第101話 【Side:ブレイブ】夜空の流星
空から舞い降りた俺は魔法少女ステラと魔剣士ゴールドの間に割って入る。
普通に走っては間に合わないと判断し、愛剣スノーホワイトの固有剣技、五の斬『フェンリル・チャージ』で氷のジャンプ台を作り、空を滑空したのだった。
「まったく、ゴールドといい、ブレイブといい……何で美男美女はそういう恥ずかしくなる台詞をサラッと言うかなぁ〜。」
ステラは首を横に振りながら戯けてみせた。でも口元には笑みが見えた。
「ブレイブ、貴方もわたしの前に立ちはだかるのかな?」
「違うんだ。俺はステラに聞きたいことがあ……」
そこに全速力でファナが突っ込んで来た。
「ステラ捕まえたーっ!!」
ステラの身体にダイブしてホールドする、まるで妹が姉にするように。そして矢継ぎ早に尋ねた。
「ステラ、敵なの?何で?」
「ファナ……そうだね。ゴーファンとスピリットガーデンは戦争中だから。」
ステラはどこか辛そうにファナを見つめていた。
「キリコがね、楽しそうに話してくれたんだよ……ファナのことを。そしたらさ、何か気になっちゃって。」
「キリコが?次はリベンジするし!」
「そっか、伝えておくよキリコに。」
何か微笑ましい。
「そんな機会はない。ファナと言ったか?そのままステラを逃さないよう抑えていてくれ!」
そうか!ゴールドは敵であるステラをここで始末するつもりなのか!?そう感じた俺は……自然と剣を向けていた、ゴールドに対して。
「ブレイブ、どういうつもりだ?」
「ステラはやらせない。ファナ、協力してくれ。ステラを守ろう!」
そこにいた全員が驚いていた、それは俺自身も。でも、そんな驚きは俺の中では瞬時に失せる。だって答えはシンプルだから。オタクとして中二病として、魔法少女が好きだからだ!!
「行くぞ、スノーホワイト!凍てつく息吹き、一の斬『フリーズ・ウィンド』!!」
振り下ろした氷の剣から極寒の吹雪がゴールドを襲い、瞬時にゴールドの身体を凍結させた。
「今だ、行こうステラ!」
「まだだよ、ブレイブ。」
差し伸べた俺の手をステラは取りはしなかった。凍結したゴールドが炎を纏う。
「上位精霊『イフリート』よ、猛き灼熱の炎を宿せ!『エンチャント・フレイム』!!」
サーベルを失ったゴールドは短剣を抜くと、短剣とは思えないほど長い灼熱の刃となる。おいおい、まるでビームサーベルじゃないか!?
「分かるだろう、この魔法剣の力。折角目覚めたアイスソードをまたダメにしたくはないだろう?ステラを渡せ。」
「ブレイブ、もう大丈夫。あとはわたしが……」
ゴールドはハッタリを口にしている訳ではない。あのビームサーベルを見れば分かる。岩でも鋼でも軽く両断する凄みを感じる!
「だとしても、俺はどかない!俺は魔法少女の力になるんだ!!全力だ、スノーホワイトォーーー!!!」
「(主が決めたことなら止むべくもない。我が全てを託そうぞ!)」
俺の無茶に付き合ってくれ、今までに無い冷気を放出させるスノーホワイト。何で健気なヤツ。ありがとう!
「では、お仕置きだ。数千度の灼熱を受けよ!『スコーチング・インフェルノ』!!」
「氷剣スノーホワイト、七剣技が七の斬、最終奥義『アブソリュート・ゼロ』!!」
ぶつかり合う互いの必殺の一撃……え!?
いつの間にか間に立つステラ!?止まらない灼熱と絶対零度の刃を……彼女は掌で受けるっ!!
「もうわたしのために争うのはやめて、二人とも!なんちゃって。」
相反する激しい力と力の狭間、凄まじい衝撃に晒されながらも、魔法少女のその姿はえも言われぬ輝きに満ちていた。さっきゴールドの一撃を受けた時と同じ。これが魔法障壁か!?とは言え、俺たちの渾身の一撃をそれぞれ片手で防ぐだなんて尋常じゃない!
「いくよー、『マジカルシールド・マジックドレイン』!」
その名の通りか!?魔法障壁を展開しつつ接触したものの魔力を飲み込んでいき、剣の魔力が失せていく。
スノーホワイトに声をかけるが反応が無い。深い眠りについたのか!?ゴールドの手にはただの短剣が握られていた。ご自慢の魔法剣が消え失せ、半ば呆然としていた。
「魔法少女、これ程とは……」
ステラは軽くジャンプをすると、あろうことか5m程の空中で止まる。背中には神々しい純白の天使の翼が大きく開いていた。
「会えて良かった。今度は戦場で出会わないことを願うだけだよ。」
「ちょっと、ステラ。わたしがまだいるんだけど。」
そう、ファナがステラにしがみついたままだった!
「一緒に行く?わたしとゴーファンへ。キリコ驚くよ〜?」
「ゴーファンに!?ステラは面白いね。でも、それは流石に……」
ファナは自ら手足を離しステラの身体から離れ……落下していく。その視線は小さくなっていくステラを見つめる。俺もまたファナを受け止めながら、美しい天使の姿を見つめていた。
「またねー!」
そして魔法少女ステラは夜空の流れ星となり、俺たちの前からその姿を消した。
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