第100話 【Side:ブレイブ】魔法少女ステラ vs 魔剣士ゴールド

「魔法少女ステラ、降臨だよ!」


 ステラが魔法少女!?そして、その姿を俺は知っている。


 僕がまだ『吾妻 勇希(あづま ゆうき)』だった頃、巷を騒がす怪物たちから人々を守ってくれた魔法少女たち。


 その内の一人、白い衣装を纏った魔法少女だぁ!!


 俺は驚きの声しか上げられなかった。


 次の瞬間には閃光に溶けるように魔法少女ステラの姿は無く、俺は膝を落とす。


「どうなってるんだ?ステラはゴーファン軍の小隊長で……魔法少女?だ、誰か教えてよ〜!!」


「ブレイブ、どうしたのさ?魔法少女って何処かで……あ、アリスが言ってたよね?」


 パチャムが心配そうに俺を見ている。そうか、アリスなら……俺はアリスのところに向かおうとするが、ファナが俺の腕を掴む。


「ファナ、俺……」


「まだ間に合うよ。ステラを追おう!」


 追う?追えるのか!?アリスが先か?ステラが先か?もはやパニック過ぎて判断できない〜。


 頬に走る痛み。


「しっかりしろ、ブレイブ!気になるんだろ、魔法少女のことが!!ステラに聞きなよ、自分でさ。」


 そうだよな、今ならまだステラに話を聞けるなら、行くしかない!聞こう、魔法少女のことを!!


「行こう!ファナ、ステラの行った方向は分かるのか?」


「街を出る門に向かったのが見えた。金ピカマスクもステラを追って行ったよ。こっち!」


 俺とパチャムはファナの後を全力で追いかけた。


◇◇◇


 王都ピセを出て更に走ること20〜30分。もう後ろのパチャムが付いてきてるのか確認する余裕もなく、かなり先行しているファナを追うので精一杯だった。


「追いついたー!!」


 ファナの叫び声に視線を上げると、遥か先だが確かに白く輝く姿と、それに反射するように煌めく黄金色が見えた。


「ス、ステ……ラハァハァ。」


 欲情している訳ではなく、息が切れてまともに声が出せない。


 遠目にステラとゴールドが話しをしていたようだが、互いに剣を抜いて構えた!


「やめろよ、ハァハァハァ……やめて、くれへ〜!」


 魔法少女が負ける筈はないと思いつつ、あのゴールドという剣士も只者じゃないので、何とか戦いをやめさせたかった。どうすれば!?


「(何故、我が力を使わぬのだ、主よ。)」


 氷剣スノーホワイトの言葉にハッとする俺!そうだ、そうだよな。


「ありがとう、スノーホワイト。頼む!」


 愛剣を抜き放つと、その青白い刀身から冷気が溢れ出す。


◇◇◇


 まだ遠いが、魔法少女ステラと仮面に手を当てるゴールドが見えた。


「しばし動けなくするだけだ、許せステラ。魔法剣『エンチャント・サンダー』!」


 ゴールドのサーベルが雷を纏い、触れれば感電は必至だろう。


「痺れるとかイヤなんですけど~。赤い盾は……あれ、発動しない?仕方ない。」


 ステラは手にした……棒!?を構える。


「受けろ、雷光の一閃『ライトニング・インパクト』!!」


「いけぇーっ!『き・の・ぼ・う』!!」


 ゴールドの雷撃斬とステラの木の棒がぶつかり合う!!見て分かるのは、ゴールドの剣から放出された雷撃がステラの全身を包み込んだこと。


「馬鹿な!?」


 叫んだのはステラではなくゴールドの方だった。不思議なことに雷で感電したはずのステラは涼しい顔をしていた。


「『マジカル・シールド』……魔法少女の魔法障壁はそう簡単には通らないよ。」


 自慢げなステラは木の棒で雷の剣を押し返す。何だあの木の棒!


「魔法障壁にも驚いたが、その棒は何だ?我が魔法剣で切れぬばかりか……押し戻すとは!!」


「むしろこの木の棒が『マジカル・シールド』の発動媒体だからねー。」


 ゴールドが押し戻される。


「屈辱。魔法剣が木の棒に押し負けるとは。魔法少女……手加減はできないということか。」


「いや、もういいでしょう。そろそろ帰りたいんですけど〜。」


「もう一度言う。私はお前が欲しいのだ。来い、ステラ!」


 ゴールドは左手を差し伸べる。しかしステラは首を横に振る。差し伸べた手を握り締める。


「そうか。では後の禍根とならぬようこの場で止めよう。」


 ゴールドは呪文詠唱しながらサーベルの鍔から剣先を掌でなぞる。なぞられた刀身に光が宿る。


「その障壁を砕く。魔法剣『エンチャント・タイタンソウル』!行くぞ、『タイタニック・ブレイク』!!」


 長身のゴールドは輝くサーベルを最上段に構え、見上げるステラ目掛けて一気に振り下ろす!


 逆にステラは手にした木の棒を振り上げた!


 互いの攻撃がぶつかり合い激しい閃光を放つ!!閃光から凄まじい勢いで弾き飛ばされたのはステラだった。


「うわぁっっ!!」


 その勢いは地面を抉りながら砂埃を舞い上がらせた。


「ステラ、生きているか?」


 ゴールドは砂埃を掻き分けてステラの元に歩む。


「な、何とかね。驚きの威力だね。ゲランの技の比じゃないよ。」


「驚くのはこっちだ。あれで無傷とは。そして……」


 膝をついたステラは埃を払いながら立ち上がる。手にしていた木の棒は砕け散っていた。


 ゴールドは手にしたサーベルを投げ捨てる。地面に落ちたサーベルの刀身は半分無くなっていた。


「もういい……よね?ゴールド。」


「私はわがままなのだよ。我が真の力……」


 間に合った!


「そこまでにしてよ、二人とも!」


 俺は宙から舞い降り、二人の間に割り込んだ。


「うわ、ブレイブ!?何処から来たの?」


「ステラに会いに、飛んで来たのさ。僕の好きな魔法少女。」


 俺は振り返り、ステラに笑みを見せる。


 あれ?何か微妙な表情だな、ステラ。

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