草むしりと、釣りと、パシリと、固有アビリティとⅡ
「くそっ。気を取り直して釣りだ!」
近場に
時間はちょうど午後16時を回った頃。
一部地域を除き、現実世界と時間軸が共通している《TCO》の世界は
西ヘルスザーノ平原を赤く照らす
激しい戦闘が行われている
「…………」
レアはルアーの先をボケっと見つめます。
「…………」
ぷかぷか。
浮いているのは、赤と黄色の二色ボーダーの浮き。
ちょっと美味しそう。オムライス食べたい。
「…………」
浮きがゆらゆらと水面を移動します。
お腹すいたなぁ。
「…………」
獲物が食い付く気配は一切ありませんでした。
「…………。暇だ!」
このままでは、魚より先にレアが餌に食いつきそうです。
レアはアイテムストレージを開くと、やや多めに
左手で釣り竿を支え、右手に握った植物の束を
見た目はなんというか——、色味の薄いほうれん草のよう。
ちょっとだけ悩んで、
「…………。…………。はむっ」
無造作に口内へと放り込み、
口いっぱいに植物独特の香りが広がって——、
「…………。んげっ! にっっっがぁ‼」
レアは、口に含んだ薬草をぺっぺっと慌てて吐き出します。
流石にここまで不味いとは思いませんでした。
それと同時に、美味しいものだけではなく、〝美味しくないものの味までちゃんと再現されているんだなぁ〟と、少し感心しました。
と、そんなことをしている内に、
「——おぉ⁉」
垂らしていた釣り糸に、獲物が食いつきました。
「ふはははは! かかったな! トラップカード発動!」
訳の分からないことを口走りながら、レアはリールを回します。
くるくるくるくるくるくる……。
意外にも抵抗なく釣り上げたそれは、
「……あの」
『【
絵にかいたようなゴミでした。
どうやら長期戦になりそうです。
それからしばらく粘ってようやく、
「きたっ!」
水辺から上がったのは十センチないくらいの小さな魚。
どことなく
「これが【しょぼイワシ】……? なんか、ほんとにしょぼいね。キミ」
手にした魚に向かって、ジトっと視線を向けて文句を言うレアです。
しょぼイワシもきっと〝お前には言われたくない〟と心の中で思っているに違いありません。
それからはあっさりと
◇◆◇◆◇
「ふぃ~……終わった終わった」
あっさりとサブクエストをこなし、完了報告を行ったレアです。
完了したのは【採取の基本A】【採取の基本C】【合成の基本】【妻の気持ち】【仲直りの手紙】【返事のラブレター】の六つのクエスト。
【返事のラブレター】は【仲直りの手紙】をクリアすると同時に、メルエッダから自動で受注されたクエストで、手紙の返事を届けるという簡素な内容でした。
「……爆発だ」
そのクエスト名から、手紙にどんなことが書かれていたのかはお察し。
やや不機嫌なレアの元に、
ふぉぁん。
「およ?」
間の抜けるようなサウンドエフェクトと共に、ポップアップが出現しました。
『〝
それは、既視感のある通知。
レアが、《FVW》でもよく見たものです。
現実世界で眠っている自分の身体に、
この場合の〝中規模〟——、というのは、そっと触れる以上の接触で、痛みなどは伴わない程度のレベル。
つまりは揺すったり、軽くぶつかったりすると、届く通知です。
デフォルトでは中規模で通知、痛みなどが伴う激しい接触で強制ログアウトとなっていたはずです。
つまり——、これは——、
「ご飯だ!」
一緒に住んでいる玲愛の祖母が、起こしてくれているのでしょう。
最後にステータスの確認を済ませて、レアはログアウトしました。
残念ながら、アビリティの存在には、ついぞ気付きませんでした。
◇◆◇◆◇
ステータス(一日目前半終了時点)
名前:Rea
種族/〈
【LV】4 《EXP》40/80
【HP】110/110[前回値からの変動+10]
【MP】20/20[前回値からの変動±0]
【STR】8[前回値からの変動±0]
【DEF】15(+9)[前回値からの変動+3]
【INT】11[前回値からの変動+1]
【RES】15(+6)[前回値からの変動+2]
【DEX】10[前回値からの変動+2]
【AGI】12[前回値からの変動+2]
【LUK】8[前回値からの変動±0]
【FAI】18[前回値からの変動+4]
【ボーナスポイント】6
スキル:【変身】
装備
武器:【なし】
頭:【なし】
胴:【旅人の服】《DEF+4》《RES+1》
右手:【旅人のグローブ(左右共通)】《DEF+1》《RES+2》
左手:【旅人のグローブ(左右共通)】
腰:【旅人の長ズボン(脚腰兼用)】《DEF+2》《RES+2》
脚:【旅人の長ズボン(脚腰兼用)】
足:【旅人の靴】《DEF+2》《RES+1》
装飾品A:【なし】
装飾品B:【なし】
アビリティ
A【獣角を
B【無限の可能性】(職業固有)
C【
D【なし】
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