第12話 マイスター

僕らは、再び階段を上がり、

また、同じような作りの部屋に出た。


役小角が、鋼鉄製の扉を

能力を使い、急激に温度を下げ

金属の低音脆性を利用して破壊し、

中に入ると

部屋の中には、

ガーダーが着ていた物と似ているが

ガーダーの物よりも地味な作りの甲冑が

百体程、置かれていた。


「なんだこれ、

不気味だな

襲ってきそうだぜ」


役小角が、甲冑を見るなり

そう言うと

甲冑が動き出し

本当に襲ってきた。


「おい、余計な事言うんじゃない!」


「俺のせいじゃ無いだろ!?」


僕は、腹いせに役小角を怒鳴りながら

異空間倉庫から、

重機関銃のブローニングM2を取り出して

僕の目の前にエネルギーシールドを張りながら、

甲冑に向けて撃ちまくった。


ドドドドドドドドドドドドドドッ!

と物凄い音を立てながら、

甲冑を一掃した。


「はっ!

やっぱり、楽勝だな」


僕が、自慢げにそう言うと

蜂の巣になって崩れた甲冑と機関銃の弾が、

流体の様に動き、一つの巨大なスライムの様になって、

僕らを襲った。


「おおおいッ!

もっと厄介な事になったじゃねえか!」


役小角が、猛吹雪を発生させて

金属を固体にさせようとしながら叫んだが、

吹雪による変化は見られず

そのまま、僕らに向かってきた。


スライムは、バラバラに弾けるように散らばって

一部を僕らに飛ばして

動きを止めながら、

残りを全てが、槍のような形に代わり、

一斉に僕らの方へ飛んできた。


「やべえ、やべえ!

どうにかしてくれ!」


役小角が、必死で体に張り付く金属を

剥がす為に、金属の温度を下げて砕きながら

そう言った。


「もう、めんどくせえ

敵の攻撃に金属っていう媒介が必要なら

こうするのが、一番だ」


僕は、そう言いながら、

目の前に異空間倉庫への大きなゲートを出して、

金属を全て、収納した。


「これで、敵はもう手も足も出ない」


僕は、ゲートを閉じると

ドヤ顔でそう言った。


すると、壁が流体の様な動きを見せ

僕らの体を這い上がってきて、

拘束し始めた。


そして、それと同時に

僕らの目の前の床が浮かび上がって

天井の近くまで行くと

天井が開き、

男が現れ、

開いた天井をワイヤーの様に長く引き伸ばして

先端を先端を尖らせ、

僕らの胸に高速で突き刺した。


僕は、それをエネルギーシールドを展開させて防ぐと、

男が、舌打ちをしながらそう言った。


「ちっ

流石に、あの二人を倒しただけあって

一筋縄では行かないか

まあ、良い文句は後だ

では、これから死にゆく君達の為に

自己紹介をしようか

私は、この集団の副リーダーを務める

マイスターと言う者だ

君達が、何をしに

ノコノコやって来たかは知らないが、

ここまでだ

じゃあ、地獄であの二人と仲良くやれよ

恐らく、次は君達が苦しめられるがな」


そう言うとマイスターは、

天井の上から大量の刀剣類を浮上させて

運び出し、

僕らに向けて一斉に放った。


体に纏わりついた金属を冷やして

砕くと、

役小角が、竜巻で刀剣類の軌道を逸らし、

異空間倉庫から、方天画戟を取り出した僕が、

宙に浮くマイスターに向けて、

思い切りそれを投げつけた。

方天画戟は、操られないように

強化ガラスで作った。


マイスターは、周りの金属を操って

金属の盾を作り、それを五重にして、

方天画戟を防ぐと

軌道を逸らされた刀剣類の一部を操り、

投げるモーションを取って隙が出来た

僕の腕に高速で射出し、腕を切り落とした。


すると、マイスターは、

僕の体から血が出ない事に気づいた。


「ほう、面白い能力だな

それなら、あの二人を倒せたのも納得だ

人間じゃないならなあ!」


そう言って、マイスターは、

僕の体を操って、

壁に強力な磁石で引き寄せられた様に

僕の体を磔にした。


それを、見た役小角は、

即座に、マイスターの周りを竜巻で覆った。


「お前の敵は、クリエイターだけじゃねえんだよ!

