第4話 サンドバックは踏まれたい/神様は出会いたい

壁が吹き飛び、ついでに意識も吹き飛ぶ。

目が覚めれば、ベットの上に寝かされていた。


・・・・・・・。


朝起きて、殴られて、意識を失い、目を覚まし、食事をとって殴られる。

意識を失い、目を覚まし、家事を終わらせ、仕事終わりの彼女を出迎え、殴られる。

意識を失い、目を覚まし、夕食を食べ、眠りにつく。


これが今の俺の日常だ。

どうやら俺は異世界で勇者でも英雄でもなく、サンドバックになったようだ。


あぁ、自分で言って涙が出てきた。

最近なんかもう中古のサンドバックみたいになんの気兼ねなく、満面の笑みで殴ってくるクリスタが怖い。

怖いを通り越してもうあれだ。

形容できないなにか、そんな感じだ。


「なあクリスタ?どうやったら毎日俺を殴るのを辞めてくれる?そもそも俺をどうこうできるような奴がいるって本気で思ってるのか?」


夜中、酒をがぶがぶと飲んでいるクリスタに聞いてみた。


「何を言っている、貴様をどうにかできる者が存在するはずがないだろう、わたしだってできないのだ」


え、え、まって。

じゃあなんで俺殴られてるの?


「じゃあなんで殴るんだよ!」


「うむ、基本的に目がいやらしい、ただ見られるだけというのは気分が悪い、そんなに見たいなら襲い掛かってこいと拳で語ってみた」


「口で語れよ」


「次に、“ド突き漫才”という文化があるらしい」


「漫才師にやれよ」


「最後に、私なりの愛情表現だ」


「ゴリラかお前は、ゴリラでもそんなファンタスティックビーストな求愛しねえよ」


「あぁ、それと一つ忘れていたが、あれだ、照れ隠し」


「忘れてたんじゃちげーよな」


ダメだ・・・・結局殴られる理由が俺が視姦している以外まともに分からなかった。

というか襲っていいの?え?


「もっももももも、もし、もしだぞ?もし俺がクリスタに手を出そうとしたら・・・・その、お前はどうするんだ?」


「何を訳の分からないことを言っている、夫婦でそう言うことをするのは当たり前だ、むしろこれだけの間手を出さないお前はおかしいんじゃないか?あれか?勃起不全か?EDなのか?」


「なんでそんなこと知ってんだよ・・・」


「寝てる間に貴様の記憶を読んだ、お前結構あれだな、コアな趣味があるんだな」


「・・・・・・え?今なんて言った?」


「うむ、今日はしっかりと一日ブーツをはいて足を蒸れ蒸れにしてある、それで踏んでやろうじゃないか」


「神か、お前が神か」


どうやら俺の性壁がばれてしまったようだが、そんな些細な事はどうだっていい。

今、俺の視線はクリスタの蒸れ蒸れになってる足に釘付けだ。


「早速一発行ってみるか、そこに横になれ」


「お、おう!」


ドキドキする心臓を必死に押さえつけ、俺は横になる。

シュルシュルっとクリスタがブーツのひもを解いていき、そして蒸れ蒸れの足を俺の上に持ってきた。


「欲しいのか?であればおねだりしてみろ」


「くっ・・・クリスタにこんなことを言う時が来るとは・・・・屈辱だ!」


「なら辞めるか?私は別に構わんがな」


フンスと鼻息を吐き出し、若干残念そうにしたクリスタ。


「い、いや!せっかくクリスタも俺に気を使ってくれたんだし・・・・その・・・・欲しいで——————」


今日の教訓。

バカにお願いする時はしっかりと手加減をさせる。

じゃないとマントルまで地面を押しのけて突き進むことになる。



ちなみに、俺がマントルに衝突したせいで星が壊れかけたけど、クリスタが力技で回復させました。



◇◇◇


プルプルプル。

机の下で意識を失っているレオンのポケットから怪しげな音が流れてきた。

すぐさまレオンを取り出し、ポケットの中に入っている音の発生源を取り出した。


「おお!これはレオンの記憶で見たことがある!」


レオンは地球というところに住んでいたと記憶を読んで知った。

どうやらレオンは転生者の様だったが、まあ既に私の高鳴るリビドーは収まることなどできないので気にしないことにした。


「たしか・・・これが・・・・」


『ちょっとあんたさっさと出なさいよね!!!』


記憶をたどって適当に触ってみたらそれから聞いたことのある声が聞こえた。


『話聞いてるのっ!?ちょっと!ちょっとってば!!!』


「何だ騒がしい、レオンが起きるだろ」


せっかく気絶させたのに。


『ゲッ!あんたはクリスタ!どうしてレオンハルトの電話にあんたが出るのよ!』


「夫婦だからな」


当たり前のことだ。

レオンハルトの全ては私のものだ、つまりこのでんわ?も既に私のものだということだ。


『はぁ?ないそれ意味わかんな—————待って嘘!嘘!お願いだからこっちに来ないで!これ以上神界を壊さないで!!!』


少し前、神に求婚されたのでぶちのめしてやったら神の先兵とか言うガラクタを大量に送り付けてくる嫌がらせを受けて、イラっとしたので少し神界を亡ぼしてやったのだ。


「して、“私のレオン”になんの用だ」


『はぁ、まあ神々の計画はひとまず成功ね・・・それより、その辺にレオンいない?あいつ私のテトリスの記録いつの間にか抜かしてたから天罰与えようと思ってたんだけど』


手とリス?なんだそれは。

どんな奇怪な者なのだ。


「手とリスとはなんだ」


「テトリスよテトリス・・・・あぁ!丁度いいじゃない!あんたにもスマホあげるから一緒にやりましょ!最近私スランプ気味で適当に見下せる雑魚をぶちのめして自尊心を取り戻したかったのよ」


最低か、この神最低か。

だが・・・・レオンとおそろい・・・・・うむ、悪くない。


「仕方がない、貰ってやろう」




・・・・。


『ひっぐ・・・・えっぐ・・・・なんでよ・・・・あんためちゃくちゃじゃない・・・・』


「まあこの長い奴以外が落ちてくる未来を亡ぼしたからな」


『そんなんチートやチーターやん!!』


「チーター・・・・あぁ、あの早歩きの得意な生き物か、レオンの記憶で見たぞ」


『チーターで早歩きとか化け物だわ』


「それにしてもつまらないな手とリス、もっと面白い物はないのか」


『うっせバーカ!お前なんかティンDAでもやってろ!』ブチ。


うむ、切られたようだな。

それにしてもティンDAか、少しやってみるか。


「写真・・・これだったな」


「自己紹介文・・・・・難しいな、何を書けばいいんだ?」


悩んだ挙句私は『私に勝てるやつがいれば出てこい、いくらでも相手をしてやろう』と打ち込んだ。


「横にすわいぷ?シュッとすればいいのか」


「なんだ?まっち?むむっ?めっせーじ?・・・・おお!こうすればいいのか!・・・・なになに・・・・・・」


『クリスタちゃんどもども!俺はゼウスって言います!神やってまーす!好きなだけ相手してくれるってマジ?俺かなりやばいよ?クリスタちゃんも絶対気に入ってくれると思うんだけどどうかな?あ、ちなみに俺自由業みたいなもんだから休み合わせられるけどどうする?明日とか暇?』


「何だこのキモイ奴は」


とにかく返事を打たなければ。


『しね』


よし。


————ピコーン。


数秒と経たぬうちに返事が来たようだ。


『うわー冷たいねクリスちゃん!でもでもなんだかんだ言いながら返事くれるアタリやさしさ感じちゃうなぁ!それよりさ、今度デート行こうよ!大丈夫俺結構お金あるしなんでも奢ってあげるからさ!あ、でもできれば次の日もお休みの日が良いかな?クリスちゃんと一緒にいたいし!なんてね』


なんだこいつは・・・・鳥肌が止まらないぞ?

よもや私にこのようなダメージを与えるとは・・・このゼウスという男なかなかに・・・・・ん?ゼウス・・・・どこかで聞いたような・・・・。


『貴様はどこに住んでるんだ』


『いきなりおうちデート?あぁーでもうち今ダメなんだよね!ちょっと散らかってってさ!じゃあどっかいいホテルで二人でのんびりしようよ!おうち感覚でDVDとか見ながらさ!』


『貴様神界のゼウスだな?』


『ええー!?まじまじ?俺のこと知ってくれてる感じ?まあ俺もそれなりに有名だし?実は結構モテちゃうんだよねーイヤー困った困った』


「・・・・・・私だ、あぁ、あぁ、そうだ間違いない、お前の父親からだった・・・・あぁ、家が散らかっているそうだ、それとモテて困っているそうだぞ・・・・あぁ、そうしてくれ・・・・・・では」


とりあえず神に電話をかけ、今のことを洗いざらい話してやった。

すると1時間ほどたって、私のすまほに返事が来た。


『数々のご無礼誠に申し訳ございませんでした、この度は当方に全面的に非があり、クリスタ様に多大なるご迷惑をおかけしてしまいましたことをお許しくださいませ・・・・・ゼウスの妻メティスより

PS.女性同士についてどう思いますか?もしご興味あればこちらのアドレスにご連絡ください yuriyuri@kami.com』


『死ね』




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