第13話 キング・メイソン
僕は、異空間倉庫から
M2ブローニングを持たせた体を二十体、
アサルトライフルを主軸に各種武装を持たせた体を二百体、
異空間倉庫から出して、
ゴーレムの周りに展開させた。
僕は、それと同時進行で、
先程までのマイスター達との戦いでボロボロになったコートを新しい物に変え、
腕につけるクロスボウを二丁、
腰に付ける青龍刀四振り、
足首に付けるピックを二本、
尻の辺りに付ける拳銃二丁、
肩、肘、膝に付けるスパイクの付いたアーマー、
背中に付ける矢筒と大太刀、
手に持つコンポジットロングボウを取り出し、
袖には、任意で飛び出す鉄鎖を仕込んで、
顔にコートと同じ耐性の天帝と書かれた札を張り、
自らを完全武装させた。
「お前、色々付けすぎじゃねえか?
動きづらいだろ?」
役小角が、心配そうに尋ねると
「僕の体は、やわな人間の体じゃないから
大丈夫だ
そんな事より、さっさと彼奴を倒すぞ」
僕が、目の前に聳える巨大なゴーレムを指して言った。
「ああ、それじゃあ
俺から行かせて貰うぜ
準備は、良いか?」
役小角が、少し楽しそうにそう言うと
「ああ、思いっきりやってやれ!」
僕が、そう応え
役小角は、ゴーレムを囲む巨大な竜巻を起こした。
「こんな物じゃ、足止めにもならんぞ!」
マイスターが、そう叫ぶと
竜巻の中心から発射された大量の鉄槍が僕らを襲った。
僕は、それを予期していたので
鉄槍が降る位置に異空間倉庫のゲートを開き
鉄槍を全て収納した。
「今だ、やれ!」
「おう!」
僕の指示に従って役小角が竜巻の中心に雷を落としたと
同時に竜巻を消滅させた。
「
三段撃ち開始します!」
一斉にゴーレムを攻撃し、
スティンガーは、撃った後即座に、
ブローニングは、撃ち尽くす直前に、
全ての体の横に開いた異空間倉庫へのゲートで
倉庫内に戻り、
体がいた場所のすぐ後ろから、
倉庫内で同じ武装をさせた体が出てくるプロセスを
無限に繰り返した。
大量のミサイルと銃弾にゴーレムは、
腕をブンブンと振り、
適当に辺りを攻撃するが、
全ての体は、出てくる時に武装ごと
場所が特定されない。
放たれた弾すらも、無音不可視だ。
ゴーレムの表面が、徐々に崩れ始めると
C4爆薬でゴーレムの足を爆破させろ。
「
アサルト部隊出動です!」
二百体の体を操作し
ゴーレムの足に爆薬を取り付けた。
良いぞ、そのまま
アサルト部隊をゴーレムの肩の辺りまで
ブースターで浮上させて
足を爆破しろ。
僕は、
二百体の体が浮上し、
ゴーレムの足が爆破される。
ゴーレムが、バランスを崩し仰向けに倒れた。
今だ
「
X線スキャナーで解析した
ゴーレム内部の情報を元に侵入ルートを算出します
...
出ました!
ちょうど胸の辺りに敵が固まっています!」
よくやった
じゃあ、そのまま侵入出来るように、
爆破して道を作れ
「
僕は、今まで隠していた体を全て見える様にして
「総員、突入!」
と叫んだ。
ゴーレムの内部に二百体の体が流れ込む様に侵入した。
ゴーレムの内部かたは、激しい戦闘音が溢れ出て来る。
すると、
ゴーレムの頭の辺りから
男が一人で出てきた。
「なんだ、あいつは?
「
ブローニングを持った体が、
男に銃口を向けると
男は、ブローニングとスティンガーを持った体の方を見て
手を合わせた。
すると、アスファルトが盛り上がり
体を包んで押し潰した。
「不味いな
出てきたタイミング的に恐らく
敵の親玉だろうな」
僕が、そう言いながら
体が出てくる流れを一旦止めて呟くと
「彼奴が、親玉なら
さっさと倒しちまえば良いじゃねえか!
