第27話 優香さんと食べる夕食
僕の泊まる恋結びの宿の食堂は広くはないが囲炉裏があり、少し落とした照明が昔話に出てきそうな家の雰囲気をいっそう
畳とテーブルが選べた。
僕は優香さんが座る囲炉裏がある畳に近づいた。
パチパチと囲炉裏から音が弾けた。
「座っても良い?」
「うん」
優香さんは僕を見てくすくすっと笑った。
「えっ? なにかおかしいかな?」
「髪の毛が」
「ああ。普段はくせっ毛で広がるんだよね。今は風呂上がりだからね」
僕の濡れた髪の毛は昼間と感じが違うのかもしれない。僕は恥ずかしくなったが優香さんが笑ってくれるから嬉しい。
宿のスリッパを脱いで畳にあがると優香さんが自分の横の座布団をポンポンした。
「ここにおいでよ。智史くん」
僕はくらりと目眩がしそうだった。あまりにも自然に優香さんが自分の横に呼んでくれるから。
宿のおばあちゃんや娘さん夫婦が僕たちの目の前の囲炉裏を囲むテーブルにところ狭しと料理を運んでくれる。
宿の食事は新鮮な地元食材をふんだんに使ったものだそうだ。
鎌倉野菜のローストは彩りが鮮やかだし、けんちん汁や焼き魚や玉子焼きや鎌倉ハムのステーキも並んだ。
僕と優香さんは仲良く並んで夕食を堪能して話が弾んだ。
食前酒に宿の主のおばあちゃんがシャンパンを持ってきてくれた。
「貰いものだからサービスだよ」
「ありがとうございます」
「うわあ。嬉しい」
僕と優香さんは二人でシャンパンで乾杯した。
優香さんと僕は話が止まらなかった。優香さんに、僕は琴美とのこと以外ならなんでも話せた。
嬉しかったのは住んでる場所が近かったことだ。
僕は少し期待しすぎていたのかもしれない。この旅が終わっても優香さんへの恋心は終わりにしなくてもいいんじゃないかと思ってしまっていた。
そして優香さんは僕の二つ年上で、偶然にも仕事の休暇は僕と一緒で七日取っていたし恋結びの宿に連泊するという。
この想いを止めなくて良いんだと。
僕はこの時とても嬉しかったんだ。
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