守る価値

勝利だギューちゃん

第1話

クラスにひとりの男の子がいた。

単なるクラスメイト。

そのはずだった。


彼は誰とも話さず、輪に入ろうともせず、

いつも、1人でいた。


最初の内は、彼に声をかえていた人もいたが、

彼はそれを拒んだ。

いつしか誰も、彼に興味を示さなくなった。


私も最初は、彼には興味がなかった。

話す事もないと思っていた。


ある日曜日、私はクラスの友達と街へ買い物へ出かけた。

仲良し3人組で、休日を楽しんでいた。

こういうのを、青春を謳歌しているんだと思う。


ふと目線をやると、あの彼がいた。

いつもと変わらない雰囲気。

そのままにしておこうとおもったが、その時の私はどうしても彼が気になった。


友達は彼には気付いていないようだ。


私は友達に、「急用を思い出した」といって、1人で彼の後をつけた。

悪く言えば、ストーカー行為。


彼に気付かれないように、歩いていった。


程なくして、彼が立ち止まり、そのままの姿勢で言った。


「僕に何か用?」

「えっ・・・あの・・・」

どきまぎして、言葉が出ない。


「さっきから、付けてきてるだろ・・・」

「・・・うん・・・あの・・・」

「用があるなら、手短に頼む」

「あの・・・ひとつ訊いていい?」

「何?」

「君は、どうして、いつも1人でいるのを選んでいるの?」

ドキドキして、彼の言葉を待った。


「それで、君に迷惑かけたか?」

「違うけど・・・」

「なら早く、お友達のところに戻った方がいい。

青春は、時間は短い。僕に構っているともったいない」

私は言葉が出なかった。


それだけ言うと、彼は小走りに去って行った。

私はそれを見送ることしか出来なかった。


あの時なぜ追いかけなかったのかと、私は後悔した。


≪任務報告いたします≫

≪この地球は守る価値はあるか?≫

≪いえ、殆どありませんが、ただ・・・≫

≪ただ、どうした?≫

≪ごく微量ですが、守る価値はあります≫

≪微量というのは?≫

≪わずかですが、僕を心配してくれている人もいます≫

≪わかった。人類を滅亡させるには、後100年待とう。

ただちに帰還せよ。≫

≪了解≫


翌朝の新聞で、彼が自殺したニュースが載った。

クラスのみんなは事務的に葬儀に参列し、いつしか忘れていった・・・


でも、私は忘れる事が出来なかった。

彼の最後の言葉が気になったからだ。


【時間は短い】

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守る価値 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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