ちょっと行ってくるぜ!」
そう言って、役小角は、
待ってましたと言いたげに風を纏い
男の元に飛んで行った。
すると男は、
「お前の相手はこっちだ」
と言いながら、役小角に手を伸ばす動作をして
ゴーレムの体を伸ばし
役小角を捕まえると
ゴーレムの内部に引き込んだ。
「まったく、もうちょっと
考えて動けよ...」
僕は、役小角の突然の行動に呆れながらそう言った。
「だが、まあ
ゴーレムの中にいるマイスターは任せたぞ
僕は、とっとと彼奴を倒して手伝いに行くからな」
僕は、そう呟くと
コンポジットロングボウで男を狙って矢を放った。
男は、それに対してゴーレムの一部を見に纏い
小さな(と言っても3mはあるが)ゴーレムを作り、
身を守ってそのまま直進してきた。
僕は、続けて矢を小型ゴーレムの足に放った。
小型ゴーレムは、想像よりもかなり速く走り
僕に近づいたが、
僕の5m程先で矢が足に刺さった。
「そんな事をしても無駄だよ」
小型ゴーレムの中の男が
嗤笑しながらそう言うと
「それは、どうかな!」
僕は、矢のギミック発動させ
「うわッ!」
小型ゴーレムは、一瞬バランスを崩した様に見えたが、
爆破された部分を周りのアスファルで補いながら、
バク転して体勢を立て直し、
着地すると
アスファルトで大剣を作って
僕に斬りかかった。
僕は、それを避けながら
矢を三発程連続で撃った後、
弓を捨てて
背中の大太刀を引き抜いた。
小型ゴーレムは、大剣で矢を弾いた後、
大太刀を抜いた所を見て構えた。
「こんな格好で言うのは不躾だが、
まあ、そちらは我らを襲いに来た身という事で
大目に見て欲しい
俺はこの集団【メメント・モリ】のリーダー
キング・メイソンだ
そちらは?」
キング・メイソンは、丁寧な物腰で
人を侮りながらそう言ってきた。
「御丁寧な自己紹介どうも
僕は、クリエイター
お前らが目障りだから消しに来た」
そう言いながら
僕は、太刀を振りかざした
キング・メイソンは、
それを大剣で払って
僕の右腕を切りつけ
刀を落とすと
僕の腰を蹴って体勢を崩して
僕の切りかかる。
僕は、コンクリートの大剣に
足のピックを思い切り
突き刺して先端を砕くと
大剣を掴んで取り上げた。
そして、ピックを小型ゴーレムに投げつけ、
体勢を立て直し、
小型ゴーレムの膝をジャンプ台にして
飛ぶと、
肩を掴んでもう一つのピックを
首に突き刺して、
頭を掴み力いっぱい引きちぎった。
キング・メイソンはゴーレムの
大きさを2mに縮め
僕を掴むと
顔を殴りつけて
前へ放ると
縮めた時に余ったコンクリートで
槍を作って僕に突き刺した。
「がはッ!」
「俺達を消しに来た?
それが、どれだけ馬鹿げた事か
わかっているのか!?」
キング・メイソンが僕に怒鳴った。
「馬鹿げたことだと?
僕も、お前も
ここにいる以上は安寧の為に
戦う定めだろ?
その
僕は、体に突き刺さった槍をへし折ると、
拳銃を二丁取って
キング・メイソンに撃ちまくった。
キング・メイソンは
それを物ともせずに、
大剣を作り出して
僕に語りかけた。
「戦う定めだと?
それこそが、一番の理不尽だ
俺達は、戦わなくても
なのに、お前の様なイカれた輩は、
それを一方的に剥奪しに来る
だから、俺達は集まった
各々、生前は汚辱に耐えた
だから!
俺達は、ここでは自由に!
平和に暮らすんだ!
俺達は、幸福になりたいんじゃない
ただ、
この死後の世界で
己の死を忘れずに
二度と
あの、屈辱を味会わないように
だから、お前はここで死ね!
俺達の安寧を奪うなッ!」
そう言って、キング・メイソンは
小型ゴーレムの腕を六本に増やし
それぞれの手に大剣を取って
僕に向けた。
「安寧を奪うな
だと?
