつも通り1日が終わっていった。
桜の足取りは重かった。入学早々失敗してしまい、珍しく落ち込んでいた。
校門に向かう足取りは依然重く、後ろから生徒が桜をが追い越していく。
そんな景色をはた目で見つつ歩いているとサクラが目に入り、足を止めてぱっと見上げた。
そこにはは朝より葉が落ちて全体的に少し小さくなったサクラがあった。
「お前も私と一緒だな。」
桜は少し笑ってぼっそとそうつぶやいた。
(ふぅ。今日は疲れた。家に帰る前にあそこに寄って帰るか…。)
桜はまた歩き出し校門を出て帰路についた。
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