歪んだ世界と小さな願いの調律師

卵焼きは醤油派

始まりの願い

願いの楔。

願い。


それは、こうなってほしいと思うこと。


願いは叶うわけのないバカバカしいほど大きなものからなんてことのない願いまで、そこに際限はない。


そう願いとは、小さなことから大きなことまで幅広い。


そして、願いとはそれを望むから願うのだ。そこにはなにもないから願うのだ。


例えば、「パンが欲しい」と願うとしよう。


そこのにパンがあれば「パンが欲しい」と願うこともなかっただろう。


ないから願う。当たり前のこと。


そして、一般的な願いはある程度頑張れば叶うものを願う。


これも当たり前だ、決して願うことのないことを願う者などいない。


そう、いないのだ。


しかし、それでも願ってしまったのであれば。


死の間際、「まだ死ねない」「このまま終わってたまるか」


そう願ってしまったのであれば。


その願いを誰が叶えるのであろう。


その願いを誰が聞き届けるのだろう。


その願いはどこに向けられるのであろう。


決して叶うことのない願い。一方通行の願い。


それでも、願いなのだ。


そしてその願いが何者かの手で叶えられてしまったのなら。


その願いが叶えられて良い願いであればどれだけ良かっただろう。


その願いが希望通りの結末になっていればどれだけ良かったんだろう。


願いは「このままじゃ終われない」


死の間際に願った、小さな願い。


そして願いは叶えられた。


「このままじゃ終われない」


しかし、叶えられた願いは…―――――歪んでいた。



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