ふざけるなッ!
幸福になりたいんじゃない?
馬鹿にしているのかッ!
幸福とは、それすなわち
お前は、
お前らはッ!
己が贖罪を放棄する
醜い我欲の塊だ
ここで、安寧が得られる?
徒党を組んで
弱者をいたぶっているだけだろッ!
その醜く愚かな主張が
どれだけ他人の行いを
侮蔑する物かをよく考えろッ!
悲劇の主人公と己を誇示して
傷を舐め合う豚どもは、
大人しく
人間らしさの業に焼かれて餌となれッ!
それが、贖罪を放棄した
貴様らクズどもが出来る
唯一の贖いだッ!」
僕は、そう言うと
矢筒を下ろして
矢を全て取り出すと
眼前に放って
宙に浮かせ、
青龍刀を二振り手に持った。
そして、鋭くキング・メイソンを睨みつけ
「聴けッ!
生を叫ぶ厳格な棘、
己に触れるなと主張する妖艶な復讐は、
群衆を遠ざけ、
独立を高らかに嘆く
これで満足だと、
諦めを持って
真の生を知れ
僕が、魔法を唱えると
僕の胸に炎の薊が現れ、
紫色に煌々と輝く炎が、体を包んで
強力な熱波を周囲に放つ。
あまりの熱量に
コンクリートのゴーレムの表面が溶け始める。
「かはッ!
あああ、
うあああああああッ!」
熱波で喉が焼けたキング・メイソンが苦しみ藻掻く。
「この熱は、
お前らの仲間から吸い上げた
運動エネルギーを熱エネルギーに変換させた物だ
お前らは、己の定めが理不尽だと言って
同士を募ったが
それは、生前にも出来ただろう?
お前らは、己の惰性を棚上げして、
自ら捨てた権利を主張し
それを獲得する為には、
手段を選ばないと
死を嘆かずに
抗って戦う者達を殺した
それは、決して許される事じゃない
一方的な権利の剥奪者は、
お前ら自身だッ!
それを、後悔しながら
業火を抱いて溺死しろッ!
お前らは、
最後に涙を流す事すら許されないッ!」
僕が、そう言うと
キング・メイソンは必死で
ゴーレムの形を維持し
焼けた爛れて声が出なくなった
喉の代わりに
搭載されたスピーカーから叫ぶ。
「生前でも出来た?
そんな恵まれた環境を生きていたら
誰だって、俺だって
そうするさッ!
俺達の事を何も知らずに
一方的な綺麗事で、
己が正しいと主張する客観的な定型文と言う
最もおぞましい凶器で
他者を突き刺し、
流される鮮やかな鮮血を見て喜ぶ観衆の声を
己への鼓舞と間違え、
優越感に浸るお前の様な怪物に
俺達の正しさがわかってたまるかァッ!」
小型のゴーレムは、溶けかけた大剣を
必死に振りかざして
僕の元へ走るが、
近づく程に上昇する熱量に耐えられず
崩壊する体を捨て、
キング・メイソンは、
親の仇を討つ様な表情で走った。
僕は、近づくキング・メイソンを
肩、肘、膝に付けたアーマーのギミックを発動させ
スパイクを先端として伸びるワイヤーを
キング・メイソンの四肢に突き刺して
持ち上げ、宙に浮かせると
「お前らの過去なんて
僕の知ったことじゃないッ!
多くの人間がそう思ったから
お前らは、屈せざるを得なかった
それが、理解出来ずに
同じ主張を続けても
それは、狂人の奇声にしか聞こえないんだよ
慈愛の念で傷病者を救う女神なんて
存在しないッ!
戦う事を放棄したお前らは
何の権利も得られない
それが、社会
それが、人間だッ!
道端で野たれ死ぬ事を安寧と主張するなら
今、ここで消えて無くなれッ!」
僕が、そう叫ぶと
キング・メイソンがワイヤーから伝わる
紫色の炎に包まれ消滅した。
「おれ...たちは...
ただしい...」
最後まで、それを主張し
消え去ったキング・メイソンを見送って
僕は、役小角の元へ向かった。
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