術後4日目 経口摂取からの挑戦状2 ペーストの逆襲

 細切れだが数時間は眠れた。

 朝4時頃、痛みが今まででマックス&アフターバーナー状態に。かち割った上顎が切れ目に沿って雄叫び。そこからこめかみにかけて全ての血流が逆上して猛っている感じ。


 そんなブチ切れないでよぉお。息苦しさが落ち着いて、痛みに意識が向くようになったのかな。

「つらいね。どんな痛み?」

 リサああ!主人公メグの同僚で、デキる医療職姉さんの設定。


 痛み自体はね、親知らず抜いたのを3倍~5倍増しにした感じ。時間によって波があって、上顎全体から頭まで痛くて熱くなる事もあれば、切れ目のあたりがビーンと痺れていることもある。


 唇の周りと頬っぺたはずっと痺れていて、痛みに比べたらそんなに不快というわけでもないけどね。抜歯したあと麻酔が切れてくるときのあの感覚かな。この痺れも、骨を切ったことによるものらしい。


 下顎は親知らずの位置から切開して、骨を斜めに切って前に4mm前にスライドしてプレートで止めてるんだけど、1日1回くらいプレートの部分(と思われる)がピキーンって痛むかな。


 顎を動かすと付け根は痛むし、術前の通常の動きと比べたら程遠い。他が痛むせいで、なんだか矯正している歯まで痛い気がするよ。

 けどいずれにしろ、手術直後ののたうち回る苦しさに比べたら平和なものだし、どう付き合おうか考えられるだけ、優しい相手だと思うよ。


「へえーっ。骨ってすごいね。私も切ってみたかったなぁー」

 あたしを実験台にしないで。いつかおたくの隊長の骨でも切らせてあげるよ。


 そうは言うものの、楽しい事考えてないとつらくて、恥ずかしさも個人情報も捨てて身もふたもない話でいいから書いてみようと、これを書き始めた。


 応援してくださる方がいて、思った以上に励まされる。どストレートに嬉しい。心を開いてみて良かったな、なーんて。

「登場人物と会話するとか、半分イっちゃってるよね!」


 鼻の穴周りにカサブタがたくさんついててね、剥がしたいのよ。

「ダメダメ!無理に剥がしたらまた鼻血だよ。軟膏を塗りたくって自然にポロリを待たないと」


 あと、生理が長引いている。もう9日目なのにまだ拭くとついてる。麻酔の影響かと思いきや、ただのストレスでしょうって。あれれ。


 食事が苦痛になる。高カロリー栄養食、乳飲料、ゼリー飲料、スープのセット。

 だってあたくし食べたくないし美味しくないんですもの、と口と喉さんが言ってる。これを摂取しなきゃ次に行けないんです、お願いしますよ~。んもう、仕方ないですわね!って何とか説得して、目を閉じて一気飲みに徹する。


 ゼリー飲料(ウ〇ダーインとか)が甘すぎて喉を直撃しむせる。むせながら、それでも全量を嚥下する。疲れる。


 ところが昼からペースト食が現れた。固形の食事をミキサーで形が無くなるまで撹拌して、水分を加えたもの。施設でひいばあちゃんの食事介助した時に、介助したこっちが気持ち悪くなってしまったやつ。まさかこれを食す日が来るとは…。


 案の定、豆腐吸い物とカボチャ煮つけしか食べられない。魚の味噌焼きは、あの食感で魚の生臭さだけが口に残りアウト。粥ペーストは論外。常食なら全然オッケーなのよ?


 お腹すいたよおおおお。夫に依頼し、ゆかりを緊急召喚。(←つい好きなゆかりにしてしまったけど、梅ペーストの方が良かったと後から思う)何にでもふりかけて口に入れてみる。うぅっ。


「軟膏を塗りたくってきた唇の傷が良くなって一安心だよ。痛みへの恐怖もそんなに感じてないみたいだし、よかった」

 医療的にはきっとそうなんだけどね。

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