第64話 【Side:ステラ】大浴場で大欲情?乙女の純潔を守れ!
この国では人間が突如失踪することが度々ある。人さらいや人喰いの仕業と言われていた。
ミッシェルとフェイトが11歳の頃に同室だった18歳の女性が大浴場の清掃中に行方不明になり、数日後、ゴミ捨て場に人骨と衣服が散乱していたのをミッシェルとフェイトが発見した。その衣服は同室の女性が身に着けていたものであり、仲良くしていた女性の人骨遺体を目の当たりにしたことで酷いショックを受けたのだった。
いままさに、その時の記憶と悪い想像がミッシェルとフェイトの脳裏を駆け巡った。
◇◇◇
「言ったな、何でもしますって!?ウェ~イ、奴隷ゲットだぜ!オーガ先輩、俺等の奴隷にしてもいいっすか?」
「おいおい、話が違うじゃねーか?俺等は空腹なんだよ。食堂のマズイ飯じゃ満たされないの知ってるよな?闇市のバラした人肉はクソマズイのばかりだしな。やっぱ素材を見て選んで、イキがいいのにかぶりつきたい訳よ。この3人は見るからに柔らかくて美味そうだよな。テメー等の奴隷には勿体ない!いま喰うぞ!!」
「マジっすか?せめて1人は俺等の玩具にくださいよ?あの泣き叫ぶ女、くださいよ〜!」
ゴブリンとオーガ達が目の前の玩具や餌を取り合い言い争う。甚だ失礼なことだ。そんな中でただ震えながら抱き合うミッシェルとフェイト。
「2人とも、ちょっと待ってて。お風呂清掃してくるから!」
わたしはタオルで身体を隠しながら立ち上がり、ミッシェルとフェイトに後ろに下がるように言う。2人は唖然としていた。
「ステラ……わたし達、助からないんだよ?殺されちゃうんだよ?うぅ……」
ミッシェルが嗚咽交じりに答える。フェイトもボロボロと涙を零す。
「大丈夫、2人はわたしが守るから。待っててね!」
涙を流し震えるミッシェル達を抱きしめて満面の笑みを送る。2人はただ茫然とわたしを見つめていた。
「アンタ等さ、冗談なら見過ごしてあげようと思ったけど、さっきの言葉は聞き逃せないなぁ。強姦、そして、人喰い?何より、この子達の心を傷つけたことは許さないから!!」
ゴブリンとオーガ達に拳を突き出し、颯爽と言い放った!
「面白い冗談だな。笑える。とりあえず……ん〜、傷だらけで……胸小さいな、オマエ。ま、いいか。お前からだな。タオル外してさっさとこっちに来いや!」
先ずは自分からと言わんばかりにゴブリンAが。
「この傷は『王宮武闘大会』で出来た傷だよ。大会見てなかった?わたし活躍したでしょ?もしかして『カボチャの悪魔』知らないの?つか、胸小さくて悪かったわね!!このスケベ。」
手で胸を隠しながら若干寄せて上げるが、それでも大きいとは言い難い。はぁ~。
「カボチャの……悪魔だと!?」
流石に聞いたことのある通り名にゴブリンとオーガ達は動きを止める。
「お前が『カボチャの悪魔』だって言うのか?どこでその名を聞いたのか知らんが……ハッタリだろ?お前みたいなガキがそんな訳でないだろうが!?」
嘘だと決めつけるゴブリンAにオーガAが言う。
「いや、俺は観客席で見てたが『カボチャの悪魔』は人間のガキだったな。遠かったし、人間の見分けがつかないから分からんが……見た目はこんな棒っきれみたいな感じだったかも。」
自分の身体を『棒っきれ』と例えられ流石に頭に来るわ!
「ちょっとぉ!よく見なさいよ、この胸ぺったんこじゃないでしょ!!Cカップはあるんだからね!!!」
タオル越しに胸を張るJK。恥じらいはどこへやら。
「許さないから!」
呪文詠唱を始めると、ゴブリン・オーガ達が慌てる!
「こいつ、まさか!?」
ミッシェルとフェイトはもはや状況について行けず、ただ二人湯船で抱き合っていた。
「水よ、風よ、あいつらを捕らえる牢獄となれ!『ウォータージェイル』」
浴槽の湯がゴブリン・オーガ達を囲む球体となり、水流は高速な乱回転をしていた。
「何だコリャ!?」
「ふざけやがって、出せっ!」
ゴブリンが慌てふためくなかオーガが嗜める。
「馬鹿か、こんな水なんか押し通ればいいんだよ!」
そう言いオーガは水流に触れると、爪が切断される。
「何イィーッ!!」
勢いよく触れたら指や腕も無くなっていたかもしれないほど、風の力で高圧縮された水が高速で回転していた。鉄の鎧を着ていれば切り傷程度で済むだろうが、革鎧位なら両断されることだろう。そしてここは大浴場。ゴブリン・オーガ達は裸であり、抜け出そうとすることは自殺行為だった。
「それ水の刃だから触らないでね。とりあえず、あなた達の罪を騎士団に差し出すから、覚悟してなさい!」
わたしは得意げに宣言した!
「ステラ、あなた……一体??」
ミッシェルとフェイトはまだ震えながら問うた時、突如『ウォータージェイル』が消滅した!
「待って、まだ……いる。」
さっき感じた嫌な気配を思い出した。とても嫌なこの感じ。
ゴブリン達の前の空間が歪み始める。
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