周りに、そんなに大量の金属を置いていたら

てめえは、俺には勝てねえぜ!」


そう言って、役小角はマイスターに向けて

雷を放つと

マイスターを囲む竜巻の内部から

金属が伸びて壁に突き刺さり

避雷針になった。


マイスターは、金属をドーム状にして

自身を囲み、竜巻から脱出すると

ドーム状の金属を槍の様な形に変え、

役小角に向けた。


「お前の実力は、大体わかった

お前は、私には勝てない

さらばだ」


そう言って、

マイスターが、役小角の方へ

手を伸ばし挑発すると


「偉そうにしてんじゃねえ!

俺の真の実力を思い知りやがれ!」


そう言って役小角は、巨大な氷柱を出して、

マイスターの鉄の槍に対抗するように

マイスターに向けた。


「どっちの能力が優れているかを

思い知らせてやるぜ!」


役小角が、得意げにそう言うと


「やはり、お前は私には勝てんよ

能力は、確かに強力だが

素直すぎる」


そう言ってマイスターは、

役小角の周りに散らばった

刀剣類を一斉に役小角に射出した。


「うわああああッ!」


役小角が、即座に竜巻を出して、

刀剣類を受け流すと

役小角の上空に

先程向けられていた鉄の槍が飛んできた。


「チェックメイトだ!」


マイスターが、得意げにそう言うと

突如、役小角をエネルギーシールドが覆い

攻撃を防いだ。


「クソッ!

貴様、まだ何か出来たのか!」


マイスターが、そう言って

僕の体の方を向いたが、

体は、未だに壁に張り付いている。


「なに?

どう言う事だ!

はっ!

お前ら、まだ仲間が隠れているんだな!

姿を表せ!

さも無くば、こいつを串刺しにするぞ!」


マイスターは、刀剣類を僕の体に向けて浮上させ、

そう言った。


すると、壁に張り付いた僕の体が爆発し、

周りの刀剣類を破壊した。


そして、マイスターの目の前に

新しい体が、現れ

マイスターの首を掴んだ。


「がはっ!

お前、あの体はダミーだったのか!

だが、私の前に現れたのは愚策だぞ」


そう言ってマイスターは、

ほくそ笑みながら、能力を発動させ

僕の体を引き剥がそうとするが

何も、起きない。


「なに!?

どういう事だ

なぜ、私の能力が通用しない!?」


マイスターが、驚き叫ぶと

僕は、それを嗤ってこう言った。


「僕の能力は、お前の陳腐な能力と違って

なんでも作る能力だ。

お前が、役小角と戦っている間に

金属では無いが、

既存の金属と同じ性質を持つ新物質

金属もどきメッタルムフォビアを作った!

お前は自分が賢いつもりでいるが

僕の脳は量子コンピューターだ!

ただの人間如きが、適うはず無いんだよ!

己の無力さを痛感して、くたばりやがれッ!」


僕は、手始めにマイスターの腕を引きちぎると

まるで、飴細工の様な切れ方をした。


「クソがッ!

アイツも本体が別にあるのか!

おい、役小角

さっさと上へ行って

僕を磔にしたクソ野郎を殺しに行くぞ!」


僕が、マイスターのダミーを

力いっぱい殴って腹を貫通させてから

床に投げ捨て言うと


「お、おう

じゃあ、先へ行くか...」


役小角は、少し引いて応えた。


そんなやり取りをしていると

突如、部屋が揺れ始め、

暫くすると謎の浮遊感に襲われた。


「うわ、なんだこれ

エレベーターで下に降りる時の感覚に似てるな

気持ち悪くなってきた...」


役小角が、少し俯きながらそう言うと


「そんな事言ってる場合じゃない!

恐らくこの部屋をビルから切り捨てられた!

脱出するするぞ!」


そう言って、僕は天井を破壊すると

背中のブースターで飛び上がって脱出した。

役小角も風を纏って飛び上がり、

僕の後を追った。


外に出て、僕らが見たものは、

周りのビルの残骸を吸収し

巨大なゴーレムを形成しつつある

僕らがいたビルの変形する姿だった。


僕らは、距離を取って一旦地面に降りると

ゴーレムが完成し、

ゴーレムに搭載されているスピーカーから

マイスターの声がした。


「はははははッ!

貴様ら、もうお終いだぞ

私の能力に手こずる様では、

我らがボスには絶対に勝てない!

お前らは、ここで死ぬんだ!」


ゴーレムの中にいるマイスターがそう叫ぶと

僕は、異空間倉庫内の武装を大規模に展開させて

攻撃の準備を整えた。

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