文具と私とエトセトラ

@marine-risu

第1話 ボールペンと私と旦那

文房具好きの私が、思わず買いたくなってしまうものの1つがボールペン。

書き心地はもちろん、芯の太さ(私は細字が好き)やインクの濃淡など、気になったものはチェックを欠かさず、気に入れば買ってしまう。

仕事柄メモを取ることも多いので、「このときはこのボールペン」など決まったものを使っている。


数多くあるボールペンの中で特に気に入っているシリーズがある。

書き心地も芯の太さも、私好みのボールペン。

でも、それ以外に気に入っている理由もあるのだ。


ラジオ番組と同じ名前のそのボールペンは、使うたびに、名前を聞くたびに、思い出される旦那との出来事。


まだお付き合いもしていない、友人同士の頃。旦那は車の中ではラジオを聴くタイプの人。

深夜に流れるその番組。内容はどんなものかほとんど覚えていないけど、ラジオなのに静かな時間が流れていたのは覚えている。

旦那が運転する車の助手席で、その日観た映画の感想を言い合ったり、会っていない間の出来事を話したり…

二人きりの時間を楽しむときのBGMがそのラジオ番組だった。

時間が流れ、友人同士から恋人、夫婦になって家族が増えてからも時々聴いていたラジオ番組。

今ではほとんど聴いていない。


そんなひと時を思い出させてくれるそのボールペン。多色や単色とさまざまなタイプが発売されているので、気に入ったものを何本か購入した。

けれど、どうしても手を出せないでいたシリーズがある。


高級ラインとして売り出されたそのボールペンは、ウィスキーを熟成させていた樽を使ったボールペン。値段はちょっとお高い…


気にはなっても購入に踏ん切りのつかなかったそのボールペンは、思いもよらぬところから私の元にやってきた。


きっかけは、旦那が勤めている会社だ。

旦那が勤めている会社では、年に一度総会という名の、私にはよく分からない会合が開かれていて、何らかの記念品が毎年配られている。それまでは扇子やら箸やら、貰えると使えるねという感じの記念品だった。


ところがある年、いつもと違い商品名が書かれた箱を旦那が記念品として持ち帰ってきた。そこに書いてある名前を見て、すぐさま奪い取る私。

そう、ずっと気になっていたあのボールペンが!まさかの記念品として配布されていたのだ。


私は興奮しつつ、旦那にそのボールペンについてのうんちくを語った。このボールペンの書き心地の良さ、どのようなものなのか、ああ、なんて素晴らしい!

そして、旦那がどんどん引いていくのを感じながらも、このボールペンをしっかりとおねだりし、ついに私のお気に入りボールペンの仲間入りを果たした。


ただ、ちょっとだけ残念なことがある。

そのボールペンには一言、旦那の会社の記念品であることがしっかりと明記してあること。

できることなら、何も書かれていない状態で手にしたかったなぁ。


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