4-2―突然のプロポーズ―
当時、珠樹は仕事が多忙であることを理由に独立し、一人暮らしをしていた。一方の圭も父、悠真との折り合いが悪く、夏木家を出て、独立していたが、その一方で圭は五年間同棲していた彼女と別れて半年ぐらい経ったところだった。その寂しさも手伝って、看護師として自らの使命を全うしようと懸命な珠樹の生き方に急速に惹かれ、珠樹も驚くぐらい積極的に誘いをかけてきた。
忙しい合間のデートを重ね、出会ってから一年ぐらいが経ったある日、圭は珠樹にプロポーズした。そしてその際、圭は自分が父、夏木悠真の先妻、梨花との間に授かった息子で、笙は圭が三歳の頃、悠真と梨花が離婚し夏木家を出た後、再婚した後妻、美奈子との間に授かった息子で圭と笙は腹違いの兄弟であることを告げた—。そして、夏木家を離れ旧姓に戻った後、旅芝居一座の役者としての人生を送っている母、友部梨花と会って欲しいと伝えられたのだった。その時、すでに圭の方も珠樹が抱えていた事情を知っていたし、今後、一緒に人生を歩んでいくためにも珠樹に自分のほんとうの母のことを知っていて欲しいと思い、伝えたのだった。
一方の珠樹は圭からの突然のプロポーズに戸惑った。自分自身も諸事情を抱えている上、圭が抱えている事情のことも気になった。圭が父親との折り合いが悪く、夏木家を出ていることも気になったし、圭の生みの母親は離婚後、夏木家を出て、旅役者としての人生を歩んでいるということだけれど、圭は一体、夏木家を出るまでどんな暮らしをしていたのだろうか。夏木家というのはどういった格式の家なのだろうか。そして、血の繋がりのない継母やその継母が生んだ笙との仲はほんとうのところ、どうだったのだろうか。もしかすると、肩身の狭い思いをして圭は夏木家を出たのだろうか—。そんな思いが押し寄せてきて、珠樹は圭の話を聞きながら、胸が苦しくなった。今までは、いつもデートの時は仕事絡みの話題が多く、話題の映画やドキュメント、ドラマ企画のことなどで、あっという間に楽しく時間が過ぎていたので尚更だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます