第43話 寄り添って

 僕は優香さんに、今朝がた言われた宿のあるじのおばあちゃんからの提案を伝えた。

「二人で一部屋にする?」

「うん」

 優香さんは心細かっただろう。

 僕は僕でずっと優香さんが間違いを犯さないか心配だった。

 正直言って二人で同じ部屋になることに優香さんが「うん」と頷いてくれたことでホッとした。

 安心感を得ていた。


 僕は恋結びの宿に戻ってから、改めて宿の主のおばあちゃんに言って二人分の宿泊の手続きをした。


 おばあちゃんは優香さんの愛犬のリルと中庭で遊んでいた。

 リルは優香さんを見つけると全速力で走って来て優香さんの胸に飛び込んできた。

 優香さんはリルに頬ずりをして涙ぐんでいた。

 僕はそっと部屋に戻り部屋の窓から優香さんを眺めていた。



 会ったばかりの女性にこんなに心惹かれている。



 宿命とか運命とか?

 難しいことは分からなかったけど、確かなことは僕のなかにある優香さんを一人にしないという強い思いだった。


 しばらくすると僕は居眠りをしていた。


 ずっと気が張っていたから居心地の良い宿に戻り、気持ちが緩んでしまったのかもしれない。


 少し時間が経っていたかな。


 窓辺に座りながら眠る僕の肩に優香さんが寄り添った気がした。

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