休日1日目(土曜日)

 仕事終わりに日付が変わるまで1人で飲み歩き、ホテルの部屋に戻ってきたときには午前1時を回っていた。

 明日、いや、日付が変わっているから今日か。今日は仕事はないからゆっくり寝て、起きたら近辺を観光してみるか。

 私はネクタイを緩めて、パンツスーツがしわになることも気にせずベッドに倒れこんだ。


 * * *


 プルルルルルルルル

 プルルルルルルルル


 ……なんだ。モーニングコールか。いや、昨晩は何も予約していないはずだから、ホテルからの用件だろうか。

 ベッド横のデジタル時計を確認すると、今が午後4時前であることを知る。そもそもモーニングなんて時間でもないか。


 プルルルルルルルル

 プルルルルルルルル


 コール音は未だに鳴り止む様子がない。

 昨晩飲んだ酒のせいで痛む頭を枕に埋めながら、仕方なしに受話器を取る。


『あさだぞー』

「朝なわけがあるか!」


 しまった。思わず録音された声を相手に突っ込んでしまった。いやしかし、午後4時には無理があるだろう。


『んー? まだ太陽が登ってるからあさだぞ』


 おや? こいつ、いま私の言葉に反応したのか。


「おい貴様、私の声が聞こえているのか?」

『お? 聞こえてるぞー。よしよし、ちゃんと起きたみたいだな。えらいぞ。じゃなー』

「あ、おいこら待て」


 ブツッ

 ツーツーツー


 くそっ、切られたか。

 なんだったんだ一体……。

 何故、今日は録音されたものではなく、普通に電話をかけてきたのだろう。

 そも、私はモーニングコールの予約などしていなかったはずだが。

 しかしまあ、午後の4時か。だいぶ寝てしまったが、ちょうどいい時間に起こしてくれたものだ。

 軽くシャワーを浴びて、少し散歩に出かけるか。


 * * *


 外に出ても観光地らしきものは何一つ見当たらなかった。

 つまらない場所ではあるが、静かに歩くには向いていたので3時間ほど歩いてしまった。

 コンビニで買ってきた鮭おにぎりと、てりやきチキンとタマゴのサントイッチを味わうことなく食べ、シャワーではなく風呂にしっかりと入り、寝る準備をする。

 明日も仕事はないためモーニングコールは予約しないが、やつから電話はかかってくるのだろうか。

 ひょっとしたらモーニングコールを予約しなかった場合は、録音されたものではなく直接電話がかかってくるのだろうか。


 そんなことを考えながら、意識は段々と薄れていった。

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