第49話 美しい指が絡む
優香さんが僕の上に馬乗りになって細い指の手を震わせながら僕の首を締め始めた。
「そんなんで僕は死なないですよ?」
僕は敬語に戻りながら悲しそうな優香さんの顔を下から眺めていた。
苦しくもない。
ただヒンヤリとした優香さんの手が気持ちよくさえあった。
「僕たちは本当に死ぬの?」
僕は目を閉じた。
「死ぬなら同時が良いな」
「えっ?」
「二人で一緒にさ。だけどね…優香さん」
僕は僕の首すじに
僕の指が優香さんの美しい指と絡み合い、僕は優香さんを引き寄せて二人で畳に転がった。
僕は少し優香さんの方へ体を向けて足も絡めた。
最後になるかもしれない。
これが最後なら言いたいことを言っておこう。
「僕は優香さんが好きです。
僕が優香さんの子供の父親になるよ。
旅の残りの時間を僕にちょうだい。
その間に子供を生む決心も僕を受け入れることも出来ないなら…そしたら一緒に終わらせよう? それとも」
それは実は優香さんが宿に帰って来る前に決心したことだった。
優香さんに僕は宿のアメニティのカミソリを握らせた。
「それとも今すぐ一緒に死ぬ?」
そのカミソリは昔ながらの形の物でT字型ではないしガードもない。
触ればスッと鋭く切れて血が滲み出ることだろう。
ギラリと優香さんの手の中で光っていた。
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