シェイクスピア『リア王』の謎 解説
阿部 梅吉
はじめに
シェイクスピアの4大悲劇の中でも、最も壮大なスケールで描かれた『リア王』は、やはり彼の代表作である『ハムレット』程ではないにしても、やはり様々な謎を孕んでいる。もちろん、己の価値観を押し付けずに、読者による多様な解釈が成り立つところが、シェイクスピアの魅力といえるが、私としては『リア王』に孕んでいる幾つかの謎に迫っていきたいと思う。
まずはじめに、簡単に、本作について紹介する。
本作は5幕からなり、1604年から1606年頃の作。四大悲劇の一つ。
長女と次女に国を譲ったのち2人に事実上追い出されたリア王が、末娘の力を借りて2人と戦うも敗れるまでを描いた作品で、本作はシェイクスピア史上最も壮大なスケールで描かれたとの呼び声が高い。
ちなみに『リア王』には異なる2つの版がある。1608年に「四折版」で出版された『The True Chronicle of the History of the Life and Death of King Lear and His Three Daughters』と、より劇的な1623年の「ファースト・フォリオ」に収められた『The Tragedy of King Lear』である。これまでは2つの版を合成して出版するのが通例だったが、近年になって、オックスフォード版やニュー・ケンブリッジ版など、2つをそれぞれ独立した作品として出版する場合が多い。
以下、登場人物。
リア王 (King Lear)
ブリテン王。生来の気性の荒さと老いからくる耄碌から、娘ゴネリルとリーガンの腹の底を見抜けず、悲嘆と狂乱のうちに哀れな最期を遂げる。
コーディリア (Cordelia)
リアの実直な末娘。勘当されるが、誠実なフランス王の妃となる。
ゴネリル (Goneril)
リアの長女。オールバニ公の妻。リーガンと共に甘言を弄してリアを裏切る。
リーガン (Regan)
リアの次女。コンウォール公の妻。
ケント伯 (Earl of Kent)
リアの忠臣。リアに諫言したために追放され、以降は変装してリアのもとに仕える。
グロスター伯 (Earl of Gloucester)
エドガーとエドマンドの父。エドマンドの姦計によってエドガーを勘当してしまう。
エドガー (Edgar)
グロスター伯の嫡子。異母弟エドマンドの姦計によって父から勘当される。
エドマンド (Edmund)
グロスター伯の庶子。野心家で、異母兄エドガーの追放に成功する。
オールバニ公 (Duke of Albany)
ゴネリルの夫。
コーンウォール公 (Duke of Cornwall)
リーガンの夫。
フランス王 (King of France)
コーディリアの求婚者。勘当され持参金を持たないコーディリアを喜んで王妃とする。
オズワルド (Oswald)
ゴネリルの執事。彼女の言いつけ通り、リアを陥れる。
道化 (Fool)
リア付きの道化師。彼の皮肉に満ちた言葉はリアの核心を幾度となく突くことになる。
あらすじ
三人の娘の愛情を試そうとした老人「リア」は、末娘「コーデリア」の真心を信じず、不実な長女と次女の甘言を軽信して裏切られる。狂乱の姿で世を呪い、嵐の荒野をさまようリア、そして、疲れ果てた父と娘の美しい再会と悲惨な結末。古代ブリテン史のひとこまを材にとった、シェイクスピア作品中もっとも壮大にして残酷な悲劇。
(参考: 岩波文庫 野島秀勝訳 2000年 『リア王』)
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