第3話 天下無双、二天一流

グラスホッパーは、高速の剣戟に圧倒されたが、

武装のおかげでダメージは、ゼロだった。

だが、強烈な威圧で怯み指先一つ動かす事が出来ない。


「どうしたッ!

何かしてこい!

能力者なんだろう?」


そう言って武蔵は、まるで鞭を振った時の様な

ビュンビュンと言う音を響かせながら、

グラスホッパーを切り続ける。


グラスホッパーは、手に持った槍が熱くなるのを感じ

このままでは、不味いと思い

武蔵の背後5m程の地点へ転移した。


突如、グラスホッパーが消えた事に武蔵は驚き、

二振りとも刀を収めると、

甲冑の腰に付いている雑嚢から、

クナイを取りした。


それを見てグラスホッパーが、

長い方の槍を構えた、

武装のギミックを発動させ、

反撃に出る。


「見せてやる

これが、クリエイターに貰った俺の武器

不焼御手杵やけずおてぎねだッ!」


グラスホッパーが、武装の名前を叫ぶと

グラスホッパーが持つ長い方の槍の刃が深紅に染まり、

先端に、バチバチと音を立てながら、

球状にエネルギーが集まっていく

それが、野球ボール程の大きさになると

その球体から超高圧の熱線が武蔵に向かって放たれた。


熱線が放たれると

武蔵は、クナイを捨てて

急ぎ長い方の刀に手を掛け、

刹那、熱線を一刀したが、

熱線の余りの熱量が刀の斬撃に勝り、

武蔵を焼いた。


「うああああああッ!」


武蔵の体を大型の槍が貫いた様な衝撃が走り、

武蔵は、吹き飛ばされた。


それを見たグラスホッパーは、

得意げに


「見たかッ!

この武装は、吸収した運動エネルギーをこの槍に溜め込み、強力なレーザーにして放つことが出来る!

お前が、俺を切れば切るほど

この槍の威力が増すと思えッ!」


と叫んだ。


武蔵は、それを聞くと

はしゃいだ様に起き上がり、


「ほう、そちらも良い物を持っている様だな

良し、ならば儂も本気を出そう」


と嬉しそうに言うと


「龍をも屠りし武勇を我が身に宿せ!

ゲオルギウス・アーマーッ!」


武蔵が、そう叫び

武蔵の着ている甲冑が、白い光を放って

胴体に紅い十字架が浮かび上がり、

その横には、雄々しい馬の絵が浮かび上がり、

神々しいパレードアーマーへと変化した。

それに、合わせ武蔵の持つ刀の刀身が黄金の輝きを放つ様になった。


「見よ、これが我が最強の名に相応しい

武装、ゲオルギウス・アーマーの真の力よ

お前の槍では、この鎧を貫く事は出来ぬと知れッ!」


そう言うと武蔵は、雑嚢から手榴弾を取り出して、

グラスホッパーに投げつけると、

刀を二振りとも抜いて、

グラスホッパーに襲いかかった。


グラスホッパーは、手榴弾を軽くかわして

武蔵を迎え討とうとするが、

手榴弾が、空中で弾け幾つものビー玉程の大きさの球体を拡散させた。

ビー玉は、グラスホッパーの体を包み込む程に散らばるとそれぞれ普通の手榴弾と同程度の爆発を起こした。


「うああああッ!」


爆炎にグラスホッパーが、悶えると

そこをすかさず武蔵が斬りこんだ。


先ず、長い方の刀で肩から腰に掛けて切りつけ、

短い方の刀で首を突くと、

再び、長い方の刀で撫でる様に腹をなぞり、

短い方の刀でフルフェイスに穴を空ける様に突いた。


すると、爆炎に包まれながら、繰り出される高圧の剣戟のエネルギーを吸収しきれずに、不焼御手杵が破裂した。


「ああああああああッ!」


右手に持った槍が破裂した衝撃で、

グラスホッパーの右手が吹き飛び、

防御力の限界を迎えたフルフェイスが砕けた。


グラスホッパーは、流れ出る血液を能力で体に戻しながら、必死で倒れるのを堪え鋭い目付きで武蔵を睨みつけた。


「ほう、まだ立ち上がるか」


武蔵が感心して言うと


「はあ、はあ、

当たり前だ!

俺は、この屋敷の

いや、この煉獄の主の一番槍として

お前何かに負けられねえんだよ!」


そう叫ぶと、グラスホッパーは最後の力を振り絞り、

短い方の槍を隻腕で掲げ、高らかに叫んだ。


「これなるはァッ!

日の本一と名高き名槍ッ!」


グラスホッパーが、そう叫ぶと

短い方の槍から陽光の様な輝きが放たれ、

それと同時に武蔵の体を黄金の粒子が包んだ。

その粒子が、霧の様に舞いだんだん槍の穂先の様な形に集まると


「数多の英傑に受け継がれる勇姿を一条の光に変え

全てを呑み取れッ!

世削日本号よけずりにほんごうッ!」


槍のギミックで穂先が巨大になると同時にグラスホッパーの能力で武蔵の体を上書きする様に巨大な槍の穂先が転移され、武蔵の体が内側から弾けた。


内側から弾けたので武蔵の武装は、意味を為さずに

グチャグチャの肉片が辺りに飛び散った。

最早、形も残らぬ武蔵の体を雨の様に浴びながら

グラスホッパーは、安堵した。

ゲオルギウス・アーマーもバラバラになり、

虚しく地面に転がるだけだった。

胴体部分に書かれた馬の絵に鮮血がかかり、

涙を流した様に見えた。


これで、勝負が着いたと思い、

グラスホッパーが、膝を突くと


武蔵のいた場所から、突如白馬が描かれた魔法陣が浮かび上がり、武蔵を無傷の状態に戻した。


「今のは、驚いたぞ

この鎧で無ければ死んでいた!」


武蔵が心底楽しそうにそう言うと


グラスホッパーは、恐怖に歪んだ表情になり


「嘘...だろ...?」


と心の底からの恐怖を武蔵に伝えた。


それを、見た武蔵は甲冑で顔が隠れていても

伝わる程の笑みを浮かべ、

グラスホッパーの腹を思い切り、蹴り飛ばして

吹き飛ばした。


「がはッ!」


グラスホッパーが、血を吐いて地面を転がると


武蔵が、雑嚢から手榴弾を取り出して

グラスホッパーに投げた。

手榴弾は、グラスホッパーの手前で弾け、

中から、六角形の硝子の板の様な物が飛び出し、

グラスホッパーの周りに広がると、パズルの様にくっついて、硝子の檻となり、グラスホッパーを閉じ込めた。


「ちくしょう!

なんだこりゃッ!

出しやがれッ!」


中から、グラスホッパーがゴンゴンと檻を叩かながらそう言うと、


「はははっ!

それは、辺獄で開発された武器だよ

君達と違って、辺獄には暗黒の1400年が訪れていないのでな

こういった高度な技術が使われた武器があるんだよ

まあ、辺獄では今まで戦争の様な事は起きなかったので

あくまで、いざこざを防ぐ為の物だがね」


得意げに武蔵はそう言うと


「さて、では君の仲間を倒しに行くとするかな

だが、恐らくはもう、生きていないだろうがね」


武蔵は、そう言うと

後ろを振り返り、グラスホッパーの元から去って行った。


「おい、待てッ!」


そう言ってグラスホッパーが、短い方の槍を突き刺して

檻を砕こうとすると、檻から電流が流れグラスホッパーの動きを止めた。


「うああああああッ!」


高圧の電流に苦しみながら

グラスホッパーは、為す術も無く、

ただ、武蔵を睨むのみだった。

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