6.今朝の雨は
「今朝の雨はどこへ行っただろう」
「雨は降ったのか」
「いや降らない、乾いた風」
「鐘が鳴っているね、どこの寺からだろう」
「寺でないといけないわけは」
「五才の記憶から鳴っているらしい」
「海もあったろう」
「畑があった」
「山のにおいが遠くなる」
「文明を批判したい心かな」
「生存を否定したい言葉だよ」
「どの今朝雨は降ったのか」
「船のない洋上」
「海中へ沈んだ航路が指差していた」
「ここはその客室だったね」
「夢に見たよ」
「私も見た」
「いなかったんだね」
「お互いに見た夢のなかでだけ生きている」
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