俺の異世界転生~なんか知ってる異世界転生じゃないんですけど!?~

不可説ハジメ

新しい仕事・・・・見つけました

prologue1 

「あなたは死にました」


真っ白な空間に佇む一人の麗しい見た目をした女性。

金色の髪に、仕立ての上質な法衣を身にまとっているその女性が、白い空間の中で膝を付きうなだれる少年に声を掛けた。


「あなたは死に—————」


「あ、聞こえてないんじゃなくてコンタクト落としたんで探してたんです」


「・・・・・・・・・転生になりました」


様々な説明、渡す能力の解説など、それらの工程全てを吹っ飛ばした女性がそう言い放った。

心なしか目が死んでいる。


「え?じゃああなたが神様で、俺は死ぬ予定じゃなかったか、それとも何かしらのやり取りで異世界に送られることになってたって感じですか?」


「・・・・・・・・・・・驚くかもしれませんが、私は神です、別にあなたがそう言う知識が豊富なことも、それとコンタクトを探してたことも実はしっかりとお見通しだったんですよ、だからあまり調子に乗らないでください」


「いきなりひどくないっすか・・・・・」


コンタクト探してただけなのに・・・・男はそう言って肩を落としたが、結局は異世界転生という甘い餌に食らいついてしまう。


「転生するのはいいんですけど、どんなところなんですか?それとどんな力貰えるんですか?あと何歳から?見た目は?言語とかわかる?」


「——————————・・・・・あんたにあげるのは最強の肉体、料理スキル、言語理解、鑑定、アイテムボックスよ、アンタみたいな男どもが大好きな剣と魔法の世界に送ってあげるわ、感謝しなさい、見た目は・・・・ちょっと改造してあげるから、それも感謝しなさいね」


先程までの神秘的なオーラが一瞬でかき消えた神は激しくまくしたてるような口調で男にそう言った。

恐らく、男のあまりのうざさに本性を現したのだろう。


「分かったらさっさと行ってくれないかしら?あんたみたいなやつに時間を割くのとか、アタシ的にマジで許せないから」


「ちょっとひどすぎやしませんかそれは・・・っていうか俺ってなんで死んだんですか?今更になってもやもやしてきました」


「あぁあぁぁあ!!もううっさい!なんなのよあんたは!いきなりコンタクト落とすし、いきなりうざくなるし情緒不安定かっ!!というかアタシさっき神って名乗ったよね?なんであんたは名乗ってないわけ?あれか?貴様あれか?私より偉いんか?神よりも偉いんかこら!?あぁ?」


「すみませんちょっと何言ってるかわからないです」


「な・ん・で・だ・よぉぉぉおおおおおお!!!!」


「いや・・・・・・方言凄くて」


「——————————え?うそ?マジ?出てた?ねえ出てたの?何それめっちゃハズいんですけど・・・・・うわ、マジ死にたい、よりにもよってこいつの前で方言出るとか——————って神に方言があるかぁぁっぁぁああ!!!!」


「神様意外とノリいいっすね」


暴れまわる神が大人しくなるまで約20分かかったが、その後に職務を思い出したのか色々な向こうの世界での説明をうけ、最後に明らかにスマートフォン的なものを受け取った男。


「これは・・・・まさか、このスマホだけは電波が通じてて、その知識を使って・・・・・」


「テトリスが入ってるわ」


「要らねえ」


「んなっ!?いいから持って来なさいよ!今結構神の間で流行ってんのよ!?黙って甘えなさいよ!あとあれ、あれができるから!」


「ま、まさか今度こそ知識チート?いや、この神に関してそんな見え透いたチートを渡すはずがない、つまりこれは・・・・カメラか?カメラを使って何か革命を・・・・」


「—————ぷよぷよも入ってるから」


「返す」


「もってけ」


男にそのスマホを無理やり押し付ける神と、それに必死に抵抗する男がしのぎを削る。


「せめてパズルのドラゴンのやつ入れろよ!」


「あんなのはパズルじゃないっ!!!だいたいアンタ何がそんなに嫌なのよ!いいじゃんぷよぷよ!対戦しましょうよ!」


「やだね!絶対アンタは負けそうになったらスマホ放り投げるか切るタイプだし!」


いつの間にか敬語でもなくなった男がそう言うと、途端に神の肩がビクッと跳ね上がる。


「は、はぁー?何い、言ってんの?そんなこと、す、するわけないじゃない」


「図星じゃねえか!動揺しすぎだろ!絶対それで遊んでくれる奴いなくなっただけだろ!」


「そんなことないっ!」


不毛な争いはそのまましばらくの間続くのだった。

その後ようやく納得し、しぶしぶスマホをポケットにしまった男が転生をすると、1人残された空間で神は小さくつぶやいた。


「ま、まあサービスとして視力は回復させてあげたんだから感謝しなさいよね・・・・・・・あんたの働きが天界、ひいては全ての世界の命運を握ってるんだから・・・しっかりやりなさいよ」


誰に言うでもなく、1人そう呟いた神の声は自然と空間に溶けていった。








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