私の幼馴染が色々とおかしい。

横芝カイ

第1話 『VSフリーザ』



 私、柚月美咲ゆづきみさきには幼馴染がいる。

 生まれた病院が一緒、家が隣同士。

 そんな幼馴染に片思いをして早十数年。


 これは、私とそんな幼馴染の日常の話―――。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「あちゃー……降ってきたか」


 それは私が高校一年生になった6月の時のこと。


「傘は持ってないし……走って帰るしかないか……」


 いつものように授業を終えて下校しようとしたのだが、あいにくとその日は天気予報が外れ、大雨が降ってしまっていた。


 私はカバンを両手で抱え込むようにして持ち直し、走り出し―――


「きゃっ!」


 何かにぶつかり思わず尻餅をついてしまう。

 思わず瞑ってしまった目を開けると、そこに男子用の制服のズボンが見え、私はぶつかったのが人間だったことを理解した。


「ご、ごめんなさい!」


 咄嗟に立ち上がって頭を下げる。

 顔が見えなかったので、この人はかなり身長が高いみたいだ。


「……美咲か?」


「へ?」


 私の名前を知ってるってことは、クラスメイトだったのかな?

 まだ男子の名前はあんまり覚えてないんだけど……

 でも、私のことを下の名前で呼ぶ男子なんていたっけ……?


「えっと……」


 そんなことを考えながら頭を上げてその人の顔を確認すると―――


「え!?陽向ひなた!?」


「ああ、やはり美咲だったか」


 私の目を見ながら、その男子が言った。


 ―――か、かっこいい……!抱いて……!


 この人は小豆畑陽向あずはたひなた

 私の幼馴染であり、ずっと片思いしている相手。

 だけど陽向は中学入学と同時に引っ越してしまい、離れ離れになっていた。


 恐らく185cmくらいあろう高身長。

 がっしりとした体の筋肉が、制服越しにも分かる程に主張している。


 そしてその体に対して、顔はとても凛々しく、爽やかで端正だ。


 やばい、胸がきゅんきゅんする……!


「ど、どうしてここに!?」


「ん?父さんの仕事の都合というやつで、また元の家に戻ってきたんだ」


 つまり、陽向は隣の家に戻ってきたってことよね?

 あぁ、神さま、こんな私に素晴らしい奇跡をありがとうございます……!


「ふーん……それ、うちの学校の制服だよね?」


「そうだ。俺もこの学校に通うことになった」


「へ、へぇ〜、そうなんだ〜」


 ―――うっひゃああああぁぁぁぁ!また陽向と一緒に学校に行けるなんて!さいっこうだよ!


 まさかまた陽向と学校に通えるなんて思ってもみなかった。

 ふふふ、家でいちゃいちゃして、学校でもいちゃいたゃできるなんて……!


 はっ!違うわ!小学校の頃は告白されなかったのよ、この私が!

 この私を惚れさせておいて告白しないなんて……むきーーーっ!

 私のプライドにかけて絶対に、熱い告白をさせてやるんだから!


「ところで美咲。その髪はどうした?」


「あっ、これ?」


 そう言って私は自分の髪をふわっと持ち上げる。


 そっか、最近はもう言われなくなってきたけど、高校に入ってから金に染めたから陽向は知らないのよね。


 ふふふ、でも私、自慢じゃないけど金も似合うってよく言われるの。

 しかも、かなりモテるんだから!

 嫌味に聞こえるかもしれないけど、自分でも恐らく学年で一番可愛いのは私だと思うし。


「あぁ……その、なんだ……」


 ん?言いにくいのかな?

 ……あっ、もしかして『似合ってる』とか『天使のように美しい!結婚してください!僕のお姫様!』とか言おうとしてるの?

 もー、恥ずかしがっちゃって!可愛いんだから!


「んー?なぁに?」


 さぁさぁ、早く言いなさい!

 この私の可愛さにひれ伏してもいいのよ!


「サイヤ人みたいだな」


「クリリンのことかーーーーーっ‼︎‼︎!

 って覚醒せんわ!わしゃどこぞの戦闘民族か!」


「…………」


 虚しかったので黒染めしようと思います。

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