プロローグ

プロローグ

8月3日(Thu)午前10時


「はぁー……気持ちいい」


 浅丘美月は大きく深呼吸をして青い空に手を伸ばした。

この場所から見る風景が子供の頃から大好きだった。海の色も波の音も風の囁きも昔と変わらない。


「さぁーて! 明日から頑張るぞ」


 海岸から遊歩道に続く階段を軽々と上がると、美月は自転車に跨がって海の香りの濃い町を駆け抜けていった。


 ……それは夢の始まり

 そして現実の終わり。


        *


 目覚まし時計の音でその者は目を覚ました。カーテンの隙間から差し込む夏の日差しが眩しい。

夢を……見ていた気がする。それがどんな夢だったのかはっきりとは思い出せないが、確かに夢と言うものを見ていた気がする。


 まだ頭がぼんやりとしている。身体をベッドから起き上がらせるも、意識は眠っているような不思議な心地だった。


 その者はベッドを降りて大きく息をつく。


大丈夫、覚悟はできている。

後戻りはしない


これで……すべてが終わる



プロローグ END

→第一章 覚醒 に続く

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