「観察」
「ようこそ、お越しくださいました。きっと『あの人』も喜びますよ。」
そう言うと今年86歳の
三日前、この家に宿泊したいと電話をした
スマホアプリの「神様さがし」から怪しい村の存在を知り、「夏休みの暇つぶしがてらに行ってみるか」と軽い気持ちで電話帳から適当に電話をかけてみたのだが…まさか電話をして一発目で泊めてくれる家に、もとい親切なお婆さんに行き当たるとは三人とも思ってもみなかったのだ。
家の中を見渡せば、そこは伝統的な古民家で、広い土間に天井には梁が渡され、長年かけてついた煤が天井を黒っぽくしていた。
中央の囲炉裏のあった場所は蓋がされ、上に置かれたちゃぶ台には冷たい麦茶のボトルが一つ、逆さにされたコップとともに置かれている。
カチコチと音のなる壁に掛けられた柱時計は午後3時を指していた。
「なんていうか、普通の家…どころか立派な古民家だよな。
これって、高校生の俺らが気軽に泊まって良かったのか。なんかまずくね?」
こそっと大輔が聞くと、翔太も慌てたようにガクガクとうなずく。
「やべえよ、今の俺って盆に田舎の親戚の家に行った時と同じ気分。
すげえ居心地悪い。正座崩せねえ。目の前の仏壇のせいで余計そう感じる。」
その言葉を受けてか、眼鏡の充も部屋の奥にある巨大な仏壇に目配せをする。
「っていうかさ、『あの人』って仏壇の仏様のこというんじゃないのかな?
情報には神様ではないって書いてあったし、その可能性も…」
「…いいえ、『あの人』は仏様じゃありませんよ。確かに、この村には、
お寺もありますが『あの人』はいつも私たちを見てくださるんですよ。」
充の言葉を聞いていたのか。ゆるゆる首をふりながら、日々子さんは言った。
「良いことも、悪いことも『あの人』は見ていらっしゃるんです。
それに準じて私たちはこの村で生きていくのです。
それは、この村に来ていただいたあなたがたも同じこと…と言っても、
何も難しいことではありません。普通にしていただいて結構ですから。」
そう言うと、日々子さんはくしゃっとした笑顔を向ける。
それを見て三人はお互いの顔を見合わせた